※良い音ってどんな音?
何方もが思っていながら答えが見つからないのが、「良い〇〇ってどんな〇〇?」と言う疑問だと思います。
善し悪しの判定は、必ず基準となる物が必要です。
音に関して言うと、Dー10バッキーにFE108EΣを装着した方からは、「10cmの口径からよく低音が出る」と言う評価がある一方、「低音が出ないので専用設計で箱を造って欲しい」と言う要望を頂きます。
「低音が良く出る」と言った方は、今までに聴いた中でDー10バッキー+FE108EΣが最良で、「低音が出ない」と言った方は、さらに高性能なスピーカーの音を知っているからなんです。
今から30~40年前は、チョット大きな電気店ではオーディオの試聴コーナーを設けているお店が多数ありました。
そんなお店によく通っていた方は、少なくてもDー10バッキー+FE108EΣは「よく低音が出る」とは絶対に言わないはずです。
低音が出ないからDー10バッキー+FE108EΣが悪いのか・・・と言うと、そうとは限りません。
切れの良い中高音は、10cmユニットのフラッグシップにふさわしい、とても綺麗な音です。
よって聴いている方がそれで満足していれば、それが良い音なんです。
但しそれはスピーカーユニットその物の音であって、低域の拡大が出来ないバックロードホーンエンクロージャーは、不具合を増やす要因になりうるこそあれ、ほとんどバックロードホーンの本来の役目を果たしていない事を認識しておかなくてはなりません。
また、録音されている音が忠実に再現されているかと言う質問には、どんなスピーカーでも「YES」とは絶対に言えません。
逆に「YES」にするにはオーディオルームも含めて多額の投資が必要になる事も視野に入れる覚悟が必要です。
どこで妥協するか・・・なんですよネ。
また、こんな事もあります。
液晶TVが普及する以前のブラウン管TV時代、友人の家のTVの色がやけに赤っぽかった、なんて経験はありませんか?
これは人間の感性の曖昧さなのか、優れた適応能力かは判りませんが、友人宅のTVの色がそのお宅の方には標準的な色に見えていたのです。
これはスピーカーの音にも言える事で、聴き慣れた音は何の違和感もなく標準的な音に聞こえているのです。
そこに異質のスピーカーが入ると、ある人は「聴きにくい音」だと言い、ある人は「綺麗な音」だと言う相反する感想を聞く事があります。
聴き慣れた音から離れると「聴きにくい音」、聴き慣れた音より好みの音であれば「綺麗な音」と表現するのではないでしょうか?
聴き慣れた音と好みの音、これも「良い音」の条件一つになると感じます。
実はこの事が災いし、バックロードホーンエンクロージャーを造った本人が自己満足で良い音だと評価してしまうと、その音が一番良い音だと勘違いしてしまう「思い込み」が生まれます。
私が落札頂いた皆様に、音出し後のご感想を伺う理由は、この「思い込み」を排除するためなのです。
一般的に良い音と言われるスピーカーは、「低音も高音も良く出る」だけでは無く、バランスの取れた音なんだと思います。
周波数特性を測る方法に「ピンクノイズ」や「ホワイトノイズ」等がありますが、どの周波数帯でも同じレベルの「ホワイトノイズ」が綺麗に再生される(グラフに凸凹が無く帯域が広い)物が理想と考えます。
先日Dー10バッキー+FE108EΣの周波数特性を計測してみましたが、低域の再生限界は70Hz止まりでけして優秀とは言えないレベルですが、それより深刻な問題は200Hzより僅か下に大きな谷が有る事です。
ギターの音で表すと3弦の開放の「ソ」の音になりますが、その音が極端に小さく聞こえます。(これは大問題です)
元々Dー10バッキーはスピーカーユニットのQ0値が0.2以下の高能率ユニット向けに開発された物で、Q0値が0.3のFE108EΣに対してはスロート断面積や空気室容量は大き過ぎるのが問題です。
更には中高音をホーンに送らない様に空気室に入れる吸音材も、一番音圧のかかるスピーカーユニットの背面にはスペースが無くて入れられず、それが影響してホーンから逆位相の200Hzが出ていて大きく鋭い谷(ディップ)を作っていると推測されます。
WBC優勝&MVPの大きな谷はアッパレですが、周波数特性での大きな谷は歓迎はされないでしょう。
聴き慣れた音だからこれで良いのダ・・・、と言ってもこれだけは感心できません。
「良い音ってどんな音?」と言うテーマで話してきましたが、最後に結論を言うと長時間聴いていても疲れない音で、自分の好みに合っている物、そして特性がフラットで、特に水の音や鳥の囀り、風の音という自然の音が違和感なく聞こえるスピーカーが理想のスピーカーではないでしょうか。(自然由来の音は一般的に帯域が広くフラットな特性と言われています)
そして機会が有れば、是非最高峰と言われ、音が良いとされるスピーカーの音を聞いてみて下さい。
私は40年ほど前に聴いた「TANNOY Autograph」の音を今でもしっかり覚えています。
良いものは一度聞くと忘れられないものだと私は強く感じます。
最後に宣伝させて下さい。
私の造っているバックロードホーンエンクロージャーは、先にサイズを設定し、それぞれのスピーカユニットに最適な構造を試作と測定を繰り返しながら探り、完成形に近づけて行きます。
スピーカユニットの潜在能力をフルに引き出す為、他には例の無い手間と時間をかけ、納得のデキに仕上がった物を、これまた時間を掛け塗装を施して出品しております。
この拘りの塊みたいなバックロードホーンエンクロージャーを、是非音楽のお供に加えてあげて下さい。