2014年5月20日~22日の三日間の『Wagamama CD-3』レコーディングを終えた
5月22日に『ツインズ』小竹直さんと小竹親さんにお話を伺いました。
_:三日間、レコーディングお疲れ様でした。
ありがとうございました。
ツインズ:ありがとうございました。
親:ありがとうございました。
楽し過ぎました。
_:今回のレコーディング、色々やらせてしまいましたが、どうでしたか?
親:いやいや。
まさか、妹尾さんとレコーディングが出来るとは思ってなかったですけどね、夢にも。
_:そうですか。
親:はい、もう、歴史の中に入れたあ~ 嬉しいですから。
直:ほんまやねぇ。
親:妹尾さんのレコード、よう聴いたね。
直:よう聴いたねぇ。
僕らの知り合いのおっちゃんから「あれがブルースの教科書や!」って云われてね。
_:へえ~ そうですか。
直:ずっと聴いてたなあ。
親:「聴かなあかん!」云われて。
_:そうですか、おっちゃんって誰ですか?
直:あの、僕らにブルースを、シャッフルとか教えてくれはった人が居て。
イケガワさん、大阪のね。その人ずっとブルースバンドやってはって。
そのブルースバンドの名前が『キャリー・リー』
『キャリー・リー』って曲を妹尾さんのアルバムの最後にピアノと演ってはるんですよ。
で、そのギターの人が「これいい!」って。
それまだレコードやったけどね、当時。
それをカセットテープにダビングしてくれて。
「CDなかなか出えへんのや、この名盤は」云うて。
_:それは、いくつの時?
直:18か、 そのくらいかな。
親:うん、高校生くらいだった。
_:その時は二人とも音楽やってたんですね。
親:音楽やってたんですけど、ブルースはまだやってなかったかな。
直:ブルース好き成った頃かな。聴きだした頃。
_:初めはどんな音楽やってたんですか?
親:ファンク(笑)
_:ああ、そうですか。
親:ハード・コア・ファンクやったんだけど…
直:なんか、通ずるパワーがあるんやな、ブルースなあ。
これって、なんやろなあ思って…
で、なんか好きになっていって、知らん間に。
なんかいいなあ。これ、なんだろうって。
親:だから、妹尾さんには、ずっとあこがれてるから。
お兄ちゃんは、ずっとギターできてるけど、僕ギターは最近ですからね。
41歳でエレキ買うて、やから、まだ間も無いですけど。今年46ですから。
まさか、妹尾さんとギターで出来ると思うてなかったしね。
ドラムの時でも感動してたのに…
直:そら思うわ。 僕も思うわ。
親:今日もそうやけど、「ああ、このパターンな… 」とかを。昔からよう教えて貰ってたんですね。
「ここ、こんな感じがええでぇ~」とか「こんなシャッフルあんねん」とか。
まあ、凄う教えて貰ってたの、二人が。
僕、ドラムやったし、まさかギターでやるとは思わなかったし。
ああ、ギターは、また違う乗り方せなあかんのやなあ、とか(笑)
もう凄く、ためん成ります。(ために成ります)
直:ほんま、ためん成るなあ。
親:ドラムの乗り方と一緒かな思うてたら、ああまたちょっとちゃうんやなあ~っと。
感動しましたね。
_:ツインズと妹尾さんは知り合ってから長いのですが、定期的にライブをやる様に成ったのは5、6年前からかしら。
親:うん、この形はね。
直:最初、マンボ(マンボ松本さん)もおったしね。
マンボと弟と妹尾さんでやってたんやないかな。
親:かもしれんね。
マンボにギター借りて、まだ買う前。
直:で、「お兄ちゃんもけえへんか」って、「いいの~」って云うて四人でやらして貰ってた。
そして、ちょっとツアー行ったりとかして、確かね。
親:うん。
_:あそこ、飛騨高山に行ったのよね。
直&親:そうそうそう。
妹尾さんが親くんを誘ってライブを始めたのは、2008年だったと思います。
2008年10月、二人の何度目かのライブが終わった後、妹尾さんは京都で交通事故に遭い肋骨6本骨折して入院し、音楽活動休止。
2009年6月にライブ活動再開。
親くんとのライブも再開しました。
親くんが、マンボ松本さんを誘って三人で演る事もありました。
