27.生産方式

生産とは、原材料から、燃料を費やし、設備・装置・道具を用いて、

人の技術・方法を使い、製品を作り出すことです。

生産は、低コスト、短時間で、高品質なものを作り出すことが求められます。

低コストとは、原材料・燃料コストをおさえ、設備・装置・道具の消耗を防ぎ、

人件費や必要経費をおさえ、製品の歩留り(収率)を上げることです。

短時間とは、燃料、設備、人を最効率で使い、需要に早く応じるということです。

高品質とは、求められる性能にバラツキがなく、性能レベルが高いと言うことです。

上にあげた中で、まず重要なのは、製品の性能にバラツキを生まないことです。

性能のバラツキは、以下の理由から発生します。

(1)原材料の品質がばらつく。

(2)燃料の効果がばらつく。

(3)設備・装置・道具の機能がばらつく。

(4)人の技術がばらつく。

これらバラツキの原因を管理して、製品の性能を許容範囲に入れます。

(1)原材料・燃料の管理・・・許容品質レベルにあるか?

(2)設備・装置・道具の管理・・・ 機能が許容範囲内にあるか?

設定値と実測値に差(ロス)がないか。

生産量のアップ、ダウンによるブレはないか?

(3)技術の管理・・・原材料・燃料の投入技術が明確になっているか?

設備・装置などの操作技術が明確になっているか?

原料、設備、製品などの検査方法が明確になっているか?

ほとんどの製品が、品質の許容範囲に入るようになれば、歩留まり率は上がります。

次に、コスト低減、時間短縮を目指し、それらのバランスを見ながら、

生産の稼働率(生産量)を上げます。

原材料、燃料のコストを下げれば、それらの品質レベルが下がり、

また、供給量に余裕がなくなり、部品の欠陥製品を作る可能性が大になります。

時間を短縮すれば、稼働率が上がり、製品一個に対する所要時間が減ります。

製造における、一つ一つの作業が雑になる可能性があります。

同時にいくつかの動作をする必要が生じて複雑になり、ミスが増えます。

時間のかかる調整が省略されてしまいます。

品質のバラツキを生む原因と、それらの関連を、次よりくわしく論じていきます。

生産において、第一に管理すべきは原材料・燃料です。

原材料・燃料の品質レベルには、次の場合があります。

許容範囲外(欠陥品)

一部許容範囲外(含欠陥品)

許容範囲境界上(要調整品)

許容範囲内(良品)

