_:今回のレコーディング前に、親くんの家で練習したそうですね。
妹尾:一回目は3月だったかな?
僕がギター弾いて、指に血豆作って(笑)
その時は、♪ジャッジャ・ジャッジャ・ジャッジャ・ジャッジャ♪でいろいろ教えたのね。
で、ベースラインこうやって弾いてって、僕が弾いてあげて「こうやって弾くんだよー」って。
それから一緒に合わせて歌ったりして、それは親くんの部屋でやったのね。
二回目が4月で、親くんの家の近くのお店で。
彼ら(ツインズ)がよくライブやってるお店があって、昼間貸してくれてね。
ここでは『Stormy Monday』とかスローブルース練習して。
『Stormy Monday』のイントロは、こんな風にして、歌が入ったらこんな風にしようとかさ、ギターこんな風に弾いてとかさ。
今までのライブと違うやり方教えて、そういう風に練習してくれ、みたいな感じでやったのね。
_:その時の『Stormy Monday』の入り方はギターからだったんですか?
妹尾:そう、ギターから。
ライブもそうだったからね。
今回の『Wagamama CD-3』の『Stormy Monday』は私の意向で、妹尾さんのハープから始めてもらいました。
T-Bone のギターで始まるフレーズは有名で、私も大好きですが、
Weeping Harp Senoh のハープのフレーズもなかなかいいですよ。
シンプルなフレーズですし、ブルースハープを練習している方にはコピーして戴けると嬉しいです。
妹尾:今回は二人に、ああして、こうして、と…
抑揚もね、3月には練習したんだよ。
ここにきたら、ちょっと抑えさあ、で次コードにきたら、こう成って、とかね。
そん時に指の使い方をね、♪タッタ・タッタ・タッタ・タッタ♪だけじゃなくて、他のパターンもいろいろ有るんだよ、とかね。
で、歌がこうきた時は、ちょっとギターを抑え気味にして、歌と歌の間はちょっと盛り上げるとかね。
前から云ってる部分もあったんだけど。
そこらへんも云ってたんやけどね。
_:レコーディングが三日間だったんですが、一日目がなかなか大変でしたね。
妹尾:そうやね、音決めがな、大変やったな。
_:今回のCDのサポートをツインズの二人にお願いした訳ですが…
妹尾:二人は、やっぱりシカゴブルースが好きで、よく原曲は聴いてる。
僕がライブやる時はね、原曲にあまりとらわれずに演ってるから。楽器の編成も違うしね。
でも、イメージをとらえて欲しいというのは有るから。
彼らは元から好きで10年20年前から、原曲となる曲は昔から聴いてるから。
『リトル・ウォルター』なんかは殆ど聴いてるしね。『サニー・ボーイ(ライス・ミラー)』とかもね。
親くんはドラムやってる頃からシカゴブルースよく聴いてたもんね。
_:そうですか。
妹尾:お兄ちゃん(直くん)はさ、ギタリストとヴォーカリストでやってて『バンブー・ブラザース』の頃からソウルとかも。
『バンブー・ブラザース』は塩次伸二さんが名付けたって訊いた?
_:はい、知ってます。
妹尾:晴ちゃん(田中晴之さん)に訊いたんだったかな? 京都に『バンブー・ブラザース』って居るって。
「ライブやるんで、妹尾さんゲストで来てくれませんか」って、晴ちゃんから連絡が有って、一緒にやったのが切っ掛けかな。
_:直くんと親くんのお父さんがやってた料理屋さんに行った事があると聞いた事がありますが
妹尾:『バンブー・ブラザース』と晴ちゃんも参加して、ブルースバンドが三つ位のライブにゲストで行って演った時、
それ以降「妹尾さん、京都来るんやったら、うち泊まって下さいよ」って直くん達が云ってくれて、一回か二回泊めてもらったの。
それ以外に、晴ちゃんと誘われて一緒に御飯食べに行ったり。
その料理屋さんで、二人兄弟そろって板前みたいな店員みたいな、お店手伝ってて
店ではいつも演歌が流れてるんやけどな、親父が遊びに行ったら、すぐブルースに変えて(笑)
_:今回のCDに関してお願いします。
妹尾:口で説明するには、ちょっと何て云っていいのか分からへんけど
『ツインズ』とは、ずっとライブやってきて調子ええ時は凄く良くてね。
ほんで、やっぱり三人の音が、だんだんと良く成ってきたから。
前から僕、ギター2本とハーモニカというの好きやったしね。
シカゴブルース、『リトル・ウォルター』がやってるドラムもベースもピアノもギターも入っている様な編成じゃなくてね。
ちょっと田舎で、あの『サニー・ボーイ』のレコードのジャケットあるやん、あれみたいに田舎の道端で、
ストリートで演ってるみたいな、素朴な感じのブルースがやりたなあと思ってたし。
田舎のブルース、かと云って、あの、だらしないんじゃなくてね。
とにかく、ブルースの原点に戻りたい戻りたいっていうは僕の中心に有るから、一人吹きも演ってみたいというのがあったんやな。
_:それは、いつ頃からですか?
