米原市伊吹山文化資料館企画展「伊吹山測候所と伊吹山の気象~設置の意義とその役割~」の見学会を開催しました。(2025/11/30)
2025年11月30日(日)、米原市伊吹山文化資料館(滋賀県米原市春照(すいじょう))第179回企画展「伊吹山測候所と伊吹山の気象~設置の意義とその役割~」(会期:10月18日(土)~11月30日(日))の見学会を開催しました。12名の参加でした。
伊吹山測候所は、伊吹山頂の標高1376メートル の地点に滋賀県立彦根測候所附属伊吹山観測所として設置され1919(大正8)年観測開始、1929(昭和4)年に中央気象台附属伊吹山測候所となり、2001年に廃止されるまで80年以上にわたり観測を続けた山岳気象観測所です。企画展を準備した同館学芸員高橋順之氏に展示解説をいただき、企画展を観覧しました。高橋氏は伊吹山で異常繁殖しているニホンジカの食害による植生の衰退、大雨による斜面崩壊など、近年急速に進む山の変化に接し、対策としての保全活動にも取り組むなかで、山の自然と向き合った測候所の役割を取り上げる今回の企画展を発案されたとのことです。およそ1年をかけて準備され、所蔵の資料をはじめ、彦根地方気象台や滋賀県立公文書館などで未確認の貴重な資料も多く発掘し、地元出身の実業家下郷久成(1872~1946)らによる多額の寄付をはじめ、測候所設置・運営に地元の大きな力があり、他方、測候所の提供する雇用機会や物資・役務の調達、登山道の整備にともなう登山の観光化などの恩恵を地元民も受け、相互利益の関係が成立していたことを示しました。
常設展の主要展示も解説いただき、伊吹山の特徴的な地質学・地理的性質が地元民に多くの恵みをもたらし、また地元民の活動が伊吹山に大きな影響を与えてきたことを示していました。測候所の存在をこうした文脈で考えることも意義深いように思われます。
参加者のアンケートでは多くの方に満足していただけたようで、今後もこのような見学会の開催を望む声も多く寄せられました。これまで見学会の開催は東京及び周辺に限られてきましたが、地方でも気象学史的に興味深い施設や催しがあり、気象学史に関する研究推進に資するため、今後も博物・資料展示や施設等の見学会などを随時各所で実施していきます。
最後となりますが、今回の開催にあたりお忙しい中ご対応くださった高橋氏をはじめ、米原市伊吹山文化資料館のみなさまに厚く御礼を申し上げます。(2025/12/12)
米原市伊吹山文化資料館正面。1997年廃校になった滋賀県伊吹町(現・米原市)立春照小学校春照分校の校舎を活用して1998年伊吹町立伊吹山文化資料館として開館。背後に伊吹山を望む。
企画展「伊吹山測候所と伊吹山の気象~設置の意義とその役割~」を、準備にあたった高橋順之学芸員の解説により観覧。パネルには伊吹山測候所所蔵アルバム(現在は彦根地方気象台で所蔵)掲載写真の複製などを展示、手前の卓には高橋学芸員が彦根地方気象台や滋賀県立公文書館で確認した伊吹山測候所来歴史料の複製、背後の展示ケースには京都地方気象台から借用した旧式の気象測器が並べられていた(2025年11月30日・米原市伊吹山文化資料館企画展示室)。
企画展「伊吹山測候所と伊吹山の気象~設置の意義とその役割~」の展示解説書と同館学芸員高橋順之氏による論考 (高橋 2025)を掲載します。ご提供いただいた高橋氏に感謝申し上げます。
高橋順之, 2025: 伊吹山測候所の設置と遭難記. 淡海文化財論叢, 17, 293–300.
参加者アンケート集計結果
アンケート集計
ご協力くださいましてありがとうございました。