欠陥品は、当然使用されません。

含欠陥品は、使用前または使用後に全量検査が必要となります。【含欠陥性】

要調整品は、加工条件、方法などを調整して、製品を許容範囲に入れるもので、

それら製品の、サンプリング検査が必要です。【要調整性】

良品(完全保障品)は、無検査で使用されます。

品質には、その供給量の安定度が含まれます。

第ニに管理すべきは、設備・装置・道具です。

これらは、使用が進むにつれて、

作動による磨耗

振動によるゆるみ

原材料、燃料、錆、埃などによる付着

以上の三点が起こり、全体に性能が劣化していきます。【劣化性】

装置の点検、注油、増し締め、清掃、修理、交換が必要となります。

また、いくつかの機能が、作動のバランスやタイミングからなっているとき、

過少生産量や過剰生産量で、それらがくるってしまうことがあります。【不調和性】

加工能力の管理が必要です。

第三に管理すべきは、技術です。

生産における原材料、燃料の最適な運搬・取付け・供給方法

装置など作動の最適条件、最適操作・使用方法

製品の最適な検査、取外し、運搬方法

これらが正確に行なわれるなら、品質にバラツキは発生しません。

しかし、最適な方法を見つけることは容易ではありません。【限界性】

方法(技術)の無知・未熟

方法(技術)の思い込み

方法(技術)の過限度

次に、人は方法を知っていても、それを行なわないことがあります。【錯誤性】

方法(技術)の忘れ

方法(技術)の勘違い

方法(技術)の混乱

方法(技術)の粗雑、怠慢

これらの対策として、明確な手順(マニュアル)が必要となります。

以上の管理すべき特徴の、相互に関連を、次に述べます。

生産は、原材料・燃料、設備・装置など、技術の三要素からなると述べました。。

原材料・燃料には、【含欠陥性】と【要調整性】がありました。

設備・装置などには、【劣化性】と【不調和性】がありました。

そして、技術には【限界性】と【錯誤性】がありました。

これらは、相互に関連します。

【含欠陥性】と【要調整性】:使用には調整が必要で、かつ、一部が

欠陥品となってしまう。労多くて益少なしという状況。

【含欠陥性】と【劣化性】:原材料の欠陥と、設備などの劣化による欠陥品の、

混在から、真の原因がわからなくなる状況。

【含欠陥性】と【不調和性】:原材料の欠陥と、設備などの不調和による欠陥品の、

混在から、真の原因がわからなくなる状況。

【含欠陥性】と【限界性】:原材料の欠陥と、技術の限界による欠陥品の、

混在から、真の原因がわからなくなる状況。

【含欠陥性】と【錯誤性】:原材料の欠陥と、人のミスによる欠陥品の、

混在から、真の原因がわからなくなる状況。

【要調整性】と【劣化性】:調整が必要だが、その調整が設備的に

十分に行なえない。または、無理な調整が、設備などの劣化を

さらに進めてしまう状況

【要調整性】と【不調和性】:調整が必要だが、安定した調整が、出来ない状況。

【要調整性】と【限界性】:調整が必要だが、調整技術が追いつかない状況。

【要調整性】と【錯誤性】:調整が必要だが、調整を間違えた、または、

忘れてしまった。調整に気をとられミスをした状況。

【劣化性】と【不調和性】:設備などの不調が、さらに不調和性を、

増幅してしまう状況。

【劣化性】と【限界性】:設備などの不調が、さらに技術的限界を、

下げてしまう状況。

【劣化性】と【錯誤性】:設備などの不調が、人のミスを誘発してしまう状況。

【不調和性】と【限界性】:不調和な状態のため、さらに技術的限界を、

下げてしまう状況。

【不調和性】と【錯誤性】:不調和な状態による無理が、人のミスを誘発してしまう

状況。

【限界性】と【錯誤性】:技術的な限界による無理が、人のミスを誘発してしまう

状況。

これらの状況が、製品のバラツキの発生を複雑にしてしまいます。

さらに、低コスト化、短時間化(稼働率UP)が、それらに拍車をかけます。

次に、品質と、これらの関連を、くわしく見ていきます。

低コスト化、短時間化(稼働率UP)と、品質バラツキの原因とは、

以下の関連があります。

低コスト化において、

【含欠陥性】:原材料の品質レベルは低下し、含欠陥率は高くなります。

【要調整性】:原材料の品質レベルは低下し、調整の度合いは高くなります。

【劣化性】:設備などへの低投資は、劣化を早めます。

また、補修・メンテナンスを節約、省略すれば、劣化を早めます。

【不調和性】:原材料の節約、設備等、人力の節約が、

不調和時間をを長くしてしまいます。

【限界性】:設備、装置、道具や備品などの節約が、

技術の十分な発揮の妨害となります。

【錯誤性】:人材の節約、教育時間の節約が、人のミスを招きます。

短時間化において、

【含欠陥性】:稼働の高速化によって、欠陥品の混入の確認が遅れます。

または、見逃されます。

【要調整性】:稼働の高速化によって、調整が間に合わなくなります。

【劣化性】:稼働の高速化は、設備等の劣化を早めます。

