第5回気象学史研究会「20世紀の気候変動と人為的エアロゾルの影響」 (2019/5/17東京)開催のお知らせ

第5回気象学史研究会「20世紀の気候変動と人為的エアロゾルの影響」 (2019/5/17東京)開催のお知らせ

主催:日本気象学会気象学史研究連絡会

今回の気象学史研究会は、気候変動に大きな影響を与えるエアロゾルの問題を、特に人為的エアロゾルの大量放出が起きた20世紀に注目して取り上げます。地球大気の熱収支について観測と理論から長く考察してこられた大村 纂氏には20世紀気候変化の中でのエアロゾルの役割について、熱収支をその重要な入力である日射量の直接測定から考察してこられた早坂氏には、日射量の変動実態と人為起源エアロゾルとの関連についてご講演をいただきます。これらの講演を通じて、20世紀における人間活動とその気候への影響、さらにはそれらに対する人類の認識の変遷をも考察する契機になればと考えます。

1. 概要

第5回気象学史研究会「20世紀の気候変動と人為的エアロゾルの影響」

日時: 2019年5月17日(金)18:00~20:00(日本気象学会2018年度春季大会第3日夜)

場所:国立オリンピック記念青少年総合センター・309会議室(センター棟3階・大会B会場)

(東京都渋谷区代々木神園町3−1 小田急線参宮橋駅下車徒歩約7分・地下鉄千代田線代々木公園駅徒歩約10分)

プログラム

・大村 纂(スイス連邦工科大学チューリッヒ校名誉教授)「人為的気候変化要因として重要な温室効果ガスの兄弟:エアロゾル-熱収支気候学の発展の中から-」

・早坂忠裕(東北大学)「中国・日本の日射量の長期変動とエアロゾル」

コンビーナ・司会: 三上岳彦(首都大学東京名誉教授)

参加費:無料。どなたでもご自由にご参加ください。当日「参加者名簿」へのお名前の記載にご協力お願いいたします。

2. 講演要旨

・人為的気候変化要因として重要な温室効果ガスの兄弟:エアロゾル-熱収支気候学の発展の中から- 大村 纂(スイス連邦工科大学チューリッヒ校名誉教授)

人間活動によって地球環境が久しく変化させられてきたが、何がどれだけの変化を引き起こすか、という問いに対して定量的に正確な回答を出すことは容易ではない。そうした内でも温室効果ガスの影響は比較的よく解明されてきた。もう一方で人間活動が大きく影響するエアロゾルの影響の理解は遅れてしまっている。エアロゾルの複雑さもさることながら、研究者の目があまりにも目先の『温室効果ガスによる温暖化』というテーマに引きずられたのではなかろうか。私自身、そうした一人であり、偶然のきっかけでエアロゾルの重要性を突きつけられて、本日の話のテーマに含まれる問題を取り扱うようになった。その研究過程と、現在私が把握している20世紀気候変化の中でのエアロゾルの役割を観測と理論を合わせてお話しさせて頂きたい。

・中国・日本の日射量の長期変動とエアロゾル 早坂忠裕(東北大学)

地表面に到達する太陽放射エネルギー、すなわち日射量は地球の気候変動や生命活動における極めて基本的かつ重要な物理量である。19世紀から太陽直達放射を定量的に測定する研究が行われてきたが、1957〜1958年のIGY(International Geophysical Year)を契機に現在のような日射量の観測が世界中で実施されるようになった。その後、1980年代末にそれ以前の日射量が減少傾向にあるという研究が発表され、研究が進むにつれて、この現象は世界的に見られること、また、地域によってはその後増加傾向に転じたことが分かってきた。

中国における日射量も例外ではなく、1960年代初めから1990年頃までの間、日射量が減少し、その後増加するという現象が多くの研究で指摘された。一方、日本では1960年代から1970年代には減少傾向であったが、1980年代に回復している。これら日射量の長期変動の要因としては、人為起源エアロゾルが考えられる。これらのエアロゾルはブラックカーボンのように光を強く吸収するものや硫酸・硫酸塩のように光をあまり吸収しないものなど多様である。また、これらのエアロゾルの混合状態も考慮する必要がある。一方、日射量の変動は雲、水蒸気、自然起源エアロゾルなどにも依存し、季節による太陽高度の違いと変動要因とのリンクも考慮する必要がある。エアロゾルは雲凝結核となり雲の形成・維持機構や雲の放射特性にも影響するので、その化学組成と混合状態は雲を変質させ、間接的に日射量の変動と繋がっていると言える。

今回の研究会では、中国の日射量の長期変動の実態を紹介するとともに、日本における変動と比較することにより、その変動要因について改めて考察する。

(2019/3/24)