05.秩序思考

意識回路の欲求野で生じる欲求は、生存本能、種存本能、存在本能にもとづきます。

その他に、意識野で、別の二つの欲求が生じます。

【達成欲求】と【秩序欲求】です。

三つの本能の欲求を満たすために、意識野は、いろいろな対応を考え出します。

対応が達成されると、脳内は、快感ホルモンで満たされます。

それは、問題を解決してもらえる褒美です。

困難な問題ほど、褒美は大きく、

その褒美欲しさに、人は、あえて問題を作り出そうとさえします。

達成感を得たいという欲求が、意識野で生まれました。

その【達成欲求】は、人の意識野の発達を促しました。

複雑な問題を合理的に、早く解決するためには、

単面的な対応だけでなく、複合的な対応が必要になります。

また、問題解決のために、時に人は、集団を組まなければなりません。

その場合も、全体的な対応、分割的な対応が必要となります。

意識野の対応レベルには、3段階あると述べました。

第一段階〔順応―省エネレベル〕・・・衝動的(低意識)

第二段階〔対応―改善レベル〕・・・単面的(中意識)

第三段階〔システム―秩序レベル〕・・・複合的(高意識)

ここでいう対応は、第三段階のレベルです。

複合的な対応を行うためには、まわりの状況(環境)が重要な要素となります。

対応が複雑になると、状況は混乱しやすくなります。

そのためには前もって、状況の整合が必要となるわけです。

複合的な対応には、秩序が必要となります。

人は、複雑さを避け、秩序を求めようとします。

意識野で生じた二つ目の欲求、【秩序欲求】です。

今までに出てきた、いくつかの言葉を説明しておきます。

単面的な対応とは、問題になっている状況に、新たな要因を加えるか、

現状の要因を取り去るかして、結果を、期待どおりに変化させることです。

複合的な対応とは、いくつかの要因を、空間的、時間的に組み合わせて、

その状況の結果を、期待どおりに変化させることです。

秩序とは、状況を整合させて、明確、安定、厳密にして、

問題が発生したときに、合理的に、早く対応できるように

また、問題の発生を防げるように構築した、体制のことです。

現代の社会においては、複雑な問題の解決が求められます。

そのためには、秩序の整った状況での、複合的な対応が必要です。

さらに、その対応が、より適応した秩序の構築を導いていく必要があります。

以上のような、秩序を基本にした、複合的な対応思考を、

【秩序思考】と呼ぶことにします。

秩序思考は、意識野の【秩序欲求】から発生する、高いレベルでの、

対応機能です。

秩序思考は、次の四本の、思考の柱から、成り立っています。

【論理思考】・・・物事の成り立ち、因果を確率的にとらえる。

【システム思考】・・・物事にかかわる状況を、立体的、時間的視野から見る。

【バランス思考】・・・事実に従い、状況の調和と制御を重視する。

【シンプル思考】・・・物事を単純、明確にして、状況を整理する。

秩序思考の、四つの思考方法について、もっとくわしく見ていきます。

意識回路を、対応システムと見なすと、

前回『システムについて』で述べたように、

秩序思考は、意識回路というシステムの制御部となります。

制御機能として、リード(先導、発展)機能、

ガード(防御)機能、

ヒール(慰安、修復)機能があります。

それぞれの思考方法を、それら三つの機能に分割して、述べていきます。

《論理思考》

(1)物事は、よく観察されると、それぞれに欠点と長所が明らかになります。

物事の、順番や組み合わせや、形状を変化させることによって、欠点をおぎない、

長所を生かすことが出来ます。

どんなものでも、工夫、改良され、発展する余地が残っていると考えます。

リード機能です。

(2)思考は、自己の認識、欲求、感情によって、歪められてしまいます。

また、他者の影響によっても、歪められる恐れがあります。

論理は、自分や他人の意志に影響されて、

思考が歪められるのを防ぎます。

ガード機能です。

(3)物事は、因果律に従います。

