妹尾隆一郎が想い出を話している音源が見つかりました。
『想い出話しだよ〜』の元に成った音源です。
収録後すぐに隆一郎がパソコンに保存していました。
隆一郎が生まれてから小学生時代、中学生時代、高校生時代の三つです。
聞き手は私。
隆一郎とこんな風に色々な話しをした事が昨日のように感じられます。
2018年 9月 26日 妹尾菊江
隆一郎が中学生時代の話しをしています。
ゴスペル、黒人について、ビートルズなどの話しもあります。
2012年11月16日収録
(1)いろいろな音楽を教えてくれた先生
大阪教育大学附属池田中学校
この中学校の音楽の先生が、いろんな事を教えて下さったそうですね。
妹尾隆一郎の話
今でも名前を覚えてる。松村先生っていうんだ。
後で知ったんだけど、関西の音楽協会みたいな会の副理事長をしていたらしい。
僕は音楽が好きだったので、音楽の授業以外でも音楽室に松村先生を尋ねて
話を聞いたり、いろいろな質問をした事を覚えてる。
よく、クラシックのレコードを聴かせてくれた。
この頃は、もう既にLPレコードになっていた。
音楽室の校舎自体はボロボロで、ちょっと雨漏りがする様な、プレハブみたいな建物だったけど
スピーカーは三菱のダイアトーンのスピーカーで、ステレオで、ええ音してたなあ!
オーディオ愛好者の間では、誰もが知ってる有名なスピーカーで、三菱の初期の物。
本当に大きなスピーカーで、家具の様な形してて、二つ有ってね。
背の高さも、ちょうどタンスみたいなの。
このスピーカーで聴くと、もの凄くいい音してたね。
クラシック音楽の他にゴスペルも教えてくれた。
ゴスペルと云っても、今僕らが聴いている様な黒人の教会のゴスペルではなくて
ヨーロッパの教会音楽を聴かせてくれたの。
『キリエ・エレイソン』とかね。
そういう1500年代からある、ハーモニーの賛美歌ね。
バッハあたりからの教会音楽も、いろいろ聴かせてくれた。
パイプオルガンの曲をね。
それから、アメリカのゴスペルみたいな音楽。
黒人のゴスペルではなく、白人の教会に於ける賛美歌ね。
ヨーロッパの賛美歌はクラシックの様なラテン語などの曲だったけれど、
アメリカに渡ったら、新しく作曲されたアメリカ人の英語の賛美歌が歌われた。
その一つには、『アメージング・グレイス』があるよね。
『アメージング・グレイス』は、イギリスの船長が1700年代に作った曲で
アメリカ合衆国で愛唱された。
『アメージング・グレイス』の作詞者は、奴隷船の船長をしていた事を後悔して牧師に成り
その後、自分の教会を作って、のちに『アメージング・グレイス』が生まれた。
この曲はイギリスの移民と共にアメリカに渡ったんだよ。
アメリカ独自のキリスト教圏が出来始めて、それはプロテスタントがほとんどだった。
プロテスタントの人達が教会活動を盛んにし、アメリカで布教活動に勤めた。
今は、黒人のバプティスト教会で ♪ワ~~~~ン♪ っていうゴスペルをやってるけどね。
ゴスペルは音楽的に、黒人のソウルからきた物だと思われているけど、黒人のゴスペルは
一番新しいゴスペルなのね。
アメリカ国内に於ける植民地開拓時代に、みんなが働いて、そしてキリスト教に帰依して。
だから、賛美歌や聖歌を歌う時に、英語に訳されたものを歌う様に成り、どんどん英語に訳され
詞も曲も新しいものが作られる様に成った。独自の教会音楽を作り始めたのね。
松村先生は、そんなレコードも聴かせてくれたんだ。
1960年代、東京オリンピックの有った日本で手に入るクラッシック音楽関係の教会音楽としての
白人のゴスペル音楽を聴かせてくれたわけね。
たとえば、『ジェリコの戦い』とか。
_:『ジェリコの戦い』は聖書のお話ですよね。
妹尾:そう、聖書の話だね。
モーゼが、出エジプトを果たし、シナイの山に登って十戒を貰ったでしょ。
十戒を貰った後、安息の地カナンへ行こうとする。
カナンの地に着く前にモーゼは死んでしまう。
モーゼの後を継いだヨシュアがカナンの地に入って、一番最初にジェリコという町を攻めた。
その時の話を歌にしたのが『ジェリコの戦い』だね。
