~「途切れた夢のつづきを取り戻したくなって」(「若者のすべて」)~
オヤブン村上、史上6人目の通算200打点達成!!巨鯨ビッグ櫻町・バズーカ山下熱投!ノーガードの打ち合いで雨中の熱戦!
最高気温27度とついに秋が訪れた大泉中央公園で、男たちの熱い思いが爆発した。折からの小雨が時おりふる天気でグランド状態も悪く、通常より早い午後5時に照明塔に灯が入るなかでプレーボールとなったチャオズ戦は、助っ人秋野くんを含めたビッグアプセットナイン9人、さらに投手陣がいずれも欠席のなか、櫻町が志願の先発、この追い込まれた状況で還暦超えの最年長組がぬかるむグランドで熱い奮闘をくりひろげたのだ。
志願の先発の櫻町、初回はいきなりビッグアプセット守備陣からの洗礼をあびるが、3点を献上しつつもアウト3つをいずれも三振で奪う熱投をみせる。今年すでに1イニング無失点のピッチングをみせていた櫻町、伸びのあるストレートだけでなく、ときおり見せるスライダーに相手ベンチからも警戒の声があがる見事なピッチングだ。
櫻町の熱投に応えたいビッグアプセット打線に火をつけたのも櫻町その人だ。2回表、先頭櫻町が外角低めのストレートをジャストミートするとこれが左中間を破るツーベース、これで火のついたビッグアプセット打線は、つづく鈴木秀紀がライト前に弾き返しチャンスを広げると、つづく木全のサードゴロが相手エラーを誘い1点、さらにワンアウトから村上のセカンドゴロの間にさらにもう1点を追加、さらに木全を3塁に置いて1番谷上がセカンド強襲タイムリーでさらに1点を追加し3-3の同点だ!
しかし2回裏、櫻町はワンアウトから連続ヒットにフォアボールとランナーをためたところで、またしてもビッグアプセット守備陣の洗礼を受けこの回6点を献上、しかし櫻町は2イニングで9点を失うも自責点はゼロ、バック全員から声をかけられ仁王立ちする櫻町、その情熱をこのマウンドにぶつけたのだ。
ここでビッグアプセットナインも覚悟を決めた。自責点ゼロの櫻町を敗戦投手にするわけにはいかない、こうなったらノーガードの打ち合いだ、3回表先頭の芝田がフォアボールで出ると、ワンアウトから鈴木秀紀がまたしても鮮やかな流し打ちのライト前ヒット、さらに木全もレフト前ヒットでつづきワンアウト満塁、するとツーアウトから満塁で登場したのがオヤブン村上、この日最初の打席で打点を記録し通算200打点まであと2と迫ったこの場面で村上は渾身のフルスイング、これがレフト頭上を襲う快心のヒット!鈴木秀紀、木全が相次いで生還し2点をゲットし、これでオヤブン村上の史上6人目の通算200打点達成だ!
オヤブン村上の快心のタイムリーで一気にヒートアップしたビッグアプセットベンチ、さらに1・2塁のチャンスで1番谷上がフルスイング、これが快心のジャストミートのライナーで右中間を襲う、2塁から大河原が、さらに1塁から村上が決死の走塁でダイヤモンドを駆け巡り、いずれも生還する谷上のタイムリースリーベースとなりこれでさらに2点を追加だ!2点差まで迫って押せ押せのビッグアプセット、つづく秋野の内野ゴロが相手エラーを誘い谷上が還りついに1点差とすると、3番山下がピッチャー強襲のヒット、そして4番芝田がセンター前に弾き返すタイムリーで秋野がホームインしついに9-9の同点だ!先発で奮投する櫻町に洗礼を浴びせまくったビッグアプセットナインが怒涛の攻撃でこの回で降板の決まっていた櫻町の負けをついに消したのだ。
同点においついたビッグアプセット、村上監督がつづいてマウンドに送ったのがバズーカ山下だ。山下といえば誰もが知っている昭和60年代前半に神宮のマウンドに君臨、長嶋一茂(ヤクルト)、矢作(日本ハム)、大森(巨人)、黒須(ビッグアプセット)などと覇権を争った名投手だ。ビッグアプセットでは豪打と攻守の外野手として活躍していたがこの日チームの危機についに立ち上がりマウンドを踏んだ。時おり降る雨にぬかるむマウンドというコンディションで苦難のピッチングとなるが、その流れるようなフォームは全盛時代そのものだ。栄光の神宮球場とは違う雨の大泉中央公園のマウンドでも、バズーカ山下は渾身のピッチングで両軍ベンチをうならせた。
試合はノーガードの打ち合いのまま敗戦となったが、小雨と湿気のなか、9人ちょうどで奮闘したビッグアプセットナインは全身汗だくで悔しさと爽快感で一杯だ。オヤブン村上の通算200打点は、櫻町、芝田、山下、石井、西村につづく史上6人目の偉業だ。2004年5月22日、多摩川田園調布緑地グランドでのランナウェイズで記録した1打点目から、足掛け22年間ビッグアプセットに得点を与えつづけた村上、ビッグアプセット監督を務めること2度、つねにビッグアプセットの要のポジションでマスクをかぶり続けた村上の、終わることのない夢の続きを追いかける旅はこれからもつづく。
志願の先発の櫻町、往年の神宮のエース山下の両投手の熱投は、グランドに足をとられつづけたビッグアプセットナインの胸を熱くした。ふたりの歩いた道のりは違うが、若き日に途切れた夢のつづきを追いかけてマウンドに上がる緊張感、マウンド上でバッターと相対したときの震えるような感覚は、いくつになっても終わることにないベースボールの夢だ。ふたりの背中からパワーをもらったビッグアプセットナイン、マルチヒットの谷上、鈴木秀紀をはじめこの日打線も10安打を放ちぬかるんだダイヤモンドを駆け回った。
熱く火照った心を癒すのは、あの池袋西口の名店しかない。タクシーと西武池袋線に分乗し東を目指すビッグアプセットナイン、たどりついた名店で円卓を囲み、生ビールが次々にオーダーされ、絶品餃子が大量に消費され、紹興酒をあおりながら互いの奮闘を称えあう。夏の終わりがついに見えはじめ、シーズン終盤に突入する実感を感じるビッグアプセットナイン、櫻町と山下の熱投に心を熱くし、村上の偉業達成を祝い、残りのシーズンでも夢のつづきを追い続けよう、そう思いながらあの頃と同じ空を見上げながら池袋西口をそぞろ歩くビッグアプセットナインであった。
【監督コメント】
雨模様の天気の中、できるかできないか微妙な感じ。
ほぼロートルメンバーでこちらは9人、相手チームさんも8人。入った点は、両軍合わせて23点だったか……。そのうちの、所謂、自責点ていうやつは、多分、半分以下だったと思う。
要は、最近ではほとんど投げていない櫻町と山下のピッチングはそれだけきちんとしていた。
まぁ、負けてはしまったが、新たな可能性が見えた、いい日、いい一戦だった。