07.環境論

ここで述べる環境とは、人の意識を取り巻く状況と言う意味です。

それらは、大きく二つに分けられます。

意識の外の状況を示す外環境と

意識の中の状況を示す内環境です。

外環境は、対人環境があり、

さらにその上をおおう社会環境があり、

さらにその上をおおう自然環境があります。

対人環境とは、一人または数人の人間が、自分との関係において発生する状況のことです。

社会環境とは、共同のルールの下で、大勢の人間との関係において発生する状況のことです。

自然環境とは、人間をとりまく生態系、生態系をとりまく自然現象全体のことです。

内環境とは、自分の身体でありながら、自分の意識とは別の存在である、

自律系統のことです。

自分では制御できない、遺伝子、細胞、組織、本能、精神の一部が含まれます。

内環境は、意識に、生きよという衝動を与えます。

意識は、外環境に、生きるためのエネルギーの獲得を求めます。

意識はまた、内環境に、生きよという衝動の制御を求めます。

その衝動が、逆に、エネルギー獲得の障害になることがあるからです。

外環境の、他の生命も、エネルギーを獲得しようとしています。

そのために外環境(他の生命)との間に、競争、奪取、協力状態が発生します。

また意識は、外環境に、エネルギーを与えることによって、さらに大きなエネルギーに

成長させ、獲得するという方法を取ることもあります。

前回【6.生きるとは?】で述べたように

意識は、本能に従って生きながら、本能を拒否し、

自己本位でありながら、協調性を求めるという、矛盾した、複雑な働きをします。

これらはすべて、意識と内環境、意識と外環境との関係から生まれたものです。

そして、人は環境から、うむを言わさず、攻撃や妨害を受けます。

意識の、内環境、外環境との葛藤と言えます。

自分の意識が、環境に対して、主導権を取っていられる範囲があります。

その範囲を、自己環境と呼びます。

主導権を取るとは、環境との関係において、大半の部分が、自分の意識の自由になると

言うことです。

生きる喜びが、いくつかの欲求の達成にあるのなら、

自己環境の確立と、範囲の拡大が、人生の幸福と言えます。

人生の幸福とは、生きる楽しさ、満足、安定のことです。

当然、自己環境が発達したものほど、欲求が達成しやすくなり、

生きる喜びを感じる機会に、多く恵まれることが、

人生の幸福の状態にあると言えるわけです。

自己環境が論理的、秩序的である必要はありません。

環境との葛藤において、優位であればよく、偏向的でもよいわけです。

普通は、性格や経験、外環境の影響力によって、自己環境の範囲が限定されますが、

さらに発展させるためには、優位性を確固とするための方法が必要です。

武士道や、商人魂、職人魂など、概念によって、自己環境を確立する方法や、

宗教など、信念によって確立する方法があります。

秩序思考によって、論理的に自己環境を確立する方法もあります。

自己環境を、秩序思考によって確立する方法を、以下にまとめます。

前々回において、

秩序思考は、四つの思考法と、さらに三つの機能(リード、ガード、ヒール)に分かれ、

すべてで12項目に分かれることを述べました。

それらから、12の方法があげられます。

論理思考 (L) 想像力をもって、ものごとを観察し、工夫する、

問題を解決し、再発を防止し、現状を発展させます。【想】

そのためには、整然さが必要です。

(G) すべきことをする、人目を気にせず義理を果たせば、

因果は、人に影響されず、理に従います。【義】

そのためには、毅然さが必要です。

(H) 誠意をもって事にあたれば、因果が良い方に

導かれる確率が高くなります。【誠】

そのためには、泰然さが必要です。

システム思考 (L) 計画を立て、順序よくこなしていけば、

ものごとの達成は、より確実となります。【順】

そのためには、整然さが必要です。

(G) 叡智を働かせ、付着した余分なものを取り除けば、

ものごとの本質が見えてきます。【智】

そのためには、毅然さが必要です。

(H) 全体から、時間軸から見方を変えて、ものごとを展開すれば、

本質が見えてきます。【展】

それには、裕然さが必要です。

バランス思考 (L) 秩序を保つには、制御が必要です。

意識には、節制が必要です。【節】

そのためには、毅然さが必要です。

(G) 自然に従えば、理にかないます。

意識は、偶然を宿縁として受け入れる必要があります。【縁】

そのためには、裕然さが必要です。

(H) ものごとは、他とのバランス状態にあります。

完全と言うものは、偏りを生み出します。

ある程度満たされれば、諦めることも必要です。【諦】

そのためには、整然さが必要です。

シンプル思考 (L) ルールを守り、礼儀をもって事にあたれば、

人間関係は円滑に進みます。【礼】

そのためには、泰然さが必要です。

(G) 明確、正確を心がけ、基本にムダなものを付着しないようにすれば、

ものごとは理に従います。【直】

そのためには、整然さが必要です。

(H) 自分を信じる、自分の経験、知識、感覚を信じて判断することが、

複雑な状況の対処に、有効性を示します。【信】

そのためには、毅然さが必要です。

自己環境を発展させるための、意識の四つの態度が明らかになりました。

泰然、裕然、毅然、整然です。

泰然とは、陰湿を嫌い、正々堂々と構える態度のことです。(論理思考を主に支持)

裕然とは、ゆとりを持って、広く接する態度のことです。(システム思考を主に支持)

毅然とは、強く、徹底する態度のことです。(バランス思考を主に支持)

整然とは、整理して、単純明解にする態度のことです。(シンプル思考を主に支持)

