第1回気象学史研究会「気象学史研究はどうあるべきか」開催(2017/5/27)のお知らせ
(主催:日本気象学会気象学史研究連絡会)
2016年12月に発足した気象学史研究連絡会による第1回目となる研究会合です。
そこで気象力学研究の世界の第一人者として活躍される傍ら、科学史など歴史的観点からも発言を続けてこられた京都大学名誉教授・元学会理事長の廣田勇先生と、科学史の分野で特に気象学史にご関心を持ち続け,気象学会員との共同研究でも多くの成果をあげられている神戸大学教授の塚原東吾先生をお迎えして、それぞれの視点から気象学史研究のあり方へのご提言をいただきます。
ご参加のみなさま各々の洞察を深める契機としていただければ幸いです。
なお、本研究会は気象学史研究に関心を持つより多くの方の間の情報・意見交換をうながすため、学会員以外の方にも広く参加を呼びかけて開催いたします。
1 概要
第1回気象学史研究会「気象学史研究はどうあるべきか」
主催:日本気象学会気象学史研究連絡会
2017年5月27日(土)18:00~20:00(日本気象学会2017年度春季大会第3日目夜)
国立オリンピック記念青少年総合センター・センター棟3F 309会議室(東京都渋谷区代々木神園町3-1・春季大会B会場)
プログラム
挨拶 三上岳彦(帝京大学)「気象学史研究連絡会の発足にあたって」
基調講演 廣田勇(京都大学名誉教授)歴史を学ぶ、歴史に学ぶ-――科学史の視点に関する一考察
招待講演 塚原東吾(神戸大学)科学史のなかでの気象学史:「歴史の科学化」と社会史視点という両輪
総合討論
参加費:無料
2 講演要旨
・基調講演
歴史を学ぶ、歴史に学ぶ-――科学史の視点に関する一考察
廣田勇(京都大学名誉教授)
この度、気象学会の中に気象学史研究連絡会が発足したことは、従来余技的に片隅で扱われてきた気象学史の見方・捉え方に新たな光を当てる好機であり慶ばしい。
この講演ではまず、歴史学の基本的概念の多様性を確認した上で、科学史の持つ独自性を文学史・美術史等と対比させつつ分析的に考察し、それを気象学史に当てはめたときどのような理解・認識が得られるかを述べる。例えば年表の作り方ひとつを取ってみても、着眼点次第で斬新な視界が開けよう。
このような視点からの歴史認識が今後の気象学研究の方向性に対しどのような理念をもたらし得るかについて、大気観測の発展に伴う現象事実の発見と解明、理論体系の構築、数値モデルの功罪、等々の具体例に則して提言を行ないたい。学問史とは古老の回顧録ではない。現役の指導者および中堅・若手研究者を対象とした議論である。
・招待講演
科学史のなかでの気象学史:「歴史の科学化」と社会史視点という両輪
塚原東吾(神戸大学)
気象学会のなかで、気象学史研究連絡会が立ち上がったことを、演者の専門とする科学史の観点からも喜ばしく思う。
これが新たな「学際的」なアプローチに繋がることを期待している。
科学史と、その科学史が対象とする当該の科学そのものの関係は、大きく分けると2つの在り方が考えられる。
まずは、近年の地球温暖化問題などで注目されるような、「歴史の科学化」とでもいえるような立場である。
これは歴史の実像(史資料)に対して、現在の科学の視線からこれらを調査・検討して、再構成・再現するものであり、たとえば気象学の世界では、古気候の再現などがある。
もう一つは、(現在も含む)科学の社会的な在り方について、それが歴史的(文化的・制度的)に形成され、現実世界のなかで連綿と実践されている営為であることを解明してゆくこと、すなわち「科学の歴史化(社会史化)」である。
これらの2つは、互いに相反するものではなく、「両輪」として、協調的に運営されることが望ましい。
これは近年では、「トランス・サイエンス」型の研究、または「ポスト・ノーマル・サイエンス時代の科学の望ましいありかた」などとも呼ばれる、新たな時代に即応した研究スタイルでもあると考えていいだろう。
(2017/3/16)