第10回気象学史研究会「気候変動解明への歴史からのアプローチ」オンライン開催(2021/12/2)のお知らせ
主催:日本気象学会気象学史研究連絡会
後援:日本科学史学会東海支部
第10回気象学史研究会を日本気象学会2021年度秋季大会に合わせ、オンライン(リアルタイム形式)で開催いたします。
趣旨
2021年8月、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の第6次評価報告書(第1作業部会)「自然科学的根拠」が公表され、気候システムや古気候的証拠への関心が高まりを見せている。本研究会では気候変動と歴史の関係を主題とし、①大気研究により過去に異常気象が起きたシステムを解明するとともに、②最新の高精度古気候復元から明らかになった過去の寒暖や乾湿の気候変動の状況を紹介する。さらに、気候変動に対して日本社会がいかに対応してきたのかも議論する。こうした過去の気候変動解明は、未来への展望を考える上でも示唆に富むだろう。
本会合は気象学史研究に関心を持つ、より多くの方の間の情報・意見交換をうながすため、学会員以外の方にも広く参加を呼びかけて開催する。
1. 概要
第10回気象学史研究会「気候変動解明への歴史からのアプローチ」
日時: 2021年12月2日(木)18:00~20:00 オンライン開催(日本気象学会2021年度秋季大会第1日夜)
プログラム
「太平洋戦争末期の異常気象について」立花義裕(三重大学)
「高時間分解能での古気候復元による新たな可能性」中塚 武(名古屋大学)
招待コンビーナ・司会:財部香枝(中部大学)
参加方法:参加を希望されさる方は事前申し込みをお願いいたします。
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSdeVbzD4aDbLWcNB64xYAV1BbtAgg6uyx1KQLjY-8uHgCJKEg/viewform
日本気象学会員であるか、秋季大会に参加するかどうかに関わらず、関心のある方はどなたでもご参加いただけます。
参加費は無料です。
おことわり
オンライン研究会は会場に大勢の方々に集まっていただくことが難しい現状や、日頃会場への参加が容易でない方に参加の機会を広げるなど、多くの可能性がありますが、さまざまな理由により接続が切断されたり画像・音声が途切れたりして、十分に満足いただけるような参加ができないこともあります。あらかじめご承知おきください。
今回のオンライン研究会はウェブ会議ツールとしてZoomを使用いたします。
Zoom練習会
Zoomの使用が初めての方、不慣れな方で、練習の機会があれば参加されたいという方は、参加申込フォームでその旨お知らせください。希望者が多い場合は練習の機会を準備いたします。
2. 講演要旨
1. 太平洋戦争末期の異常気象について 立花義裕(三重大学)
気象学は、異常気象や気象災害、そして戦争をきっかけとして大きく発展したことは周知であろう。災害級の気象現象は自然現象であるからその発生は避けられないが、後者は「社会現象」であり、人類に英知が備われば回避可能であろう。尤も、地球温暖化に因る前者の発生は英知度に依存するが・・本発表では昭和初頭から太平洋戦争終焉時までの日本の気象・気候状況を通覧しつつ、戦争終焉直前の冬(1944―45年冬期)の観測史上最大級の豪雪と寒波、およびそれに引き続く夏(1945年夏期)の観測史上最大級の冷夏に焦点を当て、これら異常気象と当時の社会と政治状況の連関について論考する。気候危機時代の温故知新の一助となればとの思いから。
2. 高時間分解能での古気候復元による新たな可能性 中塚 武(名古屋大学)
最近、樹木年輪に含まれるセルロースの酸素同位体比から、相対湿度や降水同位体比を介して、夏の降水量の変動を復元する研究が進展している。セルロースの酸素同位体比は現生木から遺跡出土材まであらゆる木材を対象に測定できるので、既に中部日本では、21世紀の現在から弥生時代まで2500年以上の精度の高い年単位のデータが得られている。21世紀の現在のデータには、近年の水害の増大につながる高温かつ湿潤な状況が反映されているが、同じような状況は、12世紀の平安末期、14世紀の鎌倉末期にも見られ、年輪データに見られる過去の気候変動の一部始終から、近未来の気候変化と社会影響を予測できる可能性もある。その最新の情報を紹介する。
(2021/10/24)
(立花氏講演表題変更: 2021/11/10)