前回、企業論を述べました。
企業は、製品を製造して、供給する組織です。
供給するためには、
需要調査・・・情報収集、製品開発、未来予測
宣伝・・・製品の広告
供給設備、道具、燃料・・・展示、運搬、保管
労働力、方法、時間・・・技術、能力
製品・・・物品、サービス、場所、時間
以上が必要であると述べました。
今回は、それら供給についての考察を、
商売という観点から、より詳しく行なっていきます。
商売とは、需要に対して、いろいろな形で製品が供給されようとしますが、
その需要者と、供給者との間に発生する経済的交渉のことです。
現在は、供給過剰の時代であるため、
需要供給の交渉は、需要者側に優位性があります。
製品に需要があっても、それで売れるというわけではありません。
需要者が欲しているのは、製品ですが、それに付随して、
入手できた充足感、安心感、利得感も求めています。
それらが付随している製品のことを、商品と呼ぶことにします。
供給者は、以下の点で、需要者の便宜を図ります。
(1)製品がそこで手に入ることが、告知されていなければなりません(宣伝)。
(2)適正な品質、適正な値段、適正な納期が、保障されていなければいけません(信用)。
(3)他より良い品質、安い値段で、早く手に入ることが優先されます(利点)。
(4)商品の選択、供給が容易になされることが必要です(環境)。
(5)需要者の、その他の欲求も満たされることが求められます(快楽)。
次のレクチャーで、これらの点を、もっとくわしく見ていきます。
(1) 宣伝
需要者に、商品が存在することと、その供給方法を、
知らさないことには、商売は始まりません。
宣伝の目的には、
商品自体の品質、イメージ、需要供給状況から、需要を引き起こす。
供給方法を紹介する。
供給者の信用、環境、イメージなどで、安心感、を与える。
商品、供給の利点から、利得感を与える。
以上があげられます。
宣伝方法としては、
ラジオ、テレビなどの放送媒体・・・効果最大、広範囲、随時性
新商品の需要拡大、供給者の信用UPに効果あり。
新聞、雑誌、本などの出版媒体・・・効果大、広範囲、随時性
新商品の需要拡大に効果あり。
インターネットなどによる通信媒体・・・効果小、広範囲、速時性(選択性)
特殊な商品の供給に効果あり。
配布チラシ、掲示チラシ、DMによるもの・・・効果中、中範囲、適時性
商品紹介、値段が安いなど利得感を与えることに効果あり。
固定・移動看板、電話帳によるもの・・・効果中、中範囲、定時性
店舗紹介など供給方法の宣伝に効果あり。
店舗デザインによるもの・・・効果中、狭範囲、定時性
イメージで、安心感、利得感を与えることに効果あり。
商店街や多角店舗の、商品展示によるもの・・・効果大、狭範囲、定時性
商品紹介、利得感を与えることに効果あり。
以上があげられます。
(2) 信用
需要者が欲している商品では、それに付随している、
充足感、安心感、利得感も求めていると述べました。。
上の宣伝では、それらが叶えられることを、需要者に紹介するものでしたが、
この信用では、それらが叶えられると、需要者が信じられることです。
第一に供給者の環境の良さが、信用を生みます。
すなわち、供給設備が整備されている必要があります。
品揃いが良い、入手しやすい、価格が安定している点があげられます。
展示状態や、商品、その包装のデザインや形態の雰囲気に高級感があると、
それも、品質の良さの錯覚を呼び、信用を生み出します。
逆に、展示の雑多感が、品揃えの豊富さの印象をあたえ、
また展示の低コスト化が、値段の安さの印象をあたえ、それぞれの信用を生み出します。
つぎに信用を呼ぶのは、
会社、商品、商店のネームバリューが、マスコミなどで十分に、宣伝されていることです。
大勢の者が使用している錯覚を生んで、商品の品質などに問題がないような、
根拠のない信用も生み出します。
信頼のおける人が使用しているということも、信用を生み出します。
アフターフォローの充実も利点となります。
クレームに対しても、早い、的確な対応がなされると、信用を生み出すことがあります。
商売をすすめるにおいては、何を信用されたいのかが、重要なポイントになります。
商品の品質なのか・・・充足感
商品の豊富さ(品揃え)なのか・・・安心感
商品の価格なのか・・・・利得感
取り扱う商品の性質によって、変わってきます。
(3) 利点
取り扱う商品が供給過剰であれば、供給者同士は競争となります。
他の供給者より、いくつかの利点を持つことにより、競争に優勢になります。
その利点とは、ここでも、充足感、安定感、利得感に基づきます。
もっとも効果があるのは、値段が安いということです(利得感)。
値段を下げるには、仕入価格を下げる、
販売コストを下げる、
利益率を下げるの、三つの方法があげられます。
次に、商品がいち早く手に入るということです(安心感)。
商品を間に合わせるためには、在庫を豊富に持つ、
納品経路が短い、または多い、
予約が容易に出来るの、三つの方法があげられます。
