第16回気象学史研究会を日本気象学会2024年度秋季大会(会場:つくば国際会議場・茨城県つくば市)会期中の11月14日(木)に開催しました。大会会場での現地開催に加え、オンライン中継も行いました。会場約10名・オンライン中継約55名あわせて約65名の参加がありました。
今回は「数値予報の初期の時代に人はどのように計算をしていたか」をテーマとして、古川武彦氏(気象コンパス)と前山和喜氏(総合研究大学院大学)にご講演いただきました。古川氏は気象庁で長い業務経験を積まれ気象事業の歴史に関する多くの著作も上梓されています。前山氏は科学と社会への幅広い関心を背景に人間の計算実践史の研究を進められています。コンビーナと司会は研究連絡会世話人の増田耕一(立正大学)が務めました。
古川氏は「1960-70年代の気象庁ではどのように計算が行われていたか」と題して講演されました。フォルタン型気圧計や符号式ラジオゾンデなど気象庁で過去に使われていた多くの測器の実物を会場に持ち込まれ、これらによる観測、データ処理・伝送、統計処理、初期の電子計算機利用などについて、多くの人手を介した機械的・アナログ的処理から、自動化・デジタル化への流れを自身の経験に基づき紹介されました。
前山氏は「計算と気象の蜜月関係~計算史は気象学の歴史をどのように理解できるか~」と題して講演されました。気象学の内側に内在する多様な実践を計算の実践に結びつけて理解していくこと、気象学の歴史を理解することで社会において計算というものがいかに発展してきたかを理解することが、単なる計算機史ではない、人間の計算史を紡ぐ上でたいへん有用であることが紹介されました。
質疑応答・総合討論では、気象庁における実践を調べるための資料の記録と保存、数値予報初期段階での研究者・技術者などの役割、気象データを世界で収集し電子的に交換する世界気象機関(WMO)の世界気象監視(WWW)の重要性、人工知能(AI)による数値予報の現状と見通しなど幅広い課題に対して活発に議論されました。
最後にコンビーナ・司会の増田が、今後もこのような学問の実践者と歴史家の情報交換の機会があることを期待したいと述べて研究会を締めくくりました。
最後にご講演いただいた古川氏・前山氏に厚く御礼申し上げます。日本気象学会講演企画委員会および日本気象学会2024年度秋季大会実行委員会から多くの支援を受けました。深く感謝申し上げます。本研究会の開催にあたっては日本気象学会の研究連絡会等活動補助金の支給を受けました。(2024/12/20)
第16回気象学史研究会「数値予報の初期の時代に人はどのように計算をしていたか」(つくば国際会議場(茨城県つくば市・日本気象学会2024年度秋季大会会場)小会議室402)にてそれぞれ熱のこもった講演を行った古川武彦氏(a)・前山和喜氏(b)。 (c)講演後の質疑応答・総合討論も活発に行われた。
古川氏発表資料
ご提供くださった古川氏に感謝申し上げます。
講演の著作権は講演者にあり,その権利を尊重する必要があります。著作権法で認められた範囲内でご利用ください。
公開をご了承くださった 古川氏・前山氏に感謝申し上げます。
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古川武彦(気象コンパス)「1960-70年代の気象庁ではどのように計算が行われていたか 」
※古川氏の講演で、持ち込まれた実物の測器を使って説明された部分の音声・画像が収録できておりませんでした。この部分はカットしております。ご了承ください。
前山和喜(総合研究大学院大学)「計算と気象の蜜月関係~計算史は気象学の歴史をどのように理解できるか~」
ご協力ありがとうございました。
アンケート集計結果