第12回気象学史研究会「歴史史料としての気象資料」を開催しました(2022/10/24)

第12回気象学史研究会「歴史史料としての気象資料」を日本気象学会2022年度秋季大会(会場:北海道大学)会期中の10月24日(月)に開催しました。2019年10月の第6回研究会以来、3年ぶりに会場での開催がかないました。当研究会では初の試みとしてオンラインでの中継を行いました。会場約20名・オンライン約50名あわせて約70名の方がご参加くださいました。

今回は「歴史史料としての気象資料」をテーマとし、自然現象の記述にとどまらない、歴史史料としての気象資料の意味・利用可能性について認識を深めるため、北海道で防災関係の公務に携わる傍ら、地方史研究に取り組まれているお二方に、気象資料を利用した歴史研究についてご講演いただき、議論を行いました。

國田博之氏(北海道渡島総合振興局)は「北海道の気象災害史と防災への活用」と題して講演されました。1883(明治16)年の干害や1922(大正11)年の大雨災害、1915(大正4)年の羆嵐(くまあらし)など、気象資料のほか新聞資料なども利用し、当時の環境を追体験できる事例として気象キャスターとして活用されたことが紹介されました。道庁職員として過去の気象データを活用した北海道庁の自然災害データベースの再構築、個人的な取り組みとして主な気象災害について当時の気象観測成果や報道資料等を詳細に調査され「北海道の気象災害史」として公表、またブログでの発信など、地域防災に活用するための多彩な取り組みが紹介されました。

山本竜也氏(札幌管区気象台)は「気象観測原簿にみる空襲記録」と題して講演され、気象官署の気象観測原簿を用いた2つの調査研究成果を紹介されました。全国の空襲記録のあった日の観測原簿を網羅的に調べ、49気象官署の観測原簿に、火災に伴う気温上昇や湿度の下降等観測値の変化や、艦砲射撃や原爆投下による爆音の記録など、なんらかの形で空襲や戦争に関わる記録が残されていると報告されました。また1945年7月14日・15日の北海道・東北空襲について各地の観測原簿から独自に天気図を作成し、米軍艦載機の戦闘行動調書と比較することによって、攻撃側の動きが天気に影響を受けていたことが明確に示されました。

講演後の質疑応答も活発に行われました。過去の災害や空襲などの歴史研究への気象資料の活用について多くの具体的事例を紹介いただいたことで、気象資料の歴史資料としての役割について理解を深めることができたと思います。

当日はオンライン中継の準備に手間取り、機器操作にも不慣れで開会時間が遅れたほか、たびたび講演を途中で中断していただくことになり、ハイブリッド開催の進行にも不慣れで運営に拙い点が多々ありました。それでも多くのみなさまのご協力でなんとか無事に開催でき、会場への参加が難しい方にもご参加いただけたことはよかったと思います。アンケートでいただいたご意見も参考に今後改善していきたいと思います。やはり議論を行うには顔を合わせたコミュニケーションに勝るものはないことを痛感しました。

最後にご講演いただいた國田氏・山本氏、前回に続きボランティアとして運営にご協力くださった遠藤正智氏・岸 誠之助氏(順不同)の各位に厚く御礼申し上げます。日本気象学会講演企画委員会および日本気象学会2022年度大会実行委員会から多くの支援を受けました。特に大会実行委員会事務局長佐藤友徳氏には多大な技術的支援をいただきました。感謝申し上げます。本研究会の開催にあたっては気象学会の研究連絡会等活動補助金の支給を受けました。(2022/11/13)

第12回気象学史研究会「歴史史料としての気象資料」(2022年10月24日・北海道大学大学院地球環境科学研究院講義室D201)にて講演された國田博之氏(a)と山本竜也氏(b)。(c)3年ぶりの会場開催で質疑応答も活発に行われた。

研究会の講演動画を公開しました。  (2022/11/13

公開をご了承くださった國田・山本氏に感謝申し上げます。

講演の著作権は講演者にあり,その権利を尊重する必要があります。著作権法で認められた範囲内でご利用ください。ダウンロード、複製、転載は禁じます。

國田博之(北海道渡島総合振興局)「北海道の気象災害史と防災への活用

山本竜也(札幌管区気象台)気象観測原簿にみる空襲記録

・日本気象学会機関紙「天気」に関連記事を掲載

研究会報告記事が「天気」2023年3月号に掲載されました。無料でどなたでもお読みいただけます。(2023/4/2)
第12回気象学史研究会「歴史史料としての気象資料」を開催
https://www.metsoc.jp/tenki/pdf/2023/2023_03_0017.pdf