第7回気象学史研究会〈「天気予報の自由化」25年-気象行政史の視点から〉オンライン開催(2020/8/22)のお知らせ
主催:日本気象学会気象学史研究連絡会
「気象予報士」が誕生し、民間事業者に「一般向け予報」が許可されてから四半世紀が経過した。この間、予報業務許可事業者数は大きく拡大し、気象予報士は1万人を越え活動の舞台をさらに広げることが期待されている。この発展の契機となったとみえる、いわゆる「天気予報の自由化」の動きを、150年にわたる日本の近代国家事業としての気象行政史の視点から振り返り、今後の気象業務のさらなる発展の方向を考えるよすがとしたい。
明治初年の創生からの近代日本気象行政と社会との関係の変遷を解明する先駆的研究をまとめられ、『日本気象行政史の研究:天気予報における官僚制と社会』(2019)を上梓された若林悠氏、「自由化」当時、気象庁の気象行政の最前線で予報許可に関する業務にあたられた横手嘉二氏、お二方にそれぞれの立場からご講演をいただき、社会の中における気象行政の役割を再考し、議論を深めたい。
本会合は2020年度日本気象学会春季大会にあわせての開催を予定しておりましたが、春季大会の現地開催見送りにともないいったん中止いたしましたものを、ご講演いただく方々のご理解ご協力を得てオンラインで開催することとしたものです。
講演者の方々にあらためてこの場を借りて感謝申し上げます。
1. 概要
第7回気象学史研究会〈「天気予報の自由化」25年-気象行政史の視点から〉
日時: 2020年8月22日(土)14:00~16:00 オンライン開催
プログラム
・「天気予報の自由化」の史的展開―行政学の観点から― 若林 悠(大東文化大学)
・「天気予報の自由化」について 横手嘉二(元気象庁)
参加方法:参加を希望されさる方は事前申し込みをお願いいたします。(2020/7/31受付開始)
参加費は無料です。
おことわり
オンライン研究会は会場に大勢の方々に集まっていただくことが難しい現状や、日頃会場への参加が容易でない方に参加の機会を広げるなど、多くの可能性がありますが、さまざまな理由により接続が切断されたり画像・音声が途切れたりして、十分に満足いただけるような参加ができないこともあります。あらかじめご承知おきください。
オンライン練習会 (2020/08/21)終了いたしました。
今回のオンライン研究会はウェブ会議ツールとしてZoomを使用いたします。
オンライン研究会に不慣れな方のため、オンライン練習会を行います。
第1回 2020年7月23日(木)13:00~14:00, 19:00~20:00(終了いたしました。)
第2回 2020年8月15日(土)15:00~16:00, 19:00~20:00(終了いたしました。)
2. 講演要旨
・「天気予報の自由化」の史的展開―行政学の観点から― 若林 悠(大東文化大学)
長期的な時間軸のなかで気象庁の行政活動の転換点を検討するとき、1990年代における気象業務法の改正を中心とした「天気予報の自由化」は、最大の転換点の一つだったといえるだろう。「天気予報の自由化」は、予報の規制緩和と気象予報士制度の創設をもたらし、新たな官民関係の構築を要請したからである。では、なぜ気象庁は「天気予報の自由化」を行わなければならなかったのか。また「天気予報の自由化」は、日本の気象行政に何をもたらしたのか。従来、こうした問いは科学史や気象学史といった技術的な文脈のなかで検討されてきた。だが、行政活動が社会との接点を持たざるを得ない以上、社会的な要因も考察する必要がある。加えて、気象庁は政治性の低い行政組織とはいえ、マクロな政治的文脈がその活動に影響を与えることもある。これらの行政と社会、行政と政治といった諸関係を分析するのは行政学の強みである。とはいえ、気象庁の行政研究は、行政学の中心的な分析対象とはされてこなかった。そこで本講演は、行政学の観点から「天気予報の自由化」を取り上げる。技術的な文脈を踏まえつつも、むしろ同時代の社会や政治の要因を交えながら、気象庁がこの改革にどう取り組み、いかなる制度設計をしたのかを考察してみたい。以上を通じて、今日からみた日本気象行政史における「天気予報の自由化」の歴史的意義についてお話をさせて頂きたい。
・「天気予報の自由化」について 横手嘉二(元気象庁)
気象業務における「天気予報の自由化」の検討の出発点は、平成3年(1991年)3月の気象審議会への諮問第18号「社会の高度情報化に適合する気象サービスのあり方について」で、諮問理由は次のとおりである。「近年のおける情報処理技術の進展は著しい。これを受け、気象庁においても情報処理技術の導入を中心に業務整備を進め、予・警報をはじめとする各種気象情報の質的向上を図ってきたところである。一方、社会の高度情報化は、各種情報メディアの拡充、情報に関する著しいニーズの高度化・多様化をもたらしており、気象情報を取り巻く環境は大きく変化しつつある。なかでも、各種情報メディアを活用した図情報を中心とする情報提供、特に対話形式の活用は、社会の多様な要請に応えた新しい気象情報サービスを推進する上で大きな可能性を持つものと考えられる。このため、関係機関と協力の推進、民間気象会社の活用等も含め、時代の要請に適合した新しい気象事業を推進して行くことが必要となっている。今回の諮問は、特に、気象情報の内容・表現形式とその提供方法という観点から、社会の高度情報化に適合した気象業務のあり方を問うものである。」
本諮問に対し、気象審議会第18号答申が平成4年(1992年)3月に公表され、それを踏まえ、平成5年(1993年)5月気象業務法が改正された。平成6年(1994年)には、気象庁が保有する大量の情報の提供など民間気象業務を支援するための業務を行う財団法人気象業務支援センター*が設立、8 月には第1 回気象予報士試験が実施され、同年末までには約500人の気象予報士が誕生し、平成7年(1995年) 5 月には,予報業務許可事業者による「一般向け予報」が初めて許可された。これらの状況は、「天気予報の自由化」との見出しで大きくマスコミに取り上げられた。
これらの流れを、気象庁においてその当時、予報業務許可等の実務を担当していた視点でお話させて頂きたい。
*平成24年(2012年)から一般財団法人
(2020/07/12)