妹尾:大昔から。
僕が本格的に黒人ブルース知る前から『サニー・テリー』と『ブラウニー・マギー』の生ハープとギターのコンビの
レコードも大好きで聴いてたし、カッコええなあ!と思ってたの。
それから『リトル・ウォルター』や『マディー・ウォーターズ』みたいなシカゴブルースのバンド演奏に入っていったからね。
で、『サニー・ボーイ』とかさ、ものすごく素朴やんか。『サニー・ボーイ』の古いのなんか、知らんか?
_:『サニー・ボーイ』がギターと二人で演ってるのは聴いた事がないですが。
妹尾:いや、そういう訳じゃないけど。
_:バンドでですか?
妹尾:もっと、いなたーいのな。
_:『サニー・ボーイ』の古い頃の演奏は泥臭いですよね。
妹尾:そうそう、泥臭いの。
だからベースギターが入ってない様な感じ、ギターも1本しかなくて、ハーモニカとドラムみたいな。
音も古い古い感じで。
『サニー・ボーイ』は歳取ってきて、だんだんハイカラに成ってきたから。
だから、大学生のフォークソング研究会の頃からバンドブルースも聴き、フォークブルースみたいなのも聴き
要するに生ギターとハーモニカみたいなのも聴き。
それから『ロバート・ジョンソン』みたいなギター弾き語りの黒人ブルース。
そんなんで、もう本当に素朴なやつがいっぱいあるの。
で、そんなのも、ええなあ思ってな。それだけじゃなくて、ハーモニカの吹き語りのレコードも、その頃手に入ってて
「ああ、これも面白いな!」って、なんせ面白いな思ったの。
バンドでカッコ良く盛り上がるのも好きで、それはバンドの皆と力合わせて練習して頑張れば出来るけど、
一人で演奏して味が出るようなカッコ良さがブルースのカッコ良さに思えたから、将来も演りたいなあとずっと念願だった訳。
だけど、アメリカ人でも表立ってはハーモニカのソロだけのCDを出した人はいないでしょ。
ハーモニカだけ一人で吹いて歌って演ってる形のCDなんて、誰も買わないと思い込んでたのね。
でも、そういう世間で受け入れられない事をやりたいっていうのが有ったから、
ワガママっていう言葉を付けて『Wagamama CD』というタイトルにしたの。
_:『Wagamama CD』を作る8年くらい前だったと思います。
妹尾さんが自費で『わがままCD』を作ろうとしてましたよね。
ジロキチのマスターの荒井さんのディジュリドゥと一緒に演ったのと西濱哲男さんとの演奏のテイクが
それぞれ十いくつか二十近く有ったかな。
沢山有って、聴き比べるのにとても苦労しました。
他のミュージシャンともレコーディングするつもりでいたのですが
CDを作る資金にまわすお金が無くなり、妹尾さんの体力も気力もどん底の時期でしたので、
途中のままになってました。
そのテイクを聴かせて貰った時、私は初めて『わがままCD』と名付けている事を知り、
妹尾さんらしいCDの名前だなぁ~と思いました。
そのCD名がとても気に入ったので、なんとか形にしたいと思いましたが、
録音した演奏にはいいのがなくて諦めていました。
その後、妹尾さんが一人で、壊れかけのボロボロのMDウォークマンで録音した演奏、
友人宅のお風呂で湯船に浸かりながらの演奏や、名古屋の練習スタジオでの演奏を録り溜めたのを聴いて、
「一人の演奏もいいなあ!」と思い『Wagamama CD』を作ろうと決めたんです。
私が撮った写真の中からジャケット写真を選び、「もう、ジャケット写真も決めちゃったから!」とやや強引な態度で妹尾さんに云うと
その日、一晩で選曲してジャケットを作り、『Wagamama CD』作っちゃったんですよね。
妹尾:うん、そうやったね。
_:妹尾さんが当初作ろうとした『わがままCD』は、誰かと一緒に演奏した曲も入れようとしていた様ですから
今話しを聞いて、ハーモニカと歌の演奏だけをCDにした『Wagamama CD』を作る事を妹尾さんがすんなり承諾してくれたのは、
まるで奇跡的な出来事だったのかもしれませんね。
私の中には演奏が良ければ、一人でのハーモニカの吹き語りCDを作る事は何の違和感もなく、
特殊であるという考えは全くありませんでしたから。
でも、その時は第三弾まで続くCDに成るとは想いませんでしたが.....