2010年3月に大阪府大東市立文化情報センターでのライブに直くんにも参加して貰い
飛騨高山でのライブも四人で演奏しました。
2011年6月1日、マンボ松本さんが急死され、以後は三人でライブをしています。
直:僕らが昔、まだ弟がドラムで、『バンブー・ブラザース』っていう、塩次さんが命名してくれはったんだけど。
で、東京行った時には妹尾さんとか塩次さんが、ようゲストで来てくれはってた。
また、京都に呼んだりとか。妹尾さん呼んだりとかしてねぇ。
で、そんななって、まさか僕も弟と一緒で、マンボが亡くなって、なあ、
まさか三人で、この感じでレコーディングするとは 俺も思ってへんし…
へえ~って、
嬉しいなあって。
_:妹尾さんは『バンブー・ブラザース』の頃からとても気に入ってて、「凄くいいんだ!」って言ってたの。
私も『ツインズ』のライブを初めて聴いて、もの凄くいいなあ!って好きに成って
「妹尾さん、ツインズと一緒に演ればいいのに」って云ったら
「ツインズにはツインズの活動があるから、俺が一緒に演って邪魔する事になったら、よくないから」って云ったんですよ。
私はそんなに遠慮しなくても…って思ったんですけどね、妹尾さんってそういう所あるんですよね。
直:そんな考えてくれはるというのは、逆に嬉しいと云うか、僕らは僕らでやらんとならない事もあるし。
でも妹尾さんと演るのは、やっぱり好きやねん、けど妹尾さんの音楽、ブルースはホンマの人生な訳やないですか。
そんなに簡単に出来るもんでもないしと思うてた、思うてた事あるんですけど。
そやけど、妹尾さんと演らせてもろうてると、今までの僕の中のブルースのイメージも変わって
そんなにギターって弾かんでもええねんなというか、なんか自然な気に成るっていうか、なかなか云うのは難しいんやけど。
_:はい、はい、分かります。
直:なんか、ナチュラルな感じを教えてくれはるというか、もう不思議な感じがする。
ギター弾いてて、弾かなあかんのやと駆られる時が多い訳なんやけど、
妹尾さんと演ってると、そうじゃなくて、そのまま通りすぎてもいい!っていうか。
演奏してて気持ちがいいなあっていう、それが味わえる人ってなかなかブルースで珍しいんじゃないかなと思うんですけど。
なんか、不思議な気持ちに成ります。
親:お兄ちゃんは、ずっとギターできてるからなあ。
僕には難しいかもしれない、そこ気付くのに時間かかると思う。
ギタリストはガーッと前出なあかんとこ有るじゃないですか。
ドラムはそういう訳にはいかない。先、怒られますやん、自分が目立とうとしてたら。一番邪魔に成るしね。
「いらん事せんでええから、リズムちゃんときざめ!」って怒られますやん。
だから、そういう意味では、ギタリストは難しいんちゃうかなと思いますね、そこ気付くの。
今回また音録ったらねえ 余計にまた見えてくるし、自分の粗がいっぱい見えてきて(笑)
よう分かりました、もう(笑)
_:今回のレコーディングの曲目は私の希望する曲もあったので、妹尾さんに早く決めて貰いたかったのですが
録音前日くらいにやっとリストアップしてくれたんですけど。
お二人に伝えないし、あなた達も訊かないじゃないですか。
親:いやあ、何くるのかなあと思いながら… 内心ドキドキ…
直:まぎわ位に妹尾さんに訊いたら「いや、まだ考えてへんや」って云わはったんです。
どっかでは訊きたい気持ちも有り、そやけどライブでも曲順が決まってる時もあれば
最初の頃は、たぶん何も決めずにバーッと演ってたからね。
親:もの凄うドキドキしますよね。
_:決めなくても大丈夫って思ってるんでしょうね。
親:レコーディング初日、タバコ吸って休憩してる時に「妹尾さん、何の曲からいきますか?」って訊いたら
「いやー、まだ考えてへんや。」って(笑)
_:曲目リストは、あったんですけどね。
親:まあ、第一曲目はまだ決まっていなかったんでしょうね。自然やなあと思って。
直:今日のリストが全部あがってて、じゃあこれって。
まあ、これか思うと、それちょっと絞って練習できますやん。
果たして、もしかして、いいのか悪いのか?