【不調和性】:稼働の高速化によって、不調和状況が増えます。

【限界性】:稼働の高速化は、技術的限界を下げてしまいます。

【錯誤性】:稼働の高速化によって、作業が間に合わず、ミスを誘発します。

生産が企業活動である限り、製品の価格は市場で決められ、

儲けるためには、コストを下げ、生産を早くしなければなりません。

そして、それをすれば、品質のバラツキが増えます。

品質が不安定なら、十分な検査工程が必要となります。

工程が増えれば、コストがかさみます。

検査を省略すれば、クレームが増え、その対応にコストがかかってしまいます。

大量生産は、原材料・燃料の品質、供給を安定させ、

設備などの使用が一定のため、無理がかからず劣化を起こしにくくし、

作業も一定で、ミスが少なく、多くの技術を必要としません。

大量生産は、低コストを実現し、作業性・作業効率も良く、

品質も安定します。

しかし需要が変化すれば、大量の在庫を抱えてしまいます。

売れなければ、生産コスト全てに、在庫の保管代、在庫の処分代が

かかります。

コストをどこにかけるか、もっとも利益を上げるにはどうすればよいかが、

経営手腕と言えます。

それらをふまえた上で、ふたたび品質をバラつかせる生産の要因の、

対策を、次に述べていきます。

安定した生産方式を確立するためには、品質をバラつかせる

六つの要因を抑えることです。

原材料・燃料の【含欠陥性】においては、

①投入前に検査を行なう。

②仕上がり製品の検査を行ない、フィードバックする。

③クレーム手順を明確にする。

④投入先を競合、選定する。

原材料・燃料の【要調整性】においては、

①原材料などの品質レベルを測定、数値化する。

②調整マニュアルを明確にする。

③仕上がり製品の検査を行ない、フィードバックする。

設備・装置などの【劣化性】においては、

①始動点検を行なう。

②定期メンテナンスを行なう。

③修理体制を整える。

④減価償却と、買い替えの計画を立てる。

⑤仕上がり製品の検査を行い、フィードバック手順を決める。

設備・装置などの【不調和性】においては、

①不調和範囲を明確にする。

②不調和範囲内の加工分を処分する。

③不調和の原因を改善する。

④仕上がり製品の検査を行い、フィードバック手順を決める。

技術などの【限界性】においては、

①限界レベルを明確にする。

②原料、設備、方法の改善を行なう。

③仕上がり製品の検査を行い、フィードバック手順を決める。

技術などの【錯誤性】においては、

①作業手順マニュアルを明確にする。

②適正な人数・作業時間を決める。

③作業を観察し、手順改善を行なう。

以上の内容をまとめると、次の方法となります。

(1)状況を観察する。

(2)データ―を出来るだけ数値化し、測定する。

(3)データ―を集積、分析し、特徴を導き出す。

(4)特徴を管理する手順(マニュアル)を作成する。

(5)仕上がり製品の検査から、結果をフィードバックする。

(6)改善を行ない、テストする。

(7)手順などを変更する

次に、これらの対策を、現実の企業活動の観点から述べます。

品質がバラつき、歩留まり性が悪い時、その原因がどこにあるかを観察・分析する

必要があります。

原因には、原料・燃料などの【含欠陥性】【要調整性】

設備・装置などの【劣化性】【不調和性】

技術・方法の【限界性】【錯誤性】がありました。

これらの原因が、単独または複合的に影響して、品質を劣化させます。

また、これらの負の性質を、増長させてしまうコストダウン、生産性アップ、

少ロット化があります。

それぞれの原因に対する対策をのべましたが、通常は、

原料などの投入検査や使用監視が十分に行なえない。

設備などのメンテナンス、修繕活動が十分に行なえない。

技術資料がない。方法に選択の余地がない。方法が多く限定できない。

手順が多く明確に出来ない。手順に融通性がない。

手順に従わず、自分勝手に作業する。

中間または仕上がり検査が十分に行なえない。

改善したため、予想以上の不具合が発生する。

以上のような現実があります。

製造は、企業にとって、ポジティブな活動ですが、

管理、メンテ、検査は、ネガティブな活動です。

これらのネガティブな活動に、どれだけ資金を費やせるかが、

それぞれの企業の潜在力であり、経営者の判断です。

品質のバラつきの原因を、すべて作業者や監督者の責任にしてしまう企業があります。

すなわち、【含欠陥性】や【要調整性】、【劣化性】や【不調和性】、【限界性】の原因を、

すべて、人の見落とし、技術不足や怠慢、【錯誤性】による原因にまで、還元して

しまうわけです。

作業者や監督者には、付帯作業として、それらの管理をする時間もパワーも十分なく、

結局、それが不可能に近いことから、問題はいつまでも解決されません。

【含欠陥性】や【要調整性】には資材管理スタッフ、

【劣化性】には保全管理スタッフ、

【不調和性】【限界性】には生産管理スタッフ、