なんとも嬉しい事です。
_:今回の『Wagamama CD-3』のレコーディングはどうでしたか?
一日目は音が決まらなくて苦戦しましたが、だんだん演ってくうちにいい感じに成ってきて…
二日目は13曲も録音しましたが、前日よりも妹尾さんが元気なので皆びっくりしてたんですよ。
妹尾:一日目、凄い疲れたって訳でもないんだけど…
まあ、疲れてたね。
_:たくさん歌った訳ではないのに、声が枯れてきたのでちょっと心配でした。
二日目はたくさんの曲を演ったのに元気で、やはり楽しかったのかな?
妹尾:そうやな。
_:それで三日目は、スネアやコーラスを入れていったらドンドンいい感じになって
予想以上に楽しいCDが出来そうで、みんな「ウワーッ!」って喜んで興奮しましたね。
妹尾:そうそう、そのリズムを入れるのを、「スネアだけ!」って決めてたやん。
その理由もワガママっぽい。
ドラムセット組んで、ドラムでリズムを入れるという発想じゃなくて、ほんとにもうスネアだけ!
♪シャカシャカシャカシャカ♪ ブラシで演りたかった。
そういうレコードって、あんまりないし。
_:私が「ドラムもいいと思うんですけど」と云っても、「スネアだけ!」と譲りませんでしたものね。
スネアをブラシで演ったのを聴いたら、凄く良かったですね、
妹尾さんのイメージは流石です。
妹尾:そうそう、僕の感覚、イメージなの。
ストリートで演ってる感じ。
つまり、ストリートで演るって事は、要するにバンドメンバー全員揃って演奏したいにしても、
その時その時で出会ったやつと「ちょっと演ろうぜ!」みたいな感じで、何人かが集まって演るという。
編成はちゃんとしてない訳よ。それでもブルースは出来るんだよね。
そういう遊び的な要素が有るものも、僕はやりたかった事の一つやから。
だから、ドラムセットがなくてスネアしかなくても、それで演りたくて演ってるみたいな演奏。
そういう音を残したかったというのもあるな。
今回はエレキギター2本入った曲が多くて♪ジャッジャ・ジャッジャ・ジャッジャ・ジャッジャ♪ってリズム刻む音も
のってくるとさ、元気に成って大きい音に成ってくるやん。
ブンブンって口ベースを入れたいなあと思ってたけど、もう入れないでいいなあと思ったのね。
_:そうですね。
ギターだけで充分でしたね。
妹尾:充分って意味じゃなくて、人の声でブンブンって入れても、あんまり効果がないだろうと思って。
他の音が大きいから。
_:もう、ブンブンの役はギターが果たしてくれてましたからね。
妹尾:そうそう。
だから、もう、音的には要らんなあと思って、入れなかったの。
曲によって、ギター1本とハープと歌だけで演るのは当然有りやんか。
でも、ギター2本有った方が形に成る。
だから、ちょうど二人居たから良かったよね。
_:ギターが二人だと、一人が自由にいろいろ弾けますからね。
妹尾:そうそう、そうそう。
そういう意味では、楽器が全く揃わずに町でブルース演ってるよりは、もうちょっと形をつけたかったという事があるわな。
_:そうね、なんか、ブラッと来て遊んでるだけの演奏で終わってないですよね。
妹尾:うんうん、終わってない。
だけどな、このCDはベースが、エレキベースもウッドベースもまるっきり入ってないじゃない。
で、ブラシも、スネアも、入ってる曲ばっかりじゃないしな、それはそれでいいかな、と思ってね。
_:ブラッと来た仲間とストリートで遊んでるレベルの演奏ではないですよ。
妹尾:勿論、そのレベルじゃないの目指してるからね、当然。
_:それどころか、ちょっとしたバンド編成の演奏に負けないですよ。
妹尾:そう、それがやりたかった事よ。
それがやりたかったの、当然。
僕は昔から言ってる事なんだけど「ブルースは一人でも、二人でも、三人でも……….十人でも、百人でも演れる!」
そういう事を示したい! 世間に示したい! という気持ちが有って『Wagamama CD』を作ってるんやね。
「あれ?ベース入ってないじゃん!」ってさ、世間に云われてもさ、いいのいいの。
まあ、なんせツインズの二人は人間も好きだけど音も好きなのね。
だからね、やりたかったのね。 やって良かった。
_:音楽に対する姿勢が妹尾さんと似てるとこあるんですよね。