なんちゅうんですかね、悪くはないけど、逆にそればっかり、かちこちに成ってしまう事も…
これもやらんならん、あれもやらんならんと思うのも違うかも分からんと、僕もちょっと思う。
_:練習してきてもレコーディングの場に来たら、ちょっとした雰囲気なんかで変わりますし
ブルースは決まり切った演奏をする音楽ではないですからね。
その時々に楽しい会話ができる演奏をする事が出来たら最高ですよね。
直:最後にコーラスも入れて、ああツインズはやっぱりこうや!って思ってくれてはるんやなあ~と思って。
妹尾さんとワァ~~と演って、一緒に歌って、ほんとに楽しいし。
勝手に僕らが歌ってるだけやけど、ライブでも。
_:ライブ聴いてて、凄く楽しいですから、ツインズとは楽しーい!CDを一枚作りたいと思ってたの。
親:楽し~い!のが出来た気ぃしますわ。
_:コーラスとか、どんどんのせていったら、益々楽しく成ってきましたものね。
昨日は一日で14曲かな、録ったから、大変でしたでしょ。
親:そんな録りました?(笑)
_:はい(笑)
直:昨日は、もう、午後2時位から9時位まで止ってませんでしたもんね。
親:なんか、ええエンジン掛かったら録らんとねぇ。
確かにそうやね、うん。
だから、ほんま興奮して寝れへんかったんですけど、昨日もその前も。
_:あら、そうだったんですか。
親:うん、ぜんぜん寝れへん。
直:俺も、なんかそれあったなあ。
親:ほんまは風俗行くところやったんですけど(笑)
_:(笑)お酒も飲まずにかな?
親:(笑)…
やっぱり、これは録音やわ。
直:そうやな。
親:もの凄く、昨日眠れへんかった。
朝5時頃位まで、なかなか眠れへんなあって。
直:なんか、どっか、気い立ってんなあ。
夜中、考えてしもうた。
ちょっと起きてな、あれがあれがで……
ちょっと思うたら三時間位眠れへんかった。
いやあ、凄いなあ… 思って。
親:でも、録り終えられたし、三日間でねえ。
_:ほんとに、お二人の御協力のおかげです。
演った事のない曲もありましたしね。
親:ああ、そう、あんまり演ってないのもあります。
直:『Since I Met You Baby』って、たぶん一回しか演った事なかったです。
親:マンボが居た頃、一回だけ。
直:一回しか演ってない曲だから、僕たちこの曲がきた時、これどう演るんやろうなあって思って。
親:レコーディングするんや、どうすんやろう思って(笑)
_:この曲は楽しくて幸せな曲だから、絶対入れたい曲だったんですよ。
コーラスも入りますしね。
直:いやあ、ためになりますわ、ほんまに。
親:楽しいし。
_:私の方からも、無茶振りに近い要求もしてしまいましたが…
親:ドキドキするねぇ
直:ほんまに、出来へんかったらねぇ…
親:それ、凄い大事なんは…
僕らもツインズ長いじゃないですか。
割と安全パイいく時あるんですよ、ライブでも。
でも、こうしとこ、ああしとこって、それが、ええも悪いも成る時あるんやな。
直:うん。
親:そやけど、ドキドキしっぱなしですもん。
直:今回みてても、「パーカッション叩いて」とか。
ノープランやないけど、ちょっと思ってたやつを、ハーモニカと弟のパーカッションだけで演ったりとか。
そういうのって、絶対そういう感覚って、遊び心やないですか、絶対忘れたらあかん思いますよ。
普通は、もっと綺麗にしようみたいのばっかりで…
_:レコーディングは音が残るから、絶対大丈夫な事だけをしようと思う人が多いかもしれませんね。
『Wagamama CD』シリーズでは、
Weeping Harp Senoh の本来の魅力の上に新鮮な魅力を一つは加えたいと思っているんです。
今までのブルースハーピストみんなが演ってる事以外も挑戦して欲しいんです、勿論できる範囲でですが。
親くんのジャンベとハーモニカの曲は大成功だと思います。
遊びはいいですよね、とても楽しい。
親:遊んでる所が一番出るんですね、一番出易いなあ。
直:それを皆聴くし、ライブやるとそこを観て聴くし、楽しんではるなあって、楽しまはる訳やし。
_:妹尾さんも誰と演るかで、ぜんぜん違いますから…
ツインズと演ると楽しいから、演奏ものってドンドン楽しい演奏ができるんだと思いますよ。
やはり、気持ちが一番大事ですものね。