ジェリコからは、今でも紀元前7000年位の遺跡がでてるね。
で、話は、ヨシュア率いるユダヤ人達がジェリコの城壁を、なかなか攻め落とせなかったが
城壁の周りを7回廻ってラッパを吹いたら、城壁が倒れた。
そして、攻め込んで行ったという話ね。
旧約聖書に書いてある。
そのジェリコの戦いの後、ヨルダン川を渡って行く時に歌った歌が『Swing low, Swing chariot』
『ジェリコの戦い』
『Battle of Jericho』
Joshua fit the battle of Jericho
Jericho, Jericho
Joshua fit the battle of Jericho
and The walls come tumbling down
『Swing low, Swing chariot』
Swing low, Swing chariot
Coming for to carry me home
I looked over Jordan and what did I see
Coming for to carry me home
A band of angels coming after me
Coming for to carry me home
妹尾:村松先生が聴かせてくれた白人ゴスペルは、賛美歌として白人教会でも歌われていたし、
僕の歴史的観点からいくと、黒人の人達がメインに集まるバプティスト教会でオリジナル曲が作られ
その曲が、同じバプティストの白人教会にも波及して歌われていったのではないかと思う。
松村先生が聴かせてくれたレコードも、今と成っては良く判らないが、
たぶん、ニグロ・スピリチュアルを歌う、
何とかコーラスグループという白人の教会のクワイアだったのではないかと思う。
髭を生やしたリンカーンみたいな顔したおじさんが親分で指揮して、みんなで歌うんだ。
そんなのが、昔、僕が子供の頃に日本でも放送されたよ。ちょっとヒットしてたよ。
丁度、僕が中学の時に親父が白黒テレビを買ったので『アンディ・ウィリアムス ショー』とか
ディズニーがクラシック音楽に絵を付けたのなんかも見てたよ。
そして、ビートルズが出てきたの。
ちょっと話が長く成ったけど、やっとビートルズに行き着いた。
(2)今の自分に成った一番の原因は『ビートルズ』
_:ビートルズを初めて知ったのは?
妹尾:テレビ。
日本に来る前で、イギリスやアメリカで演奏してるのをテレビで見たの。
ビートルズが凄く話題に成っているというのを初めて見た時、
僕は「父ちゃん、こいつら不良やなあ。こんな人あかんなあ。」って言ってた。
髪の毛は長いし。当時はあれでも長かった。
しかも、♪ジャカジャカ ジャカジャカ……….♪やってるしな。
今までの音楽と全然違うやん。
ディズニー音楽とか、アンディ・ウィリアムスとかさ、ゴスペルと違うもん。
しっくりこないもん。
中学2年か3年の頃に、親父が、FMラジオを買ってくれたのね。
『9600万人のポピュラー・リクエスト』とか、ソニーの『ベストヒットなんとか』という番組で
ベンチャーズや、ビートルズや、ビーチボーイズとかが大流行してて、
僕はラジオ聴いて ウォーーー!! ! と思ってた。
本来はクラシック音楽を聴きたいから、FMラジオを買って貰ったんだけど。
洋楽を聴く様になったのは
実は、中学2年の修学旅行先で、
友達に「妹尾くん、歌好きやろう。一緒にビートルズ歌おうよ!」と云われて。
「俺、ビートルズなんか嫌いや!」って云ったんだけど、「でも一緒に歌おうよ。」って誘われたので
仲間やから仲良くしようと思い、一緒に歌詞カード見ながらメロディーを教えて貰って歌ったの。
英語は小学生の時から習っていたから発音もバッチリ出来たし、とっても楽しかった。
それから、その友達の家でビートルズのレコードを掛けて練習したりして、
どんどん好きに成って、どんどん面白く成って、「いい曲だなあ!」と思う様になったの。
_:ビートルズの歌詞カードを見て、意味もすぐに解ったんですか?
