第8回気象学史研究会「明治創設期の測候所と気象学:期待と役割―旧測候所保存資料から探る」オンライン開催(2020/10/29)のお知らせ

第8回気象学史研究会「明治創設期の測候所と気象学:期待と役割―旧測候所保存資料から探る」オンライン開催(2020/10/29)のお知らせ

主催:日本気象学会気象学史研究連絡会

第8回気象学史研究会を日本気象学会2020年度秋季大会(10月25日(日)~10月31日(土)オンライン開催)に合わせ、オンライン(リアルタイム形式)で開催いたします。

趣旨

日本の近代気象事業は明治初年に創始され、 まもなく150年になろうとしている。その草創期において、気象学が如何なるものと考えられていたのか、気象事業や各地測候所に何が期待されたのか、それらに対しどのような活動が行われたのかを理解することは、今日に至る気象事業発展の歴史と方向性、さらにはその将来を展望するためにも重要である。このため各種資料に記録された当時の気象事業の諸活動やそれらをめぐる人々の発言を知ることが必要となる。

本研究会では、1879(明治12)年、初めて県営として創設された広島県広島測候所(現・広島地方気象台)の旧所蔵資料を元にして近代気象事業創設期の気象学・地方測候所に課せられた役割・かけられた期待を探求した研究が紹介される。また、同資料を現在所蔵する広島市江波山気象館の活動とその所蔵資料概要が紹介される。草創期の気象事業展開の模索の中で、その方向性が形成されていく過程を議論する。

1. 概要

第8回気象学史研究会「明治創設期の測候所と気象学:期待と役割―旧測候所保存資料から探る」

日時: 2020年10月29日(木)18:00~20:00 オンライン開催

プログラム

「広島市江波山気象館所蔵の気象学史的資料」

遠藤正智(広島市江波山気象館)

「草創期における気象観測所の役割と期待:広島測候所を事例に」

宮川卓也(広島修道大学)

司会:財城真寿美(成蹊大学)

参加方法:参加を希望されさる方は事前申し込みをお願いいたします。

参加申込フォームへのリンク

日本気象学会員であるか、秋季大会に参加するかどうかに関わらず、関心のある方はどなたでもご参加いただけます。

参加費は無料です。

おことわり

オンライン研究会は会場に大勢の方々に集まっていただくことが難しい現状や、日頃会場への参加が容易でない方に参加の機会を広げるなど、多くの可能性がありますが、さまざまな理由により接続が切断されたり画像・音声が途切れたりして、十分に満足いただけるような参加ができないこともあります。あらかじめご承知おきください。

今回のオンライン研究会はウェブ会議ツールとしてZoomを使用いたします。

2. 講演要旨

・広島市江波山気象館所蔵の気象学史的資料 遠藤正智(広島市江波山気象館)

広島市江波山気象館は、旧広島地方気象台建物を活用し1992(平成4)年6月1日(気象記念日)に開館した、気象や自然科学を専門に扱う登録博物館である。

気象館・本館は、1934(昭和9)年に広島県立広島測候所として建設され、1939(昭和14)年に国営移管・1988(昭和63)年の現在地移転まで広島地方気象台として使用されていた。

このような背景から、江波山気象館は広島地方気象台寄贈資料を中心に、気象測器約70点、図書系資料約2000点など様々な資料を収蔵し、展示や調査研究に供している。この中には1879(明治12)年の広島県立広島測候所創設の経緯を伝える資料や、「気象関係の広島原子爆弾被害調査報告」を作成するために宇田道隆らが調査した資料など、気象学史的に重要なものが多数含まれている。

今回、これらの収蔵資料のうち代表的なものについて概要を紹介する。

・草創期における気象観測所の役割と期待:広島測候所を事例に 宮川卓也(広島修道大学)

1879(明治12)年1月1日、広島に測候所が開設された。県営の測候所としては最初のものである。1875年に東京気象台が設置されて以来、内務省地理局は全国に気象観測所の増設を企画していたが、財政不足を背景に実現は難しく、各県知事に測候所設置の協力を依頼したところ、広島県知事が応じて設置されることとなった。しかし測候所の設立がそのまま気象事業拡大に直結するわけではない。そもそも気象事業の草創期においては、気象学・事業とは何なのかについての明確な合意も形成されていなかった。ましてや一般民衆にとっては、天気予報も実施されていない状況において観測所がどのような施設なのか不明であったといえる。本発表は、江波山気象館に所蔵されている史料や気象協議会の議事録などを土台に、1870年代から1880年代において気象学・気象事業の役割と期待がどのように形成されていったのか考察する。測候所の誘致に積極的だった県知事・藤井勉は気象学にどのような期待をかけていたのか。広島測候所の存在はどのように県民に知られるようになったのか。東京気象台は気象事業の普及をどのように進めたのか。こうした問いを手がかりに、本発表は、いまだ不明な点が多い気象事業の揺籃期の一端を広島測候所から繙いていきたい。

(2020/09/22)