直&親:うん、うん、そうそう。
直:(妹尾さんは)最初の頃から、一緒に演ってて気に成る所いっぱい有ると思うんですよ、絶対。
親:うん、うん。
直:なあ。
よっぽどノリがちごうたら「それ違うで」って云うくらいで。
それをレコーディング前に弟の家で二回位リハーサルして…
親:「こういうのも有るでぇ…」って、ちょっと、うっすら気付いてきてる事を教えて貰えたりして。
そんな事有り得へんで、普通。
宝物分けて貰うてる(笑) 嬉しいなあ。
直:「そうですか、やっぱり!」とか、知らん事は「うわっ知らんかった!」とか。
なんか、それが凄いなあ思って。
もう、素晴らしい。いろんな事気付くなあって。
_:「親くん家で練習するんだ~」って云ってスクジュール入れてたから
後日、「なんか新しい曲やったの?」って訊いたら「今までの曲を、もうちょっとかためた」と云ってましたね。
親:道順を教えて貰うたんですけど。
直:素晴らしいなあ。
親:そしたら、ちょっとプレッシャー少なくなったんで…
うっすらは気付いていたんですけど、そういうコードの道順が有るってことは。
妹尾さんが「こういう歌の時はな…」って、全部分かり易く説明してくれてギター弾いてくれて。
直:血豆ができてた。
_:そうそう、妹尾さん指に血豆ができてましたね(笑)
親:僕にギター弾いてみせてくれたんやけど、見事やったし。
これ、一曲ずつ録ってくれへんかな、コピーするわって思ったぐらい。
直:ノリ、凄かったなあ。
親:もうね、ブワーッてね。
_:昔ね、ハモニカをコピーする時、なかなか音が取れないないので、レコードの同じ所を何度も繰り返し聴いてたら、
ハモニカだけじゃなくてギターとか他の楽器の音も覚えてしまって、
当時のバンドのギタリストに「そこ違う」って云ったら嫌な顔されたと云ってたの。
ですから、ここでハモニカがこう吹いたらギターがこういう風に入るとか、ドラムやベースはこんな感じとか。
ブルースを深く追求していって得たものを基本にして、そして今は、妹尾隆一郎のブルースがあるんですよ。
親:こうきたら、こうって分かるんですよね。
直:うん、確かに、自分なりにやらはったらアクセントとか的を得てて
「どうやろ、はまらへんか」って云ったら、はまってましたよ、やっぱり。
_:ツインズはいつも妹尾さんのブルースを一生懸命演ってくれるから、ありがたいです。
親:ほんま ためになるから
めっちゃくちゃ好きやからね。
直:ちごうてたら、絶対できへんわね。
これ演りたいなあ思ってな、絶対できへんと思う。
親:僕らも好きで
_:やっぱり気持ちですね。
親:なんでもそうやねぇ。
だから「そこは こうやねん」って云うと嫌がらはる人もいるけど
妹尾さんは決して間違うてる事は云ってないと思います。絶対にね。
それ、そうした方が演奏しやすいと思いましたね。
「ええ!」って思う位 びっくりした。
あとは、もう僕も色気と(笑)
直:何に対しても役立つな、ツインズ演る時も、オリジナル演る時にも、絶対役に立つもん。
親:僕もほんと ためになりましたね。
さっきも云ったけど、ドラムだったら、こうのらなあかんのに、半分でギターはのって弾くんやとか…
たぶん、そこまでギター弾いてて、一瞬で分からないですよね。
ドラムの感覚で聴いてるから弾いてしまうでしょ、これでいいんちゃうのって思ってたんですよ。
妹尾さんが「半分でのれよ」と
直:気に成る事を妹尾さんは云ってくれはったんですよ。
ドラムで考えてるからね。
親:考えるのは、自分にはその回路(ドラムの回路)しかない。
直:ドラムでずっと演ってたからね。
親:妹尾さんに云われて「やっぱり そうやなあ」と思って。
初めて知りましたね。 ここののりはギターは半分でええのんやってのが
ドラムもどっちのパターンもあるんですけど、半分で倍にのるパターンもあるんですけど
それまた特殊なんですけど、終わりが パン・ドン・パンやったら、こののりでドラムはいかなしょうがないですから
ギターで弾く時は「はあ、こうやってのるねんなぁ」って(笑)
_:今回スネアも久し振りに叩いたそうですね。
親:めっちゃくちゃ、久し振りですね。
もうね、ダンボール以来。
_:あら、最近はダンボールしか叩いてなかった?
