第11回気象学史研究会「古典籍・古文書の自然現象記録を用いた気候復元と気候変動」を開催しました(2022/5/19)

第11回気象学史研究会「古典籍・古文書の自然現象記録を用いた気候復元と気候変動」を日本気象学会2022年度春季大会(オンライン開催)会期中の5月19日(木)にオンライン開催しました。本研究会ではこれまで最多の約100名の方がご参加くださいました。

今回は、歴史文書・古典籍に記録された自然現象を用いた気候復元研究として、京都の植物季節記録および諏訪湖の結氷・御神渡記録を利用した気候復元について2名の研究者から、これまでの成果と現在進行中のご研究にもとづく最新の知見を紹介していただきました。コンビーナと司会は研究連絡会世話人の財城真寿美(成蹊大学)が務めました。

青野靖之氏(大阪公立大学)は「古典籍の植物季節記録による京都の気候復元」と題して講演されました。日本で書かれた古典籍には,開花や紅葉などの植物季節現象に関連する記述が多く残され、発生前1~3か月の気温などの影響を受けることから、月別の気温を復元できる数少ないアプローチであることが強調されました。講演では京都を例に,これまでの春季・秋季の月別気温の復元を多くの解析例で示し、夏季の気温復元の試みや、太陽活動の長期的変動との関係についても議論されました。

三上岳彦(東京都立大学・研究連絡会世話人)は「579年間の諏訪湖結氷記録からみた長期気候変動」と題し、長谷川直子氏(お茶の水女子大学)・平野淳平(帝京大学・研究連絡会世話人)との共著の研究として講演しました。長野県諏訪湖の結氷・御神渡記録は,1444年から現在まで579年間にわたり,ほぼ連続的に残されており,長期的な気候変動を議論するための有効なプロキシ(proxy、気象観測データの代替として利用できる資料)として国際的にも関心が持たれています。既往研究で信頼性が低いとされていた期間の資料について、原典に当たることで、より信頼性の高いデータベースとして構築していることが報告されました。またこれを利用した冬季気温の復元の試みについても紹介されました。

今回は2020年8月の第7回研究会以降5回目のオンライン開催となりました。オンライン開催への適応は進んでいるようですが、「研究会」らしい議論を求める声、録画公開を求める声など、アンケートでは多様な意見をいただいております。感染状況にある程度落ち着きが見られるところ、今後の運営の参考としていきたいと考えます。

最後にご講演いただいた青野氏、前回に続きボランティアとして運営にご協力くださった遠藤正智氏・岸 誠之助氏(順不同)の各位に厚く御礼申し上げます。本研究会の開催にあたっては気象学会の研究連絡会等活動補助金の支給を受けました。(2022/6/27)

第11回気象学史研究会「古典籍・古文書の自然現象記録を用いた気候復元と気候変動」(2022年5月19日)にて講演された青野靖之氏(左)と三上岳彦。ウェブ会議ツールZoomのオンライン画面。

研究会の講演動画を公開しました。  (2022/07/14

公開をご了承くださった青野氏に感謝申し上げます。

講演の著作権は講演者にあり,その権利を尊重する必要があります。
動画をダウンロードすること、および録画・録音・撮影・キャプチャなどしたものをご自分以外の方(家族・知人や会社等組織内の方を含みます)に閲覧させる、提供する、一般に公開しようなどすることは一切禁止といたします。

青野靖之氏(大阪公立大学)「古典籍の植物季節記録による京都の気候復元」

三上岳彦氏の講演動画の公開は予定いたしておりません。

・日本気象学会機関紙「天気」に関連記事を掲載

研究会報告記事が「天気」2023年1月号に掲載されました。無料でどなたでもお読みいただけます。(2024/1/10)

第11回気象学史研究会「古典籍・古文書の自然現象記録を用いた気候復元と気候変動」を開催

https://www.metsoc.jp/tenki/pdf/2023/2023_01_0017.pdf