※バックロードホーンエンクロージャーを選ぶ時の注意点

最初にお断り致しておきますが、スピーカーの諸元を無視して造った物であっても、嘘偽りの宣伝文句を掲載していても、出品も落札も個人の自由であるからして否定する物ではありませんが、皆様には偽物を手になさらない様、くれぐれもご注意頂きたくお願い致します。

また、以下の内容は一般的常識や実験の結果得られた情報も含め、バックロードホーン製作に携わる者にとっては知っていて当然の内容で、特定の商品や出品者を攻撃する目的で掲載した物では無い事を付け加えておきます。


①同口径の「複数のスピーカーユニットに対応」と謳っている商品

「何故スピーカーユニットの特性がエンクロージャー選びに必要なのか?」で説明していますが、スピーカーユニットは型番が変われば、諸元のQ0値(共振先鋭度)も変わります。

そのQ0値(共振先鋭度)に対応したスロート断面積と空気室容量でないと、スピーカーユニットの振動板に負荷(ロード)をかける事が出来ません。

詳しくは「バックロードホーンの原理」をご覧下さい。

ロードが掛からなければ最低共振周波数(F0)より低い周波数を拾い出す事が出来ないばかりか、スピーカーユニットその物の性能をスポイルする結果になる事も少なくありません。

「FE108EΣ、P1000Kなどの10cmユニットに適合します」とか「FE-166En / FE-165Wk / FE―166NV 対応」「口径の合うユニット」等と書かれた商品がこれに当たります。

適合と謳ったスピーカーユニットを実際に全て装着して試聴すれば、その間違いも判るはずですが、それすら行っていないと暴露している事と同等です。

詳しくはQ0値(共振先鋭度)に適合したエンクロージャーと、適合しない場合とで周波数特性を比較し、説明を加えたページがありますのでこちらをご覧下さい


②有名機のコピー商品

設計当時のスピーカーユニットが現存していれば問題はありませんが、モデルチェンジを行った後に当時の物と諸元が変わってしまっている物がほとんどです。

有効振動板半径やQ0値(共振先鋭度)に変更が無ければ、ほぼ同一と考えても良いと思いますが、検証がされていないために完全一致とは言えず、賭けになるかも知れません。

当然、諸元(特にQ0値)が変わっていたら、適合する確率は格段に低くなります。

また設計当時のスピーカーユニットが現存していたとしても、劣化が激しかったりコーン紙の塗装等、スピーカユニットの状態によってはQ0値(共振先鋭度)に関わるQms(機械的共振) が大幅に変化している物がありますので、特に注意が必要です。

詳しくはこのページの下方、「⑲スピーカーユニットの再生品にご注意下さいで解説していますので、合わせてご覧頂く事をお願いします。


人気商品の中で特にご注意頂きたいのが「D-10バッキー」です。

長岡氏の設計図を基に計測したスロート断面積と空気室容量から逆算すると、実効振動半径(a)は40mmでQ0(共振先鋭度)が0.2以下、更にクロスオーバー周波数を250Hzで設計したと言う事が判ります。

現在10cmユニット(実効振動半径(a)は40mm)でQ0(共振先鋭度)が0.2以下の物は販売されていません。

唯一「FE108EΣ」が適応とされていますが、Q0(共振先鋭度)が0.3ですのでD-10バッキーではスロート断面積が大き過ぎ、ユニットの振動板にロード(負荷)がかけられず、スピーカーユニットの最低共振周波数(F0)より低い周波数を拾い出す事が出来ません。

振動板にロード(負荷)がかけられない物はバックロードホーンとは呼べないのです。

実際にD-10バッキーを試作しFE108EΣを取り付けた物で、周波数特性を計測した結果を掲示板「FE108EΣ専用機について」で、FE108EΣ専用機が出来るまでの経過とともに公開しています。

と言う事で、Q0(共振先鋭度)が0.3の「FE108EΣ」との組み合わせは、D-10バッキーに改造を施さない限りバックロードホーンとは呼べないただの箱にしか過ぎないのです。