親:ダンボールも、最近は叩いてないです。
女の尻、バーンって叩いてるくらいですかね(笑)
_:さっき、堀尾さんのお尻叩いてたけど(笑)
親:さっき、触りました、はい(笑)
でも、やっぱり久し振りにドラムいうかスネアだけでもやらせてもろたら
「ああ、ここ、これ欲しいなあ」とか、もの凄く見えます。
ギター弾いてる時、僕、やっぱりまだ慣れてないのか「この音欲しいなあ」とか、あんまり分からない。
でもドラムって全部見られますから、だいたいのバランスも音も。「これ、いるだろう!」とか、すぐ分かります。
「ここに、このバッキングあったらええのになぁ」とか瞬時に分かるけど、
ギターになったら、そこまで聴こえてこないですねぇ。
_:そうなんですか。
親くんのエレキギターを初めて聴いた頃の妹尾さんは「親くんのエレキいいんだよ」って云ってましたよ。
親:(笑)マンボにエレキ借りてた頃やないかな。
最初、エレキ練習しないで、いきなり借りて、すぐライブやったん
どうやって弾くのか、そのまあアコースティック弾いてるからね、弾けるって思われるんですけど、
直:ぜんぜん、ちゃうもんなあ。
親:なんか、ローコードでフォークソングみたいのしか弾いてなかったから、ジャッジャ・ジャッジャとか演った事ないから
急には、EとかFとかのコードのケツは何だとか、すぐ出てけえへんかったですね。
だから、それを書いてましたもん、初め。
FやったらケツがCとBbとか分かんない、書いてもそれがどこなのか分からない。
直:そんな事、ドラムやったら考えた事もないからなぁ。
親:うんうん
_:お兄ちゃんはずっとギターで長いじゃないですか、教わる事はあるんですか?
親:そりゃまあ、ありますけどね。
でも、あんま聞かんとこと思ってますけど。
直:自分でやってるもん。
親:まあ、気に成ったら訊きますけど「ここ何?」って。
でもそれが主に成ると僕が出ないからね。
でも、もの凄い好きな音とかやったら、やっぱり訊いてしまいます。
でもなるべく真似はせんでおこうと思います。
お兄ちゃんは、めちゃくちゃギターうまいですからね。
ちょっと一時、僕もギターリストかな、と思ったんですよ。やっぱりエレキ買ったら。弾けへんのに買っただけで(笑)
今は、ブルース好きで、ブルースのバッキングちゃんと出来たら、
まあリードもちょっと好きな曲弾けたらええなあ、ぐらいですかね。
ギターリストと、もう僕は思ってないです。
_:今回のレコーディング、親くんにはサイドギターでだいたいの曲に参加して戴きましたが
低音でリズムを刻む事が多くて腕がつりそうに成ってたみたいですが
親:つりました。
今日一発目から「あれ、昨日のつり、きてるなあ」思って。
_:あらあ~
親:昨日でだいぶきたね。
直:そうやろなあ
親:なかなかねぇ、三日間あんなに弾く事ないですからね。
で、弦がフォークギターの弦張ってるから余計にしんどいんです。
ここ何日か前までエレキの弦張ってみたんですけど、やっぱり頼りない。
これって僕だけかな?って思ってて。
で、また違う種類のエレキの弦張ったら、それも何となくちょっと頼りない。
それでフォークの弦張ったら、ベースライン弾いてると、僕は落ち着くんですね。
_:親くんのギターは何ていうギターですか?
親:ギブソンの125っていうやつ。50年代のギター。
50年代のブルースが凄い好きで、僕も古いブルースが。
それで、似た様な音がでるんかな思って買ったんですけど、まだ鳴らないんです(笑)
_:お兄ちゃんのギターは?
直:僕のは、ギブソンのES335っていうんです。
塩次さんが昔使ってた。
親:あこがれてな。
_:みんながあこがれた赤いギターですね。
このギターは長いんですか?
