第14回気象学史研究会「史資料の発掘・保全と気象学史研究―東北そして英国から」を開催しました(2023/10/24)

第14回気象学史研究会「史資料の発掘・保全と気象学史研究―東北そして英国から」を日本気象学会2023年度秋季大会(会場:仙台国際センター)会期中の10月24日(火)に開催しました。大会会場での現地開催に加え、オンライン中継も行いました。会場約10名・オンライン約35名あわせて約45名の参加がありました。

今回は「史資料の発掘・保全と気象学史研究―東北そして英国から」をテーマとして、仙台在住の佐藤大介氏(東北大学災害科学国際研究所)と泉田重雄氏(建築史・技術史家、元・筑波大学講師)にご講演いただきました。司会は市野美夏氏(人文学オープンデータ共同利用センター)におつとめいただきました。

佐藤氏は「地域社会に残された古文書・古記録の保全」と題して、講演されました。推計20億点ともされる多くの古文書が日本の地域社会に遺されていること、こうした国・地域は世界でも日本の他にないこと、他方これらは危機に瀕しておりさまざまな要因が複合し「古文書大量消滅の時代」にあることが強調されました。専門家が市民に呼びかける形で協働して古文書の保全や解読に取り組む活動が各地で試みられており、佐藤氏が宮城で取り組んでいる実例が紹介されました。古文書の記録をもとにした気候復元などの研究も多く取り組まれているが、研究成果を市民にも還元することで、市民の研究への関心をさらに高め、研究者への信頼醸成に寄与すると結ばれました。

泉田氏は「マクヴェイン文書を通してみた1873年世界気象会議前後の日本」と題して講演されました。明治政府の測量師長を務めたC.A.マクヴェイン(Colin Alexander McVean, 1838-1913)は、これまで「マクビーン」の名で気象庁の歴史の最初に掲げられながら、どのような人物かほとんど知られていませんでした。泉田氏は建築史の研究を進める中でマクヴェインのスコットランド在住遺族が保存していた日記・書簡等大量の資料と出会い、丁寧に読み解くことで明らかになった多くの史実が紹介され、マクヴェインが明治初年の日本の近代科学技術史においてきわめて重要な人物であることを示しました。マクヴェインと交友のあったイギリス最高の知性ともいえる多くの人物が東京に集まることで、日本が世界標準の公式気象観測を開始することができたということで1875年6月の意味があることを述べて講演を結ばれました。

討論の時間が十分に確保できませんでしたが、その多くが私有物であり所蔵者に保存・承継が任されている多くの古文書をどのように保全し、広く歴史研究に活用していくか議論への足掛かりにできればと思います。

最後にご講演いただいた佐藤氏・泉田氏、司会をお務めくださった市野氏、前回に続きボランティアとして運営にご協力くださった遠藤正智氏・岸 誠之助氏(順不同)の各位に厚く御礼申し上げます。日本気象学会講演企画委員会および日本気象学会2023年度秋季大会実行委員会から多くの支援を受けました。深く感謝申し上げます。本研究会の開催にあたっては日本気象学会の研究連絡会等活動補助金の支給を受けました。(2023/10/31)

第14回気象学史研究会「史資料の発掘・保全と気象学史研究―東北そして英国から」(2023年10月24日・仙台国際センター小会議室1)にて講演された佐藤大介氏(a)・泉田重雄氏(b)と司会を務められた市野美夏氏(c)。(d)秋季大会会場での現地開催に加えてオンライン中継にも多数の参加があった。

研究会の講演動画を公開しました。  (2024/1/27)

公開をご了承くださった佐藤氏・泉田氏に感謝申し上げます。

講演の著作権は講演者にあり,その権利を尊重する必要があります。著作権法で認められた範囲内でご利用ください。ダウンロード、複製、転載は禁じます。

佐藤大介(東北大学災害科学国際研究所)「地域社会に残された古文書・古記録の保全」

泉田英雄(建築史・技術史家、元・筑波大学講師)「マクヴェイン文書を通してみた1873年世界気象会議前後の日本」