17.問題解決法

今回は、人が多くの場面で出会う、数々の問題の、

その解決の一般的な方法を論じていきます。

【2.意識とは?】において、人は、意識回路の中の、

意識野で、起こった問題に対応しようすることを述べました。

意識野は、仮想パターンを設定するという機能を働かせます。

仮想パターンを設定することによって、つぎの五つの能力を発揮します。

① 観察力 : 物事を、既存の認識パターンと比較、その差異を発見することです。

② 記憶力 : 物事の特徴を単純化したパターンを想定、名前を付けて保存する

ことです。

③ 分析力 : 物事を分解したパターンを想定、その仕組みや特徴を分類することです。

④ 推理力 : 物事の因果のパターンを想定、その変化を予測することです。

⑤ 創造力 : いくつかの物事の組み合わせパターンを想定、新たなものを

作り出すことです。

意識野は以上の能力を使って、論理を立て、問題を解決しようとします。

問題解決の方法を、この能力の順に述べていきます。

【観察】

この能力の順に従い、はじめに問題の観察を始めます。

何が、問題なのか(what)?

いつ、問題なのか(when)?

どこで、問題なのか(where)?

どのように、問題なのか(how)?

そして、

問題が継続的か、断続的か?

これは、問題が発生する確率によるものです。

確率が低いほど、発生が断続的で、この場合は、多くのデータをとって、

統計的に観察する必要があります。

その他、観察のポイントとしては、出来るだけ、問題が発生している状況を、

直接に見る必要があります。

直接ではなく、他人からの情報だけでは、そこに偏見が入っている恐れがあるからです。

事実を見ることが大事です。

わかりきっていると思い込まず、出来る限り事実を、自分の手のひらに乗せてみることが、

大事です。

【記憶】

観察された問題の、状況全体をパターン化して、記憶します。

その状況に、名前をつけることは、記憶と今後の探求を、容易にしますが、

本質とずれた名前は、偏見をあたえてしまうため、慎重さが必要となります

【分析】

発生している問題の状況を分解、整理して、付帯しているものごとをとり除き、

問題の本質的な構造に分解します。

最も単純な原理に分解されたなら、対策も容易に立てられます。

【1.想定論理】において、以下のように述べました。

物事の関連は、以下の三つの原理に分けられます。

(1)所属の関係 (2)組み合わせの関係 (3)変化の関係

(1)所属の関係とは、例えば、「人間は哺乳類である(に属する)」というような、

物事の所属の範囲をあらわすものです。

所属の範囲は、言葉の定義によって限定されます。

二つの関係としては、AはBに属する、BはAに属する、AとBの一部分が共通する、

AとBは無関係である、の4パターンがあります。

(2)組み合わせの関係とは、ジグソーパズルのように、部分が集まって全体となる

関係です。部分の総和は全体になり、部分の重複も不足もありません。

(3)変化の関係とは、「風が吹けば、枝がゆれる」というような、ある物事に対して、

何かが付加する、または削除されて、別の形に、確率的に変化するということです。

A+α⇒B(またはA-α⇒B)

Aとαは原因となり、Bは結果となる、因果の関係とも言えます。

以上が、論理を構成する三つの基本原理です。

問題は、必ず、これらの原理が組み合わさって起こります。

それぞれの、主体となる原理が何かまで、分解します。

【推理】

分解した問題の、基本原理にもとづいて、原因を予想し、対策を立てます。

(1)の所属の関係では、主に問題は、原因が何かに所属しているために

起こっています。

たとえば、「人間は動物である」ために、理性があっても、

本能に負けてしまうということが原因で、社会ルールに違反するという結果が

発生するというようなことです。

(2)の組み合わせの関係では、主に問題は、部分の完全が欠けたために、

起こっています。

たとえば、電気装置の一ヶ所が断線したことが原因で、

装置全体が動かなくなるという、結果が発生するというようなことです。

(3)の変化の関係では、主に問題は、状況に何かが付加する、または削除されて、

それが原因となって、起こっています。

たとえば、風が吹いて、アンテナがずれたのが原因で、テレビの映りが悪くなるといった

結果が発生するというようなことです。

これらの推理を厳密にするために、以下の検証が必要であると、

【1.想定論理】で述べました。

① 【二つの物事の関連において、論理を立てる根拠が、出来るだけ多くあること】

② 【その関連や、周辺状況において、立てた論理と矛盾が生じることがないこと】

③ 【論理が複雑化して、可能性の確率が低くなってしまわないこと】

④ 【基礎となる、経験、知識、常識感覚が、合理的であること】

⑤ 【以上の条件の状態を考慮して、導き出された結果が、どの程度の確かさにあるか

認識し、条件の変化に応じて、たえず軌道修正すること】

【創造】

問題の原因が判明したとして、その対策は、

問題が発生していなかった状態まで、復元するのが基本です。

しかし、状況がすでに復元を、不可能にしている、

復元する状態が、不明である、

復元しても、すぐに再発してしまう、

以上の場合は、状況の改善が必要です。

改善とは、問題を発生させる因果関係を、絶ってしまうように、

状況を変化させることです。

(1)ものごとの構造の、組み合わせ変える。

(2)ものごとの構造に、別なものを付加する。

(3)ものごとの構造から、障害を取り除く。

(4)ものごとを変化させる、順番を変える。

改善をすることによって、状況が変わり、

そのことによって、予期しない、新たな問題が発生してしまうことがあります。

やみくもに改善してしまうのでなく、自然の因果にしたがって行ないます。

ちょっとした工夫から、大掛かりな改善や、まったく新しい創作まで、

これらはすべて、人の創造力によります。

問題解決は、以上の観察、記憶、分析、推理、創造、それぞれの能力を

順番に、または同時に働かせて行ないます。