また、Q0(共振先鋭度)が更に大きいFE103NV2等は、当然問題外と言う事になります。


バックロードホーンの詳しい解説は、「バックロードホーンの原理」「何故スピーカーユニットの特性がエンクロージャー選びに必要なのか?」をご覧下さい。


③周波数特性のグラフに騙されてはダメ

どんなに綺麗なグラフであろうと、良い音とは限りません。

実際に試聴が出来ないオークションでは、最終的には作成者が試聴し正しく評価している物を選ぶか、同機種を落札された方の評価を信じるしかありません。

周波数特性のグラフは、試聴された方の印象の裏付けとして添付されるのが一番です。

スマホの無料アプリでも周波数特性を簡易的に計測できる物があります。

「低音が良く出る」とか「高音が綺麗」なんて書くなら、計測結果を添付写真で載せてくれた方がよっぽど説得力がありますよネ。

スピーカーの音色にも流行がある様で、ハイレゾと言われ始めた頃から低音と高音が目立った「ドンシャリ」タイプを好まれる若者が増えているのも事実です。

私感ですが「ドンシャリ」はインパクトを感じる音ですが、流石に1時間聞くと疲れてしまいます。

むしろ高域は程々に、低域はなだらかに下がりながらも20~50Hz位まで伸びるタイプが聴き易いスピーカーではないでしょうか。

そんな特性も周波数特性のグラフからは、ある程度読み取れます。


掲示板での質問で、「開口部で低域特性が良いとされている物の場合でも駄作は有るのでしょうか?」と言うのが有りました。

また、開口部の周波数特性のみ公開し、あたかも低域まで聞こえる様な誤解を与える出品物も実存しています。

いずれも掲示板でお答えしていますが、実際のリスニングポイントに近い計測方法で測定されたグラフでないと、音の印象の裏付けにはなりません。

周波数特性のグラフは参考までに見る物で、それで性能が全て判断できる物では無い事を強く言いたいです。


④堅牢性や重厚感は非現実的

堅牢性や重厚感を前面に広告している出品を目にしますが、バックロードホーンの場合バスレフ型の様な背圧(スピーカー裏から出る音の圧力)を貯める必要がほとんど無いので、箱鳴りの起こらない最低限の板厚で十分な性能を発揮します。

生前長岡氏は、専用のオーディオルームを造って爆音で試聴していたと言うのですから、当時のFE168Σ(出力80W)をフルパワーでドライブさせるには堅牢性や重厚なエンクロージャーは必要だったのかも知れません。

しかも当時の風潮では「スピーカーは重たいほど良い」とされており、長岡氏も同調されたいたビルダーの一人だったとの事です。

ちなみに5W程度の出力でも十分に大きな音を出す事が可能なので、一般の家庭ではこれほどの重量は必要が無いと感じます。

見かけや重厚感をステータスと感じる方は別ですが、無理に重いスピーカーを運んで腰を痛めるほど不愉快な話はありません。

詳しくは「何故12mm厚の板なのか」で説明していますので、ご一読をお願い致します。


⑤知識の乏しいビルダーはボロを出す

以前、こんな説明がなされた出品がありました。

「Dー10バッキーはFE108EΣの為に開発された」と。

ちなみにFE108EΣの販売開始日は、2005年11月8日、長岡氏はその5年前、2000年に他界してます。

ですから「FE108EΣの為に開発された」と言う話は不可能な事で真っ赤な嘘なのです。



「D-10バッキーはFE108EΣが最適であり最も相性が良いとされています」と言う宣伝文を目にする事がありますが、どなたが言った言葉なのでしょう?

私の知る限りでは、試聴レビューを投稿する評論家は数多くおいでででも、「最適である」とか「最も相性が良い」等と言った論評は見た事がありません。

フリーソフトでも周波数特性が計測できる昨今、下手な事は言えない時代ですので、根拠の無い発言をしないのが評論家としての常識となっている様です。

当然この出品者も、何処からか聞いた事を真に受けて宣伝文に掲載されているのでしょうが、出所がはっきりしない以上、信憑性は全くありません。

事実、私がD-10バッキー+FE108EΣを試作し、周波数特性を測定した結果では、最低共振周波数(F0)より低い周波数を拾い出す事が出来ないばかりか、200Hzより僅か下に大きなディップが有る事が判明しました。

また、空気室内部の奥行きが45mmしか無いので正面バッフル板の厚が15mmのオリジナルサイズにFE108EΣを取り付けると、空気室の背面壁との隙間が3.5mmしか無く、一番背圧のかかる空気室内の背面に最適量の吸音材が入れられません。

以上の事からも、「最適である」とか「最も相性が良い」等とはとても言えないと言う事がお判りだと思います。

詳しくは掲示板「FE108EΣ専用機について」で専用機が出来るまでの経緯も含めて解説致しておりますので、興味を持たれた方は是非ご確認ください。



内部配線のスピーカーケーブルで米国製の「BELDEN 8470」を使用した出品作で、「高音もよく出る傾向」と言った様な曖昧な表現をされている方がおいででした。

高域特性が良いとされていますが、30~40cmの内部配線の長さでは、無酸素純銅スピーカーケーブルとの違いは試聴でも周波数特性を取っても変化は見られませんでした。



「重低音」と言う言葉を安易に使う出品者は、音響に対する知識を疑ってみても良いでしょう。

重低音とは20Hz以下の可聴周波数より下の周波数を指す言葉で、音と言うよりは振動で感じられるものです。

20Hz以下をスピーカーで再現するには30cmクラスのウーハーでも難しく、数十cmを超える超大型のウーハーで数百ワット以上のアンプでドライブしたり、ボディソニックと呼ばれる振動装置を椅子に仕込んだりと、簡単には再現できない周波数帯です。

