19.仕事術

仕事とは何でしょうか?

生きるためにエネルギーを得る行為、すべてを言います。

今日を生きるためではなく、明日を生きるためのエネルギーです。

ゆえに、そのエネルギーは保存される形でなければいけません。

食料という形、燃料という形、財産という形などです。

今日の少しのエネルギーで、明日の多くのエネルギーを得ることが出来るのが、

効率の良い仕事です。

効率が良いとは、安く(低コストに)、早く(短時間に)、正しく(確実に)、

ものごとを成し遂げることです。

その仕事の方法は、産業によって違います。

産業は、大きく四つに分類できます。

生物は、太陽エネルギーを集めて、大きなエネルギーへと変換していきます。

一つ目は、そんな生物を仕事の対象とする、農業、漁業、畜産、林業などの生物産業です。

生命の原理にもとづいて、いかに効率良く、生物を成長させるかがポイントとなります。

二つ目は、地下に眠る高エネルギーの鉱物、燃料を掘り出す鉱業や、

太陽エネルギーや、原子力を利用するエネルギー産業、

排出物を再原料化するリサイクル産業などの、資源産業です。

化学の原理にもとづいて、いかに効率良く、エネルギーを導き出すかがポイントとなります。

工業は、上で得られた天然資源を加工することによって、

人が暮らす上で有用な、様々な品物を作り出します。

三つ目は、これら形を変更、材料を組み合わせことによって、ものごとの効率化、動力化、

制御化(自動化)を行なう、加工産業です。

物理の原理にもとづいて、それぞれのより用途に合った構造を、

効率良く作り出すことがポイントとなります。

商業は、上で作られた製品を、製造者から使用者に効率良く供給することです。

四つ目は、これら製品に、労力・時間や知識・技術、環境も含む、サービス産業です。

経済の原理にもとづいて、より安く供給する、より早く供給する、

よりニーズにあった品質を供給することが、ポイントとなります。

以上をまとめると、自然のエネルギー物質である生物や、資源を加工して、

生活エネルギーとして活用できるよう製品にし、供給するのが、人の仕事と言えます。

効率の良い仕事術として、第一に、その対象物(原料、材料、製品)の知識を

十分に獲得しておく必要があります。

次に、それぞれの仕事を、その対象(原料、材料、製品)との関わり方から、

分類します。

人が、その身体的能力のみで仕事をする。

人が、道具を用いて仕事する。

人が、装置を用いて仕事をする。

人が、設備を用いて仕事をする。

ここで言う道具とは、身体の延長として使えるような、応用範囲の広い、

簡単な仕組みのものを指します。

装置とは、自ら動力や制御を持って、人と共同して仕事する、応用範囲の限定された、

移動可能な仕組みのものを指します。

設備とは、仕事のほとんどを自動でこなしてしまうが、応用範囲の狭い、

大掛かりな仕組みのものを指します。

身体、道具、装置、設備、それらを使うには、それぞれの知識と技術が必要です。

技術とは、身体を効率良く働かせる技術、

道具を効率良く取り扱う技術、

装置を効率良く使用する技術、

設備を効率良く管理する技術があります。

身体の技術とは、頭脳系と肉体系に分かれます。

頭脳系は、観察力(五感能力)、

記憶力(学習能力)、

分析力(把握能力)、

推理力(想像力)、

創造力(発想力)、

そして、表現力(会話、文章術など)があります。

肉体系は、すばやさ、反射力(運動神経伝達の効率化)