妹尾:そう、似たとこある。共通項あるのよ、うん。
それに、色がついてないの、間口が広いというか。「俺はこれでなきゃ嫌だー!」っていうのが。いい意味で無い。
彼らのライブ、しょっちゅう観に行ってるけど、いろんな曲取り上げてるもんね。
カバー曲も凄く幅広く演ってるし、オリジナル曲も演ってるでしょ。
歌がいいしね。 雰囲気あるし。 ギターもいいし。
_:音楽に対して、一生懸命で誠実な感じがしますね。
私は三人のライブに行くと、何しろ三人が一緒に歌うのが凄く楽しくて、そして明るくて元気で…
こういう楽しさが一杯のCDが作れたらいいなあと思っていたんです。
そしたら本当に、そんなCDに成ってきたのでね。
妹尾:『Wagamama CD_2』とは、まったく違った雰囲気だからね。 『2』も良かったけどね。
『Wagamama CD_2』の方は、もう、ハーモニカがバーン!と出てね。
ええ感じのハモニカがメインになって。
_:今度のCDはブルースの楽しさですからね。
妹尾:そう、ブルースね、そうそう。
ま、だから、俺もハモニカの音色はあまり気にしなかった、たぶん。
ブースを別々に分けて、別々の部屋でね、音を分離して、あとでやり直しが出来るような録り方じゃなく
「せーの!」でね、一緒に演って、失敗したら、またもっかい録り直しでね。
_:そうね。ライン録りも嫌だったしね。
妹尾:そう、ライン録りも嫌だったし。
全部ゼロから演るっていうのが、やりたかったの。
_:演奏したあと、二階の部屋に聴きに上がって「じゃあ、もう一回録ろう」という事に成って、
私たち四人全員が階段降りていくので、堀尾さんが「みんなで降りて行くのね」って笑ってたんだけど。
妹尾:あっ、そうか。
_:私は演奏しないんだけど、一緒にスタジオに入る様にしたのね。
たとえ、一人の演奏を録音するのであっても、何人かでスタジオに入って、いい雰囲気のなかでレコーディングして貰いたかったの。
写真も撮りたかったし、みんなの会話も聞いておきたかったんです、ジャケットに載せる文や宣伝ちらしを作る時役立ちますから。
妹尾:なるほどね。
_:いろいろなレコーディングに行った事ありますが、金魚鉢みたいな所に一人入れられる事あるじゃないですか。
妹尾:はあ、はあ、はあ、よくあるある。
_:あれはなんだか、外からみんなに見られて見せ物みたいになって、やり難そうじゃない?
妹尾:そうなんよ。
もの凄く緊張して、プレッシャー掛かるのよ。
_:そういう思いはさせたくないな、って思いましたね。
まあ、今回のスタジオ、金魚鉢に成ってませんでしたけど。
『Wagamama CD-3』のお勧めコメント、他にありますか?
妹尾:僕が昔からやりたいと思ってきた事の中の一つ、シカゴブルースっぽい流れの中で、ちょっと古めの時代の音が形になっているCD。
僕がブルースに持っている一番大きなイメージを『Wagamama CD-3』の中ではね、かなり出来たと思う。
あんな風なサウンド、こんな風なサウンド。あの曲を、またあの歌詞がとかね、
あの曲の歌詞が気に入ってるからね、この曲がいいんだとかも含めてね。
世間一般のブルースバンドが取り上げる様な曲は少ないと思うけど、
今現在、東京や大阪で聴けるブルースライブの雰囲気とはまた違う、素朴な感じをキープしたままのブルース。
ブルースっていうのは、元々素朴な音楽やと思うのよ。
派手に盛り上がろうとか、バーン!って演って楽しもうというライブが僕も多かったけど、
パッと観は、パッと聴きは「イェー!楽しいわあ!」って成らなくてもいいから
ブルースらしい渋さみたいなのを出せたらなあと、そういう意味で、ちょっと古めのタイプの田舎っぽいブルースにチャレンジしました。
『Wagamama CD-3』最後の曲は、ジャンベとブルースハープのオリジナル曲です。
妹尾さんは、この曲を聴いて、森が浮かんできました。暗い森で何かが踊っているイメージがしたと、
私は明るい森の中で小さな何かが踊っている感じ、楽しそうに踊りながら通り過ぎて行くのです。
人によって、いろいろなイメージが浮かぶようです。
ですから曲名は何かを限定する名ではなく、意味不明な曲名にしました。
『mooojas』ム~~~ジャス
あなたは、どんな情景が浮かびますか?