第12回気象学史研究会「歴史史料としての気象資料」開催(2022/10/24)のお知らせ

第12回気象学史研究会「歴史史料としての気象資料」開催(2022/10/24)のお知らせ


第1
2回気象学史研究会を日本気象学会2022年度季大会に合わせ,下記の要領でオンライン開催いたします.

1. 概要

第12回気象学史研究会「歴史史料としての気象資料」
2022年10月24日(月)18:00~20:00 北海道大学学術交流会館(予定)大学院地球環境科学研究院講義室D201・オンライン中継(日本気象学会2022年度季大会第日夜)※状況によってはオンライン開催に変更する。
会場へのアクセス
プログラム
北海道の気象災害史と防災への活用 國田博之(北海道渡島総合振興局)
気象観測原簿にみる空襲記録 山本竜也(札幌管区気象台)
主催:日本気象学会気象学史研究連絡会
後援:日本科学史学会北海道支部

趣旨

気象資料は自然現象が記述されるのみならず、それを作成した人間活動をも反映し、その意味で歴史史料、特に意図的・不意図的改変がされにくい高品質な一次史料として利用しうる。北海道で防災関係の公務に携わる傍ら、地方史研究に取り組まれているお二方に、気象資料を利用した歴史研究についてご講演いただき、気象資料の歴史史料としての意味・利用可能性を議論して認識を深めたい。

本会合は気象学史研究に関心を持つ,より多くの方の間の情報・意見交換をうながすため,学会員以外の方にも広く参加を呼びかけて開催する.

参加方法:参加を希望されさる方は事前申し込みをお願いいたします。

参加申込フォームへのリンクhttps://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdgTwgDDS8jUmkZOOmNj7qZbx0137UOdrJxIfOoHmRce671rg/viewform

日本気象学会員であるか、季大会に参加するかどうかに関わらず、関心のある方はどなたでもご参加いただけます。
参加費は無料です。

会場参加の方にお願い

新型コロナウイルス感染症拡大防止へのご協力をお願いいたします。
・感染者発生時のご連絡のため、必ず事前のお申込み、連絡先の登録をお願いいたします。
・当日は、感染予防のため、マスクの着用をお願いいたします。
・会場は換気のため、適宜、窓やドアなどを開けます。室温の高低に対応できるよう服装にはご注意ください。
・会場では密集を避けるため、他の参加者との身体的距離を保ってください。
・以下のいずれかに該当する方は参加をお控えください。
新型コロナウイルス感染症などの感染症に罹患し治癒していない方
新型コロナウイルスの感染が疑われる方
次のいずれかの症状のある方①発熱、②軽度であっても咳などの風邪の症状が続く、③強いだるさ(倦怠感)、④息苦しさ(呼吸困難)

オンライン中継についておことわり

オンライン中継は会場に大勢の方々に集まっていただくことが難しい現状や、日頃会場への参加が容易でない方に参加の機会を広げるなど、多くの可能性がありますが、さまざまな理由により、接続が切断されたり画像・音声が途切れたりして、講演を十分にお楽しみいただけなかったり、質疑応答への参加に制約をお願いするなど、十分に満足いただけるような参加ができないこともあります。最悪の場合まったく中継ができなくなるおそれもあります。あらかじめご承知おきください。

Zoom練習会

今回のオンライン中継はウェブ会議ツールZoomを使用いたします。Zoomの使用が初めての方、不慣れな方で、練習の機会があれば参加されたいという方は、参加申込フォームでその旨お知らせください。希望者が多い場合は練習の機会を準備いたします。

2. 講演要旨

北海道の気象災害史と防災への活用 國田 博之(北海道渡島総合振興局)

北海道は、開拓使が設けられて全道各地で本格的な開拓が始まった時期とほぼ同時期に各地で気象観測が始まった。このため、各々の地域社会の成立から今に到るまでの個々の出来事について、均質的な気象観測データを活用して、事象発生当時の環境を追体験したり、人々の心理や行動を比較・検証することが可能である。
中でも大雨や暴風雪等による気象災害については、100年以上にわたる既往観測成果の中に災害をもたらした気象現象が度々記録されており、これらと同等の現象が今後数日のうちに予測される場合、道民に災害の危険性を想起させ、災害を自分事として捉えていただくことが可能であり、防災・減災の効果が期待される。
一方で、都道府県や市町村の作成する過去の地域災害の履歴は、単に人的被害・物質被害のとりまとめ程度に止まることが多いことから、発表者は北海道庁の自然災害データベースを過去の気象データを活用してWebで再構築するとともに、個人的にも主な気象災害について当時の気象観測成果や報道資料等を詳細に調査、「北海道の気象災害史」として公表し、地域防災に活用する取り組みを行っている。今回はこれまでの調査事例の中から1883年(明治16年)の干害や1922年(大正11年)の大雨災害時の対応等を紹介する。

気象観測原簿にみる空襲記録 山本竜也(札幌管区気象台)

気象官署の気象観測原簿は永年保存とされ、長期的な気候変動や過去の台風・大雨の研究などに用いられてきた。しかし、そのような気象学的な利用のほかに、歴史的事件の調査にも有用である。発表者は、原簿を用いた空襲の調査研究を行ってきており、そのなかから成果を二つ紹介する。
日本列島が米軍による激しい空襲を受けるようになった戦争末期、中央気象台は約200か所の気象官署を展開していた。気象官署や近隣が被災すると、火災によって、気温の上昇や湿度の下降、風の急変化、煙による視程悪化が起きることがあった。艦砲射撃や原爆投下による爆音が100km以上離れた気象官署に届くこともあった。現存する原簿を網羅的に閲覧し、49の気象官署の原簿に、なんらかの形で空襲や戦争に関わる記録が残されていることを発見した。
また、1945年7月14日、15日の北海道・東北空襲では、当初の目標だった飛行場が攻撃を免れ、目標になかった農村地帯が攻撃を受けるなど、日本側からみると納得しがたい被害が多数生じた。この原因は当日の天気によると指摘されてきたものの、従来の研究はせいぜい数地点の気象資料をもとに論じるにすぎなかった。そこで、各地の気象官署の原簿から天気図を作成し、米軍艦載機の戦闘行動調書とも比較することによって、たしかに攻撃側の動きは天気に影響を受けていたことを明らかにした。

(2022/8/21・2022/9/13会場本決定)