取り扱ってる商品に、特異性があるということも、利点にあげられます(充足感)。
同じような種類、類似の商品では、センスの良いものが好まれます。
センスが良いとは、素材に高級なものが使われている、
製作に時間がかけられ、つくりが丁寧である、
デザインの調和がとれて、形が美しい、
デザインが新鮮、ユニークである、
優れた技法や、アイデアが生かされている、
持っている機能が、十分に生かされている(耐久性など)、
使用される環境とマッチしている、などがあげられます。
その他には、サービスの付加というものがあります。
・おまけの物品や、割引券等を付ける(利得感)、
・ローンなどで、支払いを後払い・分割に出来る(利得感)、
・接客態度で、安楽感、優越感を与える(充足感)、
・アフターサービス(修理、点検、交換、返品、クレームなど)が受けやすい(安心感)、
・技術や製品情報が、豊富である(利得感)、
・ビフォアーサービス(予約、注文など)が受けやすい(安心感)。
以上のものが、あげられます。
(4) 環境
今まで述べてきた、(1)宣伝、(2)信用、(3)利点、次の(5)快楽の効果を、
雰囲気から作り出す環境は、需要者が供給者を選択するための、重要な要素です。
繰り返しになりますが、簡単に、その効果をあげます。
需要者(客)がもっとも尊重されているような雰囲気を生み出す(充足感)。
商品の選択、注文、購入、受け取り、返品・変更が容易に出来る(安心感)。
供給者に信用や、需要者に利点があるような雰囲気を生み出す(利得感)。
(5) 快楽
人は、五つの快楽追求と、五つの不快苦回避の欲求があります。
それらの欲求と、今までに述べてきた需要者の求める、充足感、安心感、利得感との
関連をあげます。
休養追求――(生存本能)――疲労回避 『製品・サービスを得たい』
快楽追求――(種存本能)――不快回避 『製品・サービスを得たい』
尊敬追求――(存在本能)――軽蔑回避 『利得感を得たい』
満足追求――(達成欲求)――不満回避 『充足感を得たい』
安定追求――(秩序欲求)――不安回避 『安心感を得たい』
人が、商品の購入をするのは、上の欲求を満たすためです。
需要は、欲求です。
需要者の欲求を、以下にまとめます。
はじめに商品・サービスを得たいという欲求が生まれます。
この欲求が起こらない限り、商売は成り立ちません。
次に、商品・サービスの、高品質を求める、または低価格を求める、
早く手に入れたいという欲求が起こります。
この欲求が満たされて得られるのが、利得感です。
利得感とは、他の需要者より有利な条件で、製品を得たと感じ、
そのことは、自己の能力、状況、機会が、他者より優れているという優越を感じることです。
次に、自分の望み通りの製品・サービスが手に入ったという満足を感じ、
また、それをついに手に入れたという達成を感じたなら、それが充足感となります。
次に、手に入れた製品・サービスの内容が、保証されていると感じ、
いつでも利得感、充足感を得られる、流通の秩序が保たれていると感じるならば、
それが安心感となります。
これらの利得感、充足感、安心感が得られるとわかったときに、
需要者は、その供給者を選ぶわけです。
上の欲求を満たすように、(1)宣伝し、(2)信用を生み、(3)利点を生み、
(4)環境を整えるならば、より商売が成功しやすくなります。
商売論をまとめます。
商売とは、投資です。
商品が必ず売れるという保証はありません。
また売れたとしても、必要経費以上の収入がなければ、商売の持続は不可能です。
高く売れるということを見越して、製品を仕入れる、または製造するわけです。
すなわち、(1)商売が成り立つかどうかを予見出来ること、
(2)それに見合う投資が出来ること、
(3)今までに述べてきた五つの要素が、効果的であること、
以上三点が、商売を成功させるポイントです。
(1)は、需要と供給の状態が、想定できる能力があるかということです。
商売が成り立つほどの需要がなければなりませんが、
その需要量が、その地域での供給量を上まっている必要があります。
または将来的に、その傾向になることが予想される必要があります。
その状況を読めるかどうかです。
そのためには、需要は欲求であると述べたように、
人や社会の欲求に対して敏感であり、その欲求の性質を知らなければなりません。
『面倒なことを避けたい』
『快楽を得たい』
『自分の価値を認めたい』
『達成感を得たい』
『安定感を得たい』
(2)は、経済的能力です。
費用をかければかけるほど、確実にリスクは大きくなりますが、
儲けは、確率的に大きくなるだけです。
しかし基本的には、ローリスクのものには、大きく投資、
ハイリスクのものには、余剰資金の投資ということになります。
損失に対しての危機感や動揺が、商売に対して、過剰な反応を示さないような
投資の覚悟が必要です。
(3)は、今までに述べてきた、充足感、利得感、安定感を、
需要者に与えることであり、そのどれに重点を置くかが肝心です。