因果律は確率でとらえられます。

確率を上げる方向に対応すれば、望む結果に導きやすく、

確率を下げる方向に対応すれば、結果を避けやすくなります。

結果に対して、論理は有効ですが、絶対ではありません。

ヒール機能です。

《システム思考》

(1)物事への対応には、計画性が必要です。

対応するスペース、対応する時間、対応に要するエネルギー、

対応に要する道具、方法、材料

それらを計画的に用意しておくことが、

対応を確実に、合理的に可能にするわけです。

また、対応には、順序が必要であるとも言えます。

因果を逆に、または同時に行うことは出来ません。

リード機能です。

(2)物事を認識するときに、偏見や、思い込み、欲求や感情が作用して、

そのものの、持っている本質を見失ってしまうことがあります。

論理性を持って、物事の本質を見抜く。

真実のまわりを覆っている、付着物を取り除く、ガード機能です。

(3)物事や、その状況には、メリット、デメリットがあります。

メリットが目立つ、インパクトがある、影響が大きいと、

デメリットが見えにくくなります。

デメリットが目立つ場合は、その逆で、メリットが見えにくくなります。

物事を全体的に見る。

状況から、多面的に見てみる必要があります。

また、時間軸の方から、

「かってはどうであったか?」「先はどうなるか?」を

見てみる必要があります。

そして、すべての物事には、メリット、デメリットがあるということに、

気づかなければなりません。

ヒール機能です。

《バランス思考》

(1)人は、意識回路によって、行動を決定させます。

認識や記憶、欲求、感情や、それぞれの意識によって、対応を判断するわけですが、

当然、偏見、思い込み、本能行動、快楽追及、不快苦回避などによって、

衝動的、感覚的で、不合理な行動をとってしまいます。

秩序を保ち、論理的であるためには、自己制御が必要です。

制御とは、抑制でなく、バランスをとって、意識をコントロールすること(節制)ですが、

目的を達成しようする、強い意志が必要なのは、同じです。

リード機能です。

(2)自然は、物事のバランスをとりながら、因果に従い、無理なく変化していきます。

状況が複雑で、判断に迷う時、自然の流れにまかせることも必要です。

自然の起こす偶然、気まぐれも、宿縁として受け入れなければなりません。

ガード機能です。

(3)人は、完全を求めます。

完全であれば、コントロールしやすいからです。

しかし、物事にも、その状況にも、完全を求めるのは非常に困難です。

完全ではなく、完成度の高い状態を求めるべきです。

自分もまた、完全ではないと知り、限界の諦めも知るべきです。

ヒール機能です。

《シンプル思考》

(1)状況が複雑化してしまわないように、

物事の関わりを円滑化する必要があります。

物事が変化している場合には、その変化の障害になるものを取り除き、

変化を無理なく導き、状況を単純化します。

人間関係においては、ルールを守るということが、円滑化に導きます。

ルールとは、約束、規則のほか、長年の慣習によるものも含みます。

リード機能です。

(2)状況が複雑化してしまったときに、

状況の原点、基礎に戻ってみる必要があります。

そのためには、あらかじめ物事の原点を明確にしておきます。

明確にするには、正しく、物事を測定できなくてはいけません。

正しいものさしを持つことが、必要です。

ガード機能です。

(3)状況が複雑化してしまい、判断に迷いが出たとき、

自分を無条件に信じてみることも必要です。

ベストではないが、今の状況において判断が、ベターであると割り切り、

思考を打ち切ることも、現状打破の方法です。

どんな結果になろうと、後悔はしない。

反省はあっても、自分を責めたりしないのが前提です。

ヒール機能です。

以上で、秩序思考の四つの思考法について、述べてきました。

空間軸、時間軸の方向から全体に、論理的に対応し、

また、それらの対応は、バランスがとれており、明確でシンプルであることが、

望ましいのです。