ここで、自己環境についての意味を、あらためて明らかにしておきます。

外環境―意識―内環境という構図で、個人から見た世界は出来ています。

意識は、欲求を達成するために、環境に働きかけます。

そして、より達成しやすくするために、自分の回りの環境を、

道具や手段として利用するため、一部、支配します。

それが、自己環境です。

環境であるため、当然、他者の意識も、それを利用しようと支配してきます。

自己環境が確固としたものであれば、他者を受けつけないわけです。

どの程度の範囲までが自己環境であるかは、

人それぞれの認識によって違います。

環境を論じる上で、自己環境の確立は、大きな要素ですが、

もう一つ、大きな要素があります。

それは、それぞれの環境で生じる気流と言うものです。

内環境では、生体気流、

対人環境では、相対気流、

社会環境では、欲望気流、

自然環境では、自然気流が存在します。

気流の気とは、いわゆるポテンシャル・エネルギー(位置エネルギー)と呼ばれるものの

考えと同じです

ポテンシャルエネルギーとは、物を高く持ち上げた時、重力によって、下に落ちようとしますが、

その落ちようとする力のことです。

それは、物を持ち上げるために必要としたエネルギーと同じ量です。

物質が、他の物質に変化することによって生じるエネルギーとは違い、

ポテンシャルエネルギーは、基本的に物質の変化が起こらないものです。

どんなエネルギーも、分散、平衡化しようとします。

エントロピー(無秩序の度合い)は、たえず増大しようとしているわけです。

高く持ち上げられた物も、いつかは、下に落ちてくるわけです。

それぞれの環境も、ポテンシャルエネルギーを持っています。

それらもやがて、分散、平衡化しようとします。

そのときのエネルギーの流れが、気流となるわけです。

それぞれの環境における、エネルギーの流れを見てみます。

それぞれの環境には、気流が発生しています。

内環境では、体内において、生体気流が流れています。

血液が、まず細胞に、燃料を運び入れ、老廃物を運び出します。

生きようとするエネルギーが、その細胞から発生し、それらが全身を活性化します。

細胞レベルから、自律系レベルを活性化し、

生きるための維持、生きるための生成に、エネルギーがつかわれます。

そして、本能レベルを活性化して、生きるための獲得を目指します。

これらが、生体気流のおもな流れです。

生きるための獲得のために、

やる気(挑戦意欲)や、覇気(達成意欲)、根気(持続意欲)が発揮されます。

生体気流で、エネルギーが完全に放出されるならば、

生体として、健康であると言えます。

外環境域の、対人環境においては、他人との間に、相対気流が流れています。

コミニュケーションによって、相互の間に、次の三つの関係が発生します。

利得関係・・・自分の欲求の達成を推進する。

損害関係・・・自分の欲求の達成を妨害する。

無利害関係・・・自分の欲求の達成に対して、無関係である。

これらは、自分から見た関係であり、

自分にとっては、利得関係でも、相手から見れば、損害関係であることもあります。

これらの関係が、その場のポテンシャルを上げ、エネルギーを発生させます。

互いが利得を感じるならば、エネルギーは欲求の達成のほうに向けられます。

互いが損害を感じるならば、エネルギーは敵対、回避のほうに向けられます。