直:いや、僕は何回も買い替えてるんです。
でも、この形はセミアコっていうんですけど、この形が凄い好きで、なんか。
中もかかってるんですけどね、あかんかって直して、また売って、買ったりとか。
でも、これ買ってだいぶなりますけど一番弾き易いですね。
親:さっき、妹尾さんが云ってたけど「レコーディングが終わったら終わったで、なんかさびしい」って。
_:「さびしい」って云ってましたね。 よっぽど楽しかったんですね。
親:こんなにね、三日間一緒に居たらねぇ。
もうちょっと演らへん?とか思ったりしてね(笑)
直:いやあ、ほんまに。
すごかったわぁ。
_:10年くらい前になるかしら?
大阪フェスティバルホールに出た時…
直:僕、アンプ持って行って。
「俺、明日、大阪フェスティバルホールなんや」って妹尾さんから電話があって
「明日、僕何もないから、荷物持ちに行きましょうか」って、行った時。
_:あの時は、妹尾さん肺炎で退院した直後だったのかな。
直:なんか、けっこう大変な感じだったですけど。
_:佐藤竹善さんのラジオ番組の関連のコンサートで、他にゲストは小田和正さんとかスターダストレビュー。
スターダストレビューの方には「昔からファンです」って言われて、嬉しかったの覚えてます。
あの時は妹尾さん、いつになく心細い様な感じだったんですけど、直くんが来てくれたので嬉しそうでした。
直:何回も妹尾さん観てるけど、あの時もね、凄いなあ!思って。
あの時、最初何分くらいかな? ハーモニカだけで…
_:汽車ポッポ演ったんだっけ?
直:たぶん何分か一人でハーモニカ演って、竹善さん(佐藤竹善)が出て来る…
妹尾さんは20分位一人で演奏したと思う…
_:お兄ちゃんはステージについててくれたんですものね。
直:ハモニカ放る練習とかしてましたよ。
「あかんくなったら、放れよ。下から、こう…」って(笑)
凄かったですよ、妹尾さん。 お客さん総立ちだったもんね。
最初ね、竹善さんと間違えて、みんな総立ち。
竹善さんがハーモニカ吹いたと思って、ワァー!っとなったんですよ。
そやけど「あれ~、何かちゃうぞ~」みたいな感じでゾロゾロって座って、ちょっとシ~ンってなったんです。
妹尾さんは「竹善さんの前で、俺、よう歌わんわぁ」云うてたけど。
「Hey! Everybody…♪」って大声で歌いだしてグワーッって吹いたら、もうお客さん イェイ!! なって。
もう誰でも関係ないよ、ええもんはええ!と思うお客さんやったんで、
みんな イェー!ってなって、もっかい総立ちになったんですよ。
俺、寒イボたって(笑)
しかも、ハーモニカと妹尾さん、ワンコードだったんですよ。
あれ~、ブルースのパワーって、すっごーーい!!
凄いと思ったんですもん、あの時の妹尾さん。
親:エネルギーやな、妹尾さんの持ってる。
僕が20代の時、京都で一人でストリート演ってる時、妹尾さんが通りかかって
「おお、演ってんのかあ! 一緒に演ろか」って吹かはった。それがギターで演った初めてやったと思うんですけど。
Eの何か弾いてたら「おお、いこかあ!」って妹尾さん吹いて歌い始めたんですねぇ。
それまで、客誰も居なかったんですけど、15人位集まった(笑)
「すげえな、妹尾さん。毎日来てくれます」って云ったの(笑)
その頃、ストリート出てるやつが多かったからね。
僕らは妹尾さんの事知ってるけど、知らん子ら、若い子らも居ったから
「なんか昨日ハモニカのうまいおっさん来たでぇ」って、えらい評判になってんね。
「ほんまもんや!お前」「ヘエ~?」ってね。まだネットもない頃やから。
ブルースとか全然知らん10代の若い子らが「めちゃくちゃ、うまいおっさん来たでぇ~」って。
そら、そう思うわな。思うて、びっくりするわ。
妹尾さん「何軒か吹いて来た」云うて(笑)
直:僕とこも来たり。僕もストリートやってたんで。
親:なあ、みんなもやってたから。
あの勢いで、やっぱり妹尾さんの勢いで客もドーンと集まるから。