他に、品質保証スタッフ、検査スタッフを配置するのが理想です。

しかし、人員が豊富である企業は少なく、当然、作業者・スタッフ兼任ということに

なりますが、品質のバラツキに大きな影響を及ぼす特性には、最低限の人員配置が

必要です。

作業者や監督者にも責任はあります。

それは【錯誤性】においてです。

これらが起こる原因としては、

(1)通常の作業に引きずられて、習慣的に作業してしまう。

(2)作業に対する知識の無さや誤解から、思い込みで作業してしまう。

(3)面倒な作業や、時間のかかる作業を避けてしまう。

(4)原材料・備品をムダにする、消耗を促すような作業を避けてしまう。

(5)手順に間違いがある、手順が無い、手順が混乱している。

以上があげられます。

この対策としては、わかりやすい明確な手順書を、作業場所に掲示することですが、

手順が増えれば、掲示場所が煩雑になってしまい、

略したポイントのみの掲示だと、誰も見なくなってしまいます。

【錯誤性】をなくすために、一連の作業を秩序的にする。

作業者などに無理をさせず、あせらせない。

ある程度の緊張感と、達成感を感じられるような作業内容とする。

これらの点をふまえて、次に、標準となる生産方式を想定してみます。

安定した生産方式とは、作業者がいつも、もっとも安定した状態で

作業ができる環境にあるということです。

そのような作業を設定する上で、まず、作業の分析が必要です。

一つの目的を持った動作の連続を、【単位作業】と名付けます。

たとえば一連の作業の中で、「ねじをしめる」というのが、【単位作業】です。

それは、「ドライバーを手に持つ―ねじをねじ穴に合わせる―ドライバーをねじ頭に合わせる

―ドライバーを回す―ドライバーをはずす」という連続した動作からなります。

【単位作業】を組み合わせて、大きな目的を遂行する一連の作業や作動を、

【単位工程】と名付けます。

たとえば、一連の作業をして、「カバーを取り付ける」というのが、【単位工程】です。

【単位工程】が集まって、一つの工程を作ります。

一つの工程には、一種類の設備、装置があり、それに投入される原材料、燃料があり、

決められた作業者数があります。

工程それぞれに規模があり、規模が大きくなると、その工程は場所、時間的に独立します。

作業者にとって、安定した作業とは、

(1)作業が、作業者の能力にとって、単純すぎないこと。

いくつかの【単位作業】の繰り返しで、

大きな目的を持った【単位工程】を任せられていないと、

達成感がなく、その作業に飽きて、苦痛となってしまう。

雑用意識でなく、責任感を持てるようにする必要があります。

(2)作業が、作業者の能力にとって、容易すぎないこと。

【単位工程】を任せられても、簡単すぎる、または余裕がありすぎて、

緊張感や、発展していく期待感がないと、

この場合も、その作業に退屈して、苦痛となってしまう。

能力に応じて、複数の【単位工程】を任せる、

または、工程全体を任せる必要があります。

(3)作業が連続しており、作業順序が決まっていること。

いくつかの【単位工程】の作業を同時に行なわなければならなく、

それぞれの作業の合間に別の作業をするという、流れがランダムであると、

作業者の集中力が薄らぎ、ミスが多くなります。

作業は、一連の連続作業にするのが理想です。

また、作業は計画通りに行なわれるべきで、急な変更は防止すべきです。

(4)作業時間に適度な余裕があること。

【単位作業】に時間的余裕がなく、遅れ始めると、作業が渋滞してしまい、

作業者の焦り(切迫感)を引き起こします。

作業内容の手抜きが起こりやすくなります。

また、作業者の時間に、まったく自由がないと、強制感を感じて、

やる気が失われます。

(5)トラブル発生、異常または不良が発見された場合、その処置が、

作業者の過剰負担に、ならないこと。

トラブルなどで、作業者に過剰負担がかかると、それを次回から避けようとして、

問題発生の無視が起こってしまいます。

異常事態には、緊急スタッフが援護に入るのが、理想です。

その工程の監督者も作業者も、作業再開を急ぐため、

起こった現象の、真の原因が追求されずに済んでしまうことが多くあります。

原因追求も、緊急スタッフの役目です。

(6)作業者が、ルールを知っており、ルールの内容を理解し、

ルールを遵守する意識があること。

そのためには、ルールに対する教育時間が必要であり、

組織全体で、ルールを尊重する意志が必要です。

ルールが容易に作られない、変えられない、

ルールが見直され、形骸化してしまわない、

守れないルールをつくらない、

拡大解釈できない、または多少の融通性がある、

そのようなルールがつくれるシステムが必要です。

人は、欲求と感情に左右されます。

100%怠慢な者もいなければ、100%勤勉な者もいません。

作業者が充実して働ける環境を、できるだけ設定すべきです。

安定した環境から、安定した製品はつくられます。