互いの関係の、感じ方の違いによって、発生するエネルギーの量が違います。

発生したエネルギーは、関係に対処する行動によって、放出されます。

それらは、一時に放出される場合もあれば、滞留して、やがて消えていく場合もあります。

自分の意識のほうに、多く滞留してしまうと、それはストレスとなります。

強くストレスを溜めないためには、

あまりにも強い相対気流を起こす相手との関係は避ける。

相手が通常ではないとして、関係をまともなものとして受け入れない。

滞留したエネルギーを、生体気流とともに放出する、という方法があります。

次の、社会環境では、欲望気流というものが流れています。

社会は、個人それぞれの欲望が集積し、また干渉し合って、形成されています。

欲望とは、人の意識の持つ、五つの欲求のことです。

生存、種存、存在、達成、秩序欲求の五つです。

ある社会、または集団、組織において、その構成員のおおよその欲求が、

同一の方向を向いた時、そこに大きなエネルギーが発生します。

エネルギーは目的達成に向かい、欲望気流が流れます。

達成が容易すぎる場合、または、困難過ぎる場合は、気流はやがて収まります。

達成が、人々の競争心をあおる程度の難易度であると、、

欲望はさらに欲望を生み、社会全体を引き込んで、さらに成長していきます。

欲望気流は大きな流れとなります。

欲望気流は、台風のように、まわりを巻き込んでいく性質があります。

やがて、目標が充分に達せられると、すみやかに収束します。

欲望が引き起こす気流であるため、覚め始めると、収束も早いわけです。

社会の欲望気流に乗れば、人や企業は多くの利益を得ることができます。

しかし発生するエネルギーが大きいため、巻き込まれで、被害を受けることもあります。

欲望気流に乗れないと、優れた特徴があっても、

なかなか社会に認められないことが多くあります。

次の、自然環境では、自然気流が流れています。

自然は、生態系、気象系、地殻系の三つに分かれます。

生態系とは、すべての生物の活動の状態を言います。

気象系とは、おもに太陽エネルギーを受けての、大気の活動の状態を言います。

地殻系とは、地球内部の熱エネルギーによる、地殻の活動の状態を言います。

(海流は、気象系と地殻系の両方に含まれます)

生態系では、生物間での生存競争と、食物連鎖によるバランスの

二つの大きな状態からなっています。

一部の生物が、何らかの優位性から、異常に多く繁殖すると、

食物連鎖のバランスが崩れ、エネルギーが発生します。

そのエネルギーは、環境全体に対して影響を及ぼします。

現在では、人間の繁殖が大で、環境に大きな変化をもたらしています。

気象系に関しては、惑星としての大きな変化がないため、

周期的に、気流が流れる程度です。

人の環境破壊による、オゾン層の拡大などの変化が、

大きな原因になる可能性があります。

地殻系に関しては、不定期な地殻変動が起こります。

地殻内の熱エネルギーの変化が複雑で、今だ予測しきれない状態です。

以上が、意識と環境とのかかわりを、大きくまとめたものです。

各環境も、そこで流れる気流も、はっきりと分かれているわけではなく、

その境界は、ぼやけています。

人が生きる上で、自己環境の確立と、

気流の流れを読むことが、人生の目的の達成を容易にします。