第18回気象学史研究会「古記録や立地の特徴から見た豪雨災害の歴史的理解」を開催しました(2025/11/6)
第18回気象学史研究会「古記録や立地の特徴から見た豪雨災害の歴史的理解」を日本気象学会2025年度秋季大会(会場:福岡国際会議場・福岡市)会期中の11月6日(木)に開催しました。大会会場での現地開催に加え、オンライン中継も行いました。会場約15名・オンライン中継約40名あわせて約55名の参加がありました。
今回は「古記録や立地の特徴から見た豪雨災害の歴史的理解」をテーマとして、西山浩司氏(九州大学大学院)と山本晴彦氏(山口大学)に講演をいただき、それを受けて議論を行いました。
西山氏は「江戸時代の古記録に基づく顕著な豪雨災害事例の復元」と題して講演されました。福岡県うきは市に所蔵される『壊山物語』(くえやまものがたり)をはじめ、中国地方から九州北部までの図書館・文書館などに存在する多くの古記録を丹念に読み解き、江戸時代の豪雨災害の被害状況の記録を、時間軸に加え空間的にも統合し、江戸時代最大級の豪雨災害と考えられる享保5(1720)年の九州北部水害の実態を明らかにしました。300年後の令和5(2023)年九州北部豪雨災害との類似点を示し、同様の被害が繰り返し発生しており地域性があることが強調され、成果は地域防災活動や防災教育に活用していることが報告されました。
山本氏は「近年の豪雨災害から見た被災建物の立地特性と減災に向けた取り組み」と題して講演されました。全国各地の豪雨災害現場のきめ細かい現地調査を積み重ね、歴史的に居住適地とされていなかった氾濫平野の湿田・湿地帯だった場所が宅地化され、豪雨に伴い外水・内水氾濫による災害が発生した後にも新たに住宅が建設され、豪雨災害が繰り返されていること、防災に必要な経費負担・地域の高齢化など多くの社会的・経済的課題の存在が背景にあることを強く訴えました。
質疑応答・総合討論では、古記録や生活習慣、被災体験など地域に蓄積されたさまざまな知見を発掘・活用して防災・減災に繋げていくための方策などについて活発に議論されました。簡単に結論を出すことは容易ではありませんが、学問的なきめ細かい調査により知識を積み重ねていくことの大切さは共有できたと考えます。
最後にご講演いただいた西山氏・山本氏に厚く御礼申し上げます。日本気象学会講演企画委員会および日本気象学会2025年度秋季大会実行委員会から多くの支援を受けました。深く感謝申し上げます。本研究会の開催にあたっては日本気象学会の研究連絡会等活動補助金の支給を受けました。(2025/11/19)
第18回気象学史研究会「古記録や立地の特徴から見た豪雨災害の歴史的理解」(福岡国際会議場(福岡市・日本気象学会2025年度秋季大会会場)小会議室401-403)で講演した西山浩司氏(a)・山本晴彦氏(b)。 (c)講演後は質疑応答・総合討論が活発に行われた。
公開をご了承くださった 西山氏・ 山本氏に感謝申し上げます。
講演の著作権は講演者にあり,その権利を尊重する必要があります。著作権法で認められた範囲内でご利用ください。ダウンロード、複製、転載は禁じます。
西山浩司(九州大学大学院)「江戸時代の古記録に基づく顕著な豪雨災害事例の復元」
山本晴彦(山口大学)「近年の豪雨災害から見た被災建物の立地特性と減災に向けた取り組み」
※山本氏の発表資料の公開は予定いたしておりません。