第15回気象学史研究会「日本における都市気候研究の展開-都市気候研究における長期気象観測の意義-」(2024/5/18)開催のお知らせ

第15回気象学史研究会「日本における都市気候研究の展開-都市気候研究における長期気象観測の意義-」(2024/5/18)開催のお知らせ

第15回気象学史研究会を日本気象学会2024年度季大会に合わせ,下記の要領で開催いたします.

第15回気象学史研究会「日本における都市気候研究の展開-都市気候研究における長期気象観測の意義-」
日時:2024年5月18日(土)14:00~16:00
会場:国立情報学研究所1903会議室(東京都千代田区一ツ橋2-1-2) ※春季大会会場とは異なります。
Zoomによりオンライン中継
協力:ROIS-DS人文学オープンデータ共同利用センター(CODH)、国立情報学研究所

プログラム:
1. 日本の都市気候研究を振り返る 藤部文昭(元気象庁気象研究所)
2. 吉祥寺・成蹊気象観測所98年間の歴史 三上岳彦(東京都立大学・成蹊気象観測所)

コンビーナ・司会:平野淳平(帝京大学)

主催:日本気象学会気象学史研究連絡会

趣旨

日本における都市気候研究の歴史は古く、20世紀前半から都市特有の気候現象の解明を目的とした研究が行われてきた。その手法は、都市周辺の気温分布の観測、長期気象観測データによる都市における気候変動の実態解明、数値モデルによるヒートアイランド形成要因の解明など多岐にわたる。特に、長期にわたる気象観測データは都市気候研究において重要な役割を果たしてきた。本研究会では、長年にわたって日本における都市気候研究をリードしてこられた、元気象庁気象研究所の藤部文昭氏と成蹊気象観測所所長の三上岳彦氏に、それぞれ日本における都市気候研究の歴史的展開、都市気候研究における長期気象観測データの意義について紹介していただく。両氏の講演を通じて都市気候研究の将来も見通して議論を深めたい。

本会合は気象学史研究に関心を持つ,より多くの方の間の情報・意見交換をうながすため,学会員以外の方にも広く参加を呼びかけて開催する.

参加方法:参加を希望されさる方は会場・オンラインに関わらず、事前申し込みをお願いいたします。

参加申込フォームへのリンク
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdUs6daH4-fwgGQ6HFilG2HTdZMQPuxZJEXHPaVNxvKLPPE5w/viewform

日本気象学会員であるか、秋季大会に参加するかどうかに関わらず、関心のある方はどなたでもご参加いただけます。
参加費は無料です。

オンライン中継についておことわり

オンライン中継は会場に大勢の方々に集まっていただくことが難しい 状況や、日頃会場への参加が容易でない方に参加の機会を広げるなど、多くの可能性がありますが、さまざまな理由により、接続が切断されたり画像・音声が途切れたりして、講演を十分にお楽しみいただけなかったり、質疑応答への参加に制約をお願いするなど、十分に満足いただけるような参加ができないこともあります。最悪の場合まったく中継ができなくなるおそれもあります。あらかじめご了承ください。

Zoom練習会

今回のオンライン中継はウェブ会議ツールZoomを使用いたします。Zoomの使用が初めての方、不慣れな方で、練習の機会があれば参加されたいという方は、参加申込フォームでその旨お知らせください。希望者が多い場合は練習の機会を準備いたします。

2. 講演要旨

・日本の都市気候研究を振り返る  藤部文昭(元気象庁気象研究所)
 日本の都市気候研究の歴史を筆者の認識(主観)に基づいて振り返る。日本で都市気候への関心が芽生えたのは1930年代であった。以後戦争をはさんで1960年代まで,主として地理学の1分野である“気候学”の研究者による研究が進められた。1970年ごろには大都市圏の大気汚染(公害)が社会問題になるとともに都市気候への関心が高まり,気象研究者による都市の熱収支やヒートアイランドの力学の研究も行われる等,研究の幅が広がった。その後,公害問題が下火になり,都市気候研究ブームも一時弱まった観があるが,1990年代以降,いくつかの新たな視点から都市気候やヒートアイランドの研究が進められた。具体的なテーマとしては,(1) 生活の質を損なう夏の暑さと,その一因としてのヒートアイランド,(2) 地球温暖化による悪影響を増幅する因子として,また,温暖化のモニタリングにバイアスをもたらす要因としてのヒートアイランド,(3) ミクロな環境要因による微細な気候分布や,気象観測値の空間代表性の問題,(4) 都市が降水に与える影響などが挙げられる。この間,都市を表現する数値モデルが発展し,数値的研究によりヒートアイランドの形成要因の理解が進んだ。しかし,2010年代以降,ヒートアイランドに対する社会の関心は低下しつつあるように見え,また,現象としての都市気候の解明よりも,その緩和対策への要請が強まっている。このような状況に気象学がどう対応すべきかが問われている。

・吉祥寺・成蹊気象観測所98年間の歴史  三上岳彦(東京都立大学・成蹊気象観測所)
 東京の西郊,吉祥寺の成蹊学園構内に位置する成蹊気象観測所は,1926年(大正15年)の観測開始以来,まもなく100年を迎える国内屈指の民間(学校)気象観測所である。観測露場は構内で2回移動したが,毎朝定時(当初は10時,1953年より9時)に観測を行い,戦時空襲下においても1日の欠測も無く,現在まで定時観測を継続している。露場の百葉箱には,最高最低温度計と自記温度湿度計を設置し,1994年からは気象庁AMeDASと同等の強制通風温度計を設置して気温を観測している。露場の雨量計,感雨計,黒球温度計,地中温度計や,校舎の屋上2箇所の風向風速計,1箇所の日照計などのデジタル観測データは中高理科棟の気象観測室で記録し,ウェブページで10分間隔の観測値を公開している。気象観測室内には,デジタル式気圧計のほか,フォルタン式気圧計とアネロイド式自記気圧計を設置し,毎日の定時観測ではフォルタン式気圧計の読み取りを行っている。また,1963年から60年以上続く視程観測は成蹊オリジナルで,富士山や東京タワーなどの目視日数は増加傾向にある。ほかに,桜の開花日や満開日,酸性雨,洗面器に張る氷の厚さなども測定している。

(2024/4/6)