だから、僕、毎日何やってたんかなあ、熱ないのかなあ、とか。
いろいろ考えたりもしたんですよねぇ、そん時ねぇ。
直:強烈やなあ!思った。
_:ハーモニカは遠くまで響きますしね。
親:歌もね、歌もあれやで …
直:気の出ぐあいが …
親:う…….ん
直:わかんのやろなあ
親:東京行ってた時。一周間くらい妹尾さんの家に泊めてもろたんですけど、僕25歳くらいの時かな。
もうその頃の妹尾さん、めちゃくちゃ元気な時やから、ぜったい寝えへんし、弾丸の様にしゃべってくるし。
大笑い
親:「寝ろよー!」云われるけど、 そんな全然眠れないけど…
大笑い
親:「なあ、今日ちょっと行きたいとこあるう」云うて「この荷物持ってくれ」云うて、荷物いっぱい持つんです。
妹尾さんも僕もかついで、ガーッといっぱい、なんか、重た、重たいんですよ。
妹尾さんもガーッと「俺も持つしなあ」って。 何が入ってんのかなあって。
「ちょっとバー廻ろう」云うて。 まだバーでライブをあんまりやってなかった頃で
「ちょっと発掘しよう思うてる店なあ」って。 わかります、でもこの荷物はなんやろう思って。
それで、バー行くんです。
で、「あのう、ここでもライブやってみませんか」って妹尾さんが言い出すんですよね。
「ああ、じゃあ一回観せてください」云われても、演奏でけへんやないですか。
そしたら妹尾さんが「じゃあ、ビデオ観てもらえる? ちょっと小竹、それ出してくれる?」って。
「ええ、なんですか?」って、カバンの中にビデオデッキが、もう一個のカバンの中にミニテレビが入ってるの。
テレビは昔ので、ごっついやつですよ。他にも接続とか入ってるんですよ
大笑い
親:「ちょっとマスター、いかがで …」夜中か、4時頃からつなぎだすんですよ、妹尾さん。
で、店で観てくれ云って、自分らが演ってるビデオ持ってきて「こんなん流さへん?店で」とか云って営業かけるんですよ。
何軒も行って、「いいですねぇ」ってなるでしょ、「じゃあ、ぜひ」ってなったら名刺交換しはって。
そしたら片付けて。帰るのかな思うたら、それからまた何軒か行くんですよ。
大笑い
親:で、朝なって、朝9時頃でも、またつなぎ出すんですよ。朝9時からですよ。もう店何軒か行ってんですよ。
「ここ、また、つなぐんですか?」って、僕はちょっとゾッとして(笑)
僕はお酒飲んでるから。妹尾さんは飲まへんからいいけど(笑)
まあ、朝いうのもあるけど、お酒飲んで酔うてきたな思ってると「マスター、観てください!」ってまた始まるんですよ。
直:朝9時やろ!
親:妹尾さんの、このエネルギー、凄いな思うたんですよ、そん時。
直:ほんま、凄いね。
親:ほんで結局、僕沈没して寝てしもうたんですよ、朝9時頃。
起きたん、昼12時頃やったんですけど、まだ妹尾さん「あのねえー!」ってマスターに…
大笑い
_:へえ~、お疲れ様でしたね。
「こういうビデオながしませんかー」って云ってたの。
親:ほんで「ライブしませんかー」云うて。
「こんなライブ演ってるんだけど、店でもこんなライブ流したらどないや」って。
僕ら、こんなライブ演ってるいうのと、ライブしませんかと、ビデオ流して宣伝してライブやらへんか、って。
直:やっぱり、ブルースの伝道師やね。
親:ちょっと、ゾッとしましたけどね。
明日も行くんかな?って、ちょっとゾクゾクしてたら
「明日、俺レコーディングなあ。お前どっか遊んどいてくれぇ」って。
「ああ、よかったあ」って。
明日も、あれ持って行くってなったら、どうしようか、俺思うてたから。
大笑い
直:けっこう重いもんなあ、ビデオもテレビも今のとちゃうやろしね。
親:配線も全部やで。
直:スピーカーも入って
親:ビデオテープだけでも本数いっぱい入ってるし
こう持って、二人、こう持って、二人がかりで、もう、6個くらい持って、いっぱいで …
直:誰か云ってたもんね、弟がその話ししてた時、「それでも、最近だいぶ荷物減ったみたいよ」(笑)
親:どんだけあったんや、それ(笑)
もっと前は多かった ?
