相続と相続診断士についてのページです。
一.民法
[1]相続とは
相続とは、亡くなった人(被相続人)の財産を相続人が引き継ぐこと。
相続の開始の原因は、人の死亡によって開始し(民法882条)、相続の開始場所は、被相続人の住所において開始する(民法883条)。
被相続人の住所は、被相続人の最後の住所地になる。
主に相続に関する裁判手続きの管轄を決定するために重要になる。
相続が開始されると、被相続人の財産上の一切の権利義務(積極財産、消極財産)が相続人に引き継がれる。
ただし、被相続人の一身に専属していたもの(被相続人だけにしか認められないもの)は除かれる。
□積極財産
現金、預貯金、有価証券、土地、家屋といったプラスの財産
□消極財産
借金などの債務
[2]相続人
相続人とは、相続により被相続人の財産上の一切の権利義務を引き継ぐことができる一定範囲内の親族のこと。
1.法定相続人
□代襲相続
相続開始時において、相続人となるべき者が死亡・相続欠落・排除(相続放棄は含まず)により相続権を失っている場合、当該相続人の相続人が被代襲者に代わって相続すること。
被相続人の直径卑属及び兄弟姉妹(一代限り)しか認められない。
□公正証書遺言
遺言者が証人2人以上とともに公証役場に行って作成します。
遺言作成者が外出できない場合は、公証人が出張してくれます。
自署が要件とされないので、文字が書けない者でも作成できます。
原本が公証役場で保存されるので、紛失や改ざんの可能性がありません。
□被相続人の口頭による相続分指定
被相続人が、生前に相続人の前で口頭にて主張した相続分の指定は、法律的には有効になりません。
※被相続人の意志通りの遺産分配を行うには、遺言書を作成したほうがよい。
□相続税法
□平成29年4月1日以後の相続もしくは遺贈または贈与(以下「相続等」)により取得した財産に係わる相続税又は贈与税の納税義務
(1) 国内に住所を有しない者であって日本国籍を有する相続人に係わる相続税の納税義務について、国外財産が相続税の課税対象外とされる用件を、相続人及び相続人が相続開始前10年(改正前5年)以内のいずれの時においても国内に住所を有したことがないこと
(2) 住所が一時的である外国人同士の相続については、国外財産を課税対象にしないこと
(3) 相続人又は被相続人が10年以内に住所を有する日本人の場合は、国内及び国外双方の財産を課税対象とすること
□地積規模の大きな宅地の評価
平成30年1月1日以後の相続等により取得した宅地で、一定の要件を満たすものは、以下の算式によって計算された規模格差補正率を用いる。
本改正により、「広大地の評価」は廃止された。
評価額 = 路線価 × 奥行価格補正率 × 不整形地補正率などの各種画地補正率 × 規模格差補正率 × 地積(㎡)
□取引相場のない株式の評価の見直し(適用時期:平成29年1月1日以後の相続に適用)
類似業種批准方式
(1) 類似業種の株価の対象
<改正前>
1.課税時期の属する月、2.課税時期の属する月の前月、3.課税時期の属する月の前々月、4.課税時期の属する年の前年平均
<改正後>
上記4項目+5.課税時期の属する月以前2年間の平均
(2) 上場会社の決算対象
<改正前> 連結決算を反映しない
<改正後> 連結決算を反映する
(3) 1株あたりの配当金額、利益金額、及び簿価純資産価額の比重
A:類似業種の株価
B:類似業種の1株あたりの配当金額
C:類似業種の1株あたりの年利益金額
D:類似業種の1株あたりの純資産価額
b:評価会社の1株あたりの配当金額(過去2年間の平均)
c:評価会社の1株あたりの年利益金額(過去2年間の平均と直前期の少ない方)
d:評価会社の1株あたりの純資産価額(直前期の簿価)
※c/Cがゼロの場合、分母は3
※斟酌(シンシャク)率:子会社(0.5)、中会社(0.6)、大会社(0.7)
<改正前>
A×((b/B+3×c/C+d/D)/3)×斟酌率
<改正後>
A×((b/B+c/C+d/D)/3)×斟酌率
□平成30年4月1日以後の相続または遺贈により取得した宅地につき、小規模宅地等についての相続税の課税価格の計算の特例の対象から、以下の者および宅地等が除かれます。
(1) 持ち家に居住していない者に係わる特定居住用宅地等の特例(いわゆる家なき子)
・相続開始前3年以内に、その者の3親等内の親族又はその者と特別の関係にある法人が所有する国内所在の家屋に居住したことがある者
・相続開始時において居住の用に供していた家屋を過去に所有していたことがある者
(2) 賃貸事業用地等の特例
・相続開始前3年以内に賃貸事業の用に供された宅地等
(相続開始前3年を超えて事規模で賃貸事業を行っている者が当該賃貸事業の用に供しているものを除く。)
※経過措置により、一定の要件を満たす場合には、対象となることがあります。
□相続税および贈与税の納税猶予の特例制度(平成30年1月1日から令和9年12月31日までの間に相続等により取得した非上場株式等)
本制度では、現行制度における猶予対象の株式の制限(総株式数の2/3)を撤廃し、取得したすべての株式が対象となり、納税猶予割合も相続税で80%だったものが100%に引き上げ(贈与税は元々100%)、承継対象者も最大で3名にまで拡大するなどの措置が講じられます。
□判例
□預貯金は遺産分割の対象とするのが相当と判断(平成28年12月19日最高裁判例)
最高裁判所は、従来、遺産分割の対象に預貯金は含まれない(法定相続分で金融機関に請求をした場合、その分に関しては払い出しを認める)としてきた判例を変更する決定をしました。
「遺産分割は相続人同士の実質的な公平を図るものであり、できる限り幅広い財産を対象とすることが望ましいため、預貯金は遺産分割の対象とすることが相当である。」と結論づけました。
遺産分割協議を経ずに、相続人の死亡直後に相続人が被相続人の預貯金を自己の法定相続分に限り引き出すという運用がされてきましたが、今後は、各金融機関によって対応が分かれることになります。
□相続税対策の養子縁組の可否(平成29年1月31日最高裁判例)
最高裁判所は、節税目的であっても当事者の縁組意志が確認されれば、養子縁組は有効との判決を下しました。