力、持続力(エネルギー流入出の効率化)、

器用さ、しなやかさ(感覚神経伝達の効率化)があります。

これら二つの系が組み合わさって、いろいろの特徴的な技術が作られます。

道具、装置、設備を使う技術は、これら身体的技術の応用です。

道具を使えば、上のそれぞれの身体的技術の限界を越えて、

ものごとを成し遂げることが出来るようになります。

道具の使用には、上にあげた頭脳系の、観察力と記憶力がおもに必要であり、

熟練した肉体系の技術が必要です。

装置を用いれば、さらに人が成し遂げれる行為の、

何十倍以上の能力(すばやさ、力、確かさ)を発揮することが出来ます。

複雑な装置の使用になるほど、頭脳系の観察力・記憶力・分析・推理力が重要となり、

肉体系の技術は、少なくなります。

装置の組み合わさった設備を用いれば、さらに安定して大量に

ものごとが成し遂げれるようになります。

大きな設備の使用になれば、広範囲、多様化した頭脳系の技術が必要となり、

肉体系の技術は、少なくなります。

そして、通常の安定した状況を維持し、すぐに異常に気づくというような、

管理要素(総合力)も、必要になってきます。

ものを作るという観点を中心にみてきましたが、ものを売る、またはサービスを売る技術も

同じです。

この場合は、さらに表現力が重要となります。

需要者に、購買意欲を引き起こす技術です。

以上、効率の良い仕事術として、第二に、その仕事を成し遂げる方法の知識と技術を

得ることが、必要であると言えます。

次に、これらの技術の向上(レベルアップ)について、論じていきます。

効率良く仕事するとは、短時間、低コストで、確実に、

ものごとを成し遂げることでした。

そのためには、その仕事に対する知識を、十分に持っていなくてはいけないと

述べました。【知識】

仕事の対象物に対する知識、

仕事の方法に対する知識、

仕事に使う、道具、装置、設備の知識

そして、頭脳系と肉体系の、身体的な技術が必要だと述べました。【技術】

第三に、ものごとを成し遂げようとする達成意欲も必要です。【意志】

この三つの要素、【知識】【技術】【意志】をレベルアップするには、

その者の理解力がポイントとなります。

理解力とは、前ページで述べた五つの能力(観察、記憶、分析、推理、創造)を使って、

ものごとの成り立っている基本的な論理を判明させる能力のことです。

基本的な論理には、以下の三つがあります。

所属の論理:ものごとを簡単な言葉で、その所属を定義する。

組み合わせの論理:仕組みを構成している、全ての部分を解く。

変化の論理:原因から結果への、確率的変化を読む。

【知識】では、理解力がなければ、丸暗記となり、応用性もなく、やがて忘れてしまいます。

十分に理解して記憶し応用する、それが知識(学習能力)のレベルアップということに

なります。

【技術】のレベルアップ(スキルアップ)も、まず頭脳系で理解して納得して、

十分な自信を持つ必要があります。

次に肉体系で、高感度の感覚を磨き、動作のバランスを体で覚え、

皮膚感覚で、ものごとの状況が、すばやく判断できるようになることです。

【意志】のレベルアップには、達成への、過程と結果の意義を理解することです。

成し遂げることが、困難であればあるほど、達成感は充実し、意欲は増しますが、

しかし、困難すぎて、達成できないことが予想されると、意欲は低下してしまいます。

知識や技術がレベルアップすると、達成への意欲もレベルアップします。

次に、仕事術における失敗(ヒューマンエラー)について述べます。

【レクチャー№87運命論】において、

人の行動を狂わす四つの要素をあげました。

①面倒

②思い込み

③あせり

④不安定(不自由)

これは、失敗の要因でもあります。

①気力・体力がないと、人は面倒くさがり、ものごとを楽なほうに、

自分の都合のいい方に判断してしまいます。

また、面倒くさがって、手を抜いたり、確認を怠ったりして、ミスをします。

そして、対応の持続力がなく、達成が中途半端になります。

②技術・知識がないと、人は適当な推測をして、誤った判断をしてしまいます。

また、短絡的にものごとを見てしまい、目立つものに気をとられます。

想像や思い込みで行動し、ミスをします。

対応に論理性がなく、達成までが紆余曲折してしまいます。

③時間がないと、人はあせります。

あせりは、論理の組み立てが待てず、カンに頼り、判断を誤らせます。

対応の順序を間違えたり、途中を抜いてしまったりして、ミスをします。

対応にあわて、中途半端な達成となってしまいます。

④、不安定な状態では、思考が落ち着かず、判断をあやまります。

行動範囲が狭められ、不自由さからイラつき、ミスをします。

行動に無理が生じ、達成に時間がかかります。

これら失敗を防ぐ対応を、【18.運命論】で述べましたが、

この仕事術においても、

仕事に十分興味を持つ。

仕事を十分に理解する。

完全志向をしない。

ものごとを秩序化する。

以上がポイントとなります。

仕事は、ほとんどの場合、数人の共同者とともに行います。

最後に、共同作業における仕事術を述べます。

共同者との関係は、自分にとっての部下、同僚、上司の三通りです。

これらの関係が良好であれば、当然、仕事は効率良く成し遂げられます。

部下に対しては、仕事を正しく教える。

仕事をやらせ、能力を見る。

能力に応じた仕事を任せる。

以上が必要です。

同僚に対しては、仕事を役割分けする。

連絡して協力しする。

互いに技術を競う。

以上が必要です。

上司に対しては、任された仕事をこなす。

状況や結果を報告する。

仕事上の問題点を相談する。

以上が必要です。

これらの関係が、機械的に行なわれるならば、問題はないのですが、

認識・記憶の思い込みが強い、

感情の起伏が激しい、

欲求の衝動が大きい、

思考能力が低い

それらによって、正常な判断が歪められ、関係をこじらせている場合が

多くあります。

仕事術において、人と関わる点については、部下の、同僚の、上司の、

上のどの傾向があるのかを知り、まず理解します。

当然、自分の現在の傾向も、第三者的に知っておく必要があります。

そして躊躇することなく論理を通す態度をとることが、複雑な人間関係においても、

結果的にものごとを効率良く成し遂げることが出来ます。

しかし完璧な論理で、相手を納得させるというのは、ほとんどの場合、不可能です。

自分が100%正しいと言い切れるということも、ほとんどないはずです。

仕事を共同にする上で、関係に齟齬やそのためらいがあっては、効率良く進みません。

結論の出ないことに対しては、限度での強引な割り切りが必要です。

部下に対しては、命令として割り切り、指示します。

同僚に対しては、成り行きに任せるか、妥協します。

上司に対しては、組織としての秩序として、相手に合わせます。

仕事の共同者が、自分の会社以外の者の場合があります。

共同者が顧客の場合は、上司に接するのと同じであり、

関係者の場合は、同僚と同じであり、

委託者の場合は、部下と同じです。

自社の者とは違い、外部の者とは、契約を重視し、

さらに割り切った機械的な関係が必要です。

良い意味でも、悪い意味でも、感情を持ち出さず、

関係には、礼儀を持って対処するのが、ベストです。

以上、効率の良い仕事術を求めて、述べてきましたが、

その効率の良さが、現時点においてのことか、全体においてのことか、

将来に渡ってのことかを、見極めなければなりません。

現時点で、見かけは効率が悪そうであっても、最終的に効率が良ければ、

仕事術として、正しいわけです。