バックロードホーンも含め、一般的なスピーカーでは20Hz以下を出せる物は皆無です。



先日Youtubeのあるチャンネルで「重低音」について議論になりました。

内容は以下の通りです。

音響学会などで「重低音」という用語はきちんと定義されてはいない。

ヤマハのサイトでは「便宜的」と断った上で20Hz~100Hz付近の低い帯域を「重低音」と呼ぶ。

日本オーディオ協会では通常耳にする楽器の低音に対し、それ以下の低音。音というより振動として感じられる。

と言う事で、「20Hz以下の可聴周波数より下の周波数を指す言葉で、音と言うよりは振動で感じられるもの」と言う事は間違いだと指摘されました。


確かに「重低音」と言う言葉の定義はあいまいです。

またヤマハに至っては「便宜的」と断った上で「20Hz~100Hz付近の低い帯域」と表現しています。

「便宜的」とは「その場の都合が良い様ににとりあえず物事を処理する様子」と言う意味で、「20Hz~100Hz付近の低い帯域」はヤマハとしての考えを表したものと考えます。。

現代語義を優先して掲載される「大辞泉」では、「重低音」を「通常耳にする20〜30ヘルツの低音に対し、それ以下の低音。音というより振動として感じられる。」と記載されています。

皆さんは「重低音」ってどんな音って聞かれたら多くの方は映画館で体験した様な身体に響く様な音を想像するのではないでしょうか。

実際にオークションの場でも、「重低音と表示されていたが、全く満足な低音が出ていない」と言うクレームを見る事があります。

これは多くの方が「重低音」=「身体に響く様な振動」と認識されている結果ではないでしょうか?

一般的には「大辞泉」語意「通常耳にする20〜30ヘルツの低音に対し、それ以下の低音。音というより振動として感じられる。」と言う表現を基準として考えても良いと考えます。

「大辞」は現代語義を優先して順に解説する現代語義優先方式で、その内容は一般的に認識されている語意を掲載している辞書という事ですので、私の表現も間違いでは無いと断言致します。


⑥「本物志向」とは「本物を目指す」と言う意味なので、本物では無いと認めているんでしょう。

重箱の隅は私の本意では有りませんが、謙虚な気持ちの表現なのか、あまりにも日本語を知らなすぎるのか・・・。


内部仕切り板に補強を入れて、できるだけ箱鳴りがしない様に・・・」と言う文言は大きな間違いで、箱鳴りは仕切り板では無く、スピーカーの箱を構成している側面や上面の板が振動する事で起こる現象です。

もし仕切り板に補強をしない事で箱鳴りが起こっていたら、それは何らかの欠陥が有ったとしか考えられません。

仕切り板の補強は接着強度を高めるために施す対策で、箱鳴りを抑制する働きは、ほぼゼロと言っても良いでしょう。


書籍等を参考にして、オリジナルで作った」と言うのは、どの設計図を基に、どう変更したのかが全く不明です。

同時にサイズの拡大や縮小・板厚や音道のレイアウトの変更・硬質ゴムの追加等、改造している物は改造前と何がどれだけ変更され、その結果どれだけ改善されているのか比較対象が無ければ何の意味もありません。


測定器が無いので、再生周波数特性はわかりません」と記載されている出品が有りますが、スマホのアプリでも簡易的ではあるものの測定は可能です。

再生周波数特性を公開していないと言う事は、「悪い特性が測定されたので公開出来ない」と疑われても仕方が無い事だと感じます。


1度試してください」とか「お試し価格」等と謳っていながら、1万円を超える価格では、試すには勇気がいります。

しかも中古品を除いて「ノンクレーム、ノンリターンで」と言う文言は、自分の作品に自信が無いと言う事を遠回しに言っている様に私自身は感じています。


ご希望のサイズに開口します」はバックロードホーンでは有り得ない事です。

バックロードホーンとはスピーカーユニットの諸元を基に、適正なスロート断面積と空気室容量を有し、スピーカーユニット単独では得られない最低共振周波数(f0)以下の周波数を、振動板にロード(負荷)を掛ける事で拾い出し、ホーンの単一方向性・拡大効果で開口部から放出する仕組みのスピーカーシステムです。