_:ほんと、一時期すごかったらしいですものね。
親:でも、そのエネルギーは凄いなあ!と思って。
ブルースを、とりあえず皆に聴いて欲しい!と。
とにかく、すごかったすねぇ。
直:すごいねぇ。
親:うん。
_:東京だけじゃなくて、関西なんかでもやってたみたいですものね。
親:まだ、一回も演ってない、チャレンジしてないけど、あのベッド・ミドラーが歌う曲あったじゃないですか。
あれを、その時観せてくれはって、「小竹、観い(観てみなさい)、これグラミー賞のやつ」ってビデオを、妹尾さんの家でね。
もの凄い良くって、涙ポロポロ出てきたの。その時も朝やったですけど。
妹尾さんもダラダラダラ…… 男が二人で朝から泣いてる。
_:あの映画の曲ですよね、『The Wind Beneath My Wings』いいよねぇ!大好き。
親:そう。そのグラミー賞に出た時のやつなんですけど、
二人、もう涙とまらんくらい泣いて。
_:ほんとに私も大好きで、『Wagamama CD-2』の時にこの曲も演って貰おうと思っていて、妹尾さんもやる気に成っていたんですが
どうにも音がなくて、ハープにね。どうやってもメロディーができないので、諦めたんですよ。
『The Wind Beneath My Wings』いいよねぇ!
親:めちゃくちゃ思い出の曲なんですけど。
僕も好きやったんです、あの曲は。
まさか、妹尾さんはブルースの人やと思うてるから、初めて家に行った時に、そんなビデオ観せはると思わへんかったし。
直:そうやろうなあ。
親:で、ブワーッとブルースが有るんやけど、こっち向いてるのは『ダニー・ハザウェー』とか『グラディス・ナイト』
「俺、実は、こういうの演りたいの」って云わはって。
マジッ!ってなって。度肝抜かれましたね。
_:『ダニー・ハザウェー』も何曲か演った事あるんですよ。
直&親:そうですかあ~
直:僕、一回だけ『アル・グリーン』演った事ある。
_:妹尾さん『アル・グリーン』も好きね。
直:『フォー・エイシス』で一回演った事ある。
親:へえ~
直:カッコええ曲やなあって、知らんかったんやけど。
『アル・グリーン』こんな曲有るんやなあ、思った。
妹尾さんは、そやけど、ブルースやもんなあ、ええ意味で。
_:ブルースだけしか演らないと思ってる人も居るでしょうね。
直:居るでしょう!
親:だから、僕も妹尾さん家行って、そのCD見た瞬間、びっくり!
直:それは、最初の入りがな、そう思うんやな、絶対。
僕も塩次さんがアイドルでね。
二十歳の時やったと思う。
「うわあ、こんな人居るんやあ!」と思った時に、「この人のブルース凄いなあ!」思ったら
絶対ブルース以外の曲は知らんと思ってた(笑)
知ってはるわな、そりゃあ。演ってはるし(笑)
親:でも、一番ブルースが好きなんかもしれん、ねえ。
_:ブルースの魅力に取り憑かれて、ブルースが土台に成っていますから、ブルースは特別な音楽でしょうね。
でも、ブルースのジャンルに入ってない音楽もブルースに通じる魅力を感じる曲がいっぱいありますしね。
どんな音楽でも、「いいものはいい!」という感覚ではないのかと思います。
直:妹尾さんの『Everything's Gonna Be Alright』は、だいぶ長い事演ってはる曲やと思う。
「これは俺の看板曲や」って。
僕もずっと長い事歌ってきた曲あるけど、この人は、もっと超えてはるわあ、と思う。
親:絶対、年輪はいりますよね。 絶対そう思う。
直:そうやろね、歳を取った感じが出るんやろね。
_:妹尾さんは凄くシンプルに成りましたよ、歳取って。
親:ああ、そう?
_:だから、昔の若い時は音数が多くてブワーッと、やたら吹きまくってるのが多いですが
歳を重ねて、音も安定して、音色も多彩になり、だからこそシンプルになって魅力倍増した様な気がします。
若い頃の吹きまくってるのが好きな人も居るみたいですけど、100人居て、100人全員がいいと思う事はないでしょうから。
直:自分が演りたい事、演りたいね。
2014年 7月19日