妹尾:うん、解ったよ。
僕は中学校以外でも、英語専門の塾に通ってたし。親父が行かせてくれてたの。
その塾は、いろんな学校から英語の好きな生徒が集まってきていた。
小学校の時から英語を勉強してたから、中学校1年や2年の英語の授業は簡単過ぎて、つまらなかった。
ビートルズの歌詞で、どうしても意味の解らないところが有ったので
中学校の英語の先生に、授業が終わってから質問したら、「先生にも解らん。」って云われた。
それは『Please Please Me』
今なら解るけどね。
最初のPleaseは、お願い。次のPleasehaは喜ばせる。
『お願い、僕を喜ばせて下さい』 僕に何か甘い言葉を囁いてよ。っていう意味が隠れてる。
Please Please me oh yeah like I please you
他の歌詞は、だいたい解った、そんなに難しくなかったね。
ビートルズの曲の歌詞には黒人英語が、よく使われていた。
『Ticket to ride』などはその典型やね
まあ、そんな風に、ブルースとの関連が、いっぱい出てくるね。
今の自分に成った一番の原因は、ビートルズやね。
それで、音楽がどんどん好きに成っていったから、レコードプレーヤーを小遣いで買って、
当時、5000円位だったかな。
LPレコードを載せると、はみ出す様な小っちゃいレコードプレーヤー。シングル盤しか掛からない様なの。
その頃はシングル盤のレコードを1枚か2枚買って聴いてたね。
初めて買ったシングル盤のレコードは ブレンダ・リー の『霧のサンフランシスコ』
テレビでもやってたし、好きな曲だったなあ。
その次に買ったのが4曲入りのレコードで、シングル盤と同じ大きさの33回転で、
A面に2曲 B面に2曲入っているの。
ロー・グリーンという人の ♪ローレン、ローレン、ローレン……..♪
テレビで毎週やってた『ローハイド』
その後、ビートルズのLPレコードを買う為に昼飯食べずに昼食代を貯めたの。
LPレコードは、1750円だったのが、すぐ1800円に値上がりして。
ある日、LPレコードに付いてた歌詞カードを勉強机に置いて、その上にノート置いて隠して、
勉強してる振りしてたの。
レコード掛けてイヤホンで聴きながら、歌詞カード見て小っちゃい声で歌の練習してたら
夢中に成って、親父が来たのに気付かなかった。
親父が「何してんねん!」ってレコードを割られたの。
当時、お昼御飯代200円か250円を貯めて、やっと買ったレコードだった。
ビートルズ以外のレコードも買ってたからね。
その日はプレーヤーに載ってたビートルズのレコードを、バーーーン!って割られたの(涙)
アンディ・ウィリアムスのLPレコードも持ってたよ。
それから、サム・クックも有ったし。
_:あら、サム・クックのレコードも買ってたんですか。
妹尾:当時、サム・クックは黒人って知らんかったもん。ヒットしてたんよ。
それから、オーティス・レディンもな。
英語の早口ことば
中学3年生の頃、アメリカに行ってた経験の有る人が英語の家庭教師で来てくれて教えて貰ってたの。
いろいろな英語の発音の練習で、早口ことばを教えてくれたのが面白かった。
Peter Piper picked a peck of pickled pepper
She sells sea shells on the sea shore
この二つは、今も覚えてるよ。
でも、何か役にたったのかなあ?
_ライブに来て下さったアメリカ人のお客さんに、
「英語の発音がいいね、歌詞が解り易いよ」とか「アメリカの何処で活動してたの?」なんて
言われた事が有るくらいですから、この早口ことばを練習したおかげかもしれないですよ。
2013.5.13.