バックロードホーンで「ご希望のサイズに開口します」と言う案内は、バックロードホーンの構造原理を理解されていない方の発言で、密閉型やバスレフ型と同等と思っているとしか考えられません。

はっきり言って、バックロードホーンで「ご希望のサイズに開口します」と言う文言は絶対に有り得ない事です


⑫メーカー製のバックロードホーンエンクロージャーでも、対応するスピーカーユニットが実際のスロート断面積と空気室容量に適合するのかを確認する必要があります。

理由は上記同様、振動板にロード(負荷)を掛ける事が出来なければ、例えメーカー製でもバックロードホーンとは呼べません。


低音が良く出る」とか「高音が綺麗」等と言う宣伝文があります。

そう言うからには必ず比べる対象が必要ですが、具体的に「何と比べて」と言う表現が無い以上、現在お使いのスピーカーシステムより良い音とは限りません。

周波数特性等の添付による裏付けがあれば納得もできますが、根拠の無い文言は製作者側が言うべき事柄では無いと強く感じます。


⑭バックロードホーンは「低音を効率よく強調する」とか「中音域以下を非常に高い音圧で再生する」と言った文言で宣伝しているオークション出品者もおいでの様ですが、これは全くの間違いであり、バックロードホーンを理解されていない証となってしまいます。

バックロードホーンは適正なスロート断面積と空気室容量を有し、スピーカーユニット単独では得られない最低共振周波数(f0)以下の周波数を、振動板にロード(負荷)を掛ける事で拾い出す仕組みのスピーカーシステムで、低音域の拡大は出来ても低音の強調等は出来ない事をご理解頂けていない方の発言だと断言できます。

エネルギー保存の法則を考えれば、スピーカーユニット背面から放出された音エネルギーは、音道内で拡散や吸収に伴う減衰が無いと仮定したら開口部では同じ音エネルギーであるはずです。

イコライザー等の電気仕掛けの助けを借りない限り物理学上では不可能な事で、周波数特性さえ計測できていれば間違いであると判断できたはずです。

おそらくこの出品者は、バックロードホーンの動作原理を全くご存知では無く、本物のバックロードホーンの奏でる音ですら聞いた事がないのではないかと推測されます。

結果的にバックロードホーンの品位を下げている事を十分に理解して頂きたく思います。


⑮スピーカーユニットを指定したバックロードホーンエンクロージャーですが、何を根拠に特定のスピーカーユニットを指定したのか、そのデーターすら公表していない出品が多数存在します。

最低でもスロート断面積と空気室容量の記載は必要です。


⑯安価に騙されないで下さい。

ご承知の通り私も含めたビルダーは、材料を仕入れてスピーカーエンクロージャーと言う付加価値を付けて販売しています。

当然赤字を避けなければ、ビルダーとして成り立たないはずです。

価格を下げても成り立つと言う事は、今までどれだけの利益率を掛けていたのかと言う疑問です。

競られた末の金額の大小なら許せますが、以前落札された金額より大幅に安価で出品されていたら、高額で落札された方はどう思うでしょう?

公開されている設計図通り切って貼っただけで、スタート価格自体が「高過ぎるのでは」と思う出品は数多く存在しています。


⑰ご注意下さい「オークションの闇」

スピーカーユニット、又はスピーカーユニット付きのエンクロージャーやアンプ等を選ぶ際に、完全動作しない物を「動作未確認」として出品している物が実際に存在します。

当然ジャンク扱いで、ノークレーム・ノーリターンの出品とされていますので、価格相応か十分に考慮して下さい。

ジャンク扱いででも具体的に動作不良の個所や原因等が公開されている物を選ぶのが良いと思います。

特に注意する文言は「音出し確認済み」です。

スピーカーに限らず音を出す商品は、音が出たとしても異音を含んでいたり大きな歪が発生している場合がありますので、「音出し確認済み」は完全動作品とは思わない方が良いと思います。

最終的には出品者の評価で判断されるのが良いと思います。


また、「落札商品は委託先倉庫からの配送」等と謳った物を目にする事がありまが、評価を覗いてみると「Amazonから送られてきたが、Amazonでの価格の方が安かった」等と言う投稿を発見しました。

これは明らかに荒手の転売ヤーと言っても言い過ぎでは無いと思います。

当然手元に商品がある訳では無いので、Amazonで公開されている写真を流用するしか掲載する術がない訳です。

皆様におかれましては必ずAmazonで価格を確認の上、入札される事を強くお勧め致します。

簡単な見分け方としては、掲載写真はほとんどがホワイトバックで有る事です。

音響商品ではスピーカーユニット・アンプ等の新品出品が多い様です。


更には海外発送を含む送料金額の明示の無い、又は「落札後に知らせします」等の出品にもご注意下さい。

最近は少くなった様に感じますが、こういう出品に慣れていない方が多いカテゴリにスポット的に出品される方が存在します。

手口としては新品未開封の物を激安価格で出品し、落札後に高額な送料を請求するという、詐欺と思われても仕方のない手法です。

以前ヤフオクにも指摘をし排除されたはずですが、アカウントを変える等の手段で出品を繰り返している様です。

説明文をよく読み、低価格に騙されない様にくれぐれもご注意下さい。

後で騙されたと判ってキャンセルしようにも、「説明文に明記されている」と言う事で一切取り合わないのが常套手段の様です。

「落札後のキャンセルは認めません」とか、「〇〇%のキャンセル料を頂きます」等と説明文に書かれていれば詐欺として立件するのは難しいかも知れません。


⑱適合するとされるスピーカーユニット以外で製作者が試聴した感想は全く意味が有りません。

HP「※何故スピーカーユニットの特性がエンクロージャー選びに必要なのか?」で説明の通り、口径が同じでもスピーカーユニットであっても型番が変わればQ0(共振先鋭度)が変わります。

Q0(共振先鋭度)は、バックロードホーンの基本となるスロート断面積と空気室容量を決める最大の要素で、スピーカーユニットの最低共振周波数(F0)より低い周波数を拾い出す為に最重要となるバックロードホーン造りの基本中の基本と言える値なのです。

そんな訳で、他のスピーカーユニットで試聴した結果は何の意味も成さないばかりか、バックロードホーンの原理を全く理解していないという事を皆さんに晒している事になります。


⑲スピーカーユニットの再生品にご注意下さい。

詳しい説明をする前にスピーカーに関する諸元内容の一部を紹介します。

バックロードホーンに関して共振先鋭度(Q0値)がスロート断面積と空気室容量を決める最大の要素だと言う事は既に説明をしていますが、スピーカーの最低共振周波数(F0)における共振の度合いを表す定数でスピーカーエンクロージャーの設計では低域特性を決める大切な値でなのです。

このQ0値は、Qms(機械的共振)とQes(電気的共振)のトータルをQtsと表記している物も少なくありませんが、Qts=Q0と考えて間違いありません。


さて本題ですが、メーカー等の専門機関での再生を除き、素人が行った再生ではQms(機械的共振)が大きく変化し、その結果Q0値を大きく変えてしまう事となってしまいます。

バックロードホーンのスロート断面積と空気室容量はこのQ0値によって決められている為、Q0値が変化すれば同じスロート断面積と空気室容量では振動板に適切なロード(負荷)が掛けられなくなり、最低共振周波数F0以下の周波数を拾い出せなくなってしまう不具合が発生します。

これではバックロードホーンとは呼べず単なるバックホーンで、大きなエンクロージャーに折りたたまれた音道は何の役にもたたなくなり、エンクロージャーは邪魔な箱となってしまいます。


このQms(機械的共振)の値を変える再生内容の主だった物は、スピーカーエッジの交換や、コーン紙の塗装等、物理的に振動板の重さや動きやすさを変えてしまう行為です。

また同様に、経年劣化の激しい物や何年も通電していないスピーカーユニットも、Qms(機械的共振)の値が変化している物がありますので注意が必要です。


特に素人がやりがちの再生は、コーン紙をペイントで塗って見栄えを良くする事です。

フォステックスのユニットの場合、経年劣化でコーン紙が黄ばんでしまう事で塗色を考える方が多い様ですが、塗料の重量分がQms(機械的共振)を大きくしてしまい、特に高域の再生限界を下げてしまいます。

またユニット単体では最低共振周波数F0を下げる傾向になりますが、バックロードホーンとして考えた場合、Q0値が大きくなる事でスロート断面積と空気室容量を小さく加工する必要性となり、無加工で再生したスピーカーユニットを装着した場合は、最低共振周波数F0以下の周波数を拾い出せなくなってしまう不具合が発生します。

一般的にスピーカーユニット単体ではコーン紙を含む駆動系では重量が増せば低域特性は良くなりますが、反面高域は出にくくなる傾向です。

フォステックスの10cmユニットでフラッグシップのFE108EΣは、特に中高域の反応の良さが最大の売りですが、安易な塗装で1ランクも2ランクも性能が落ち、場合によっては普及版のFE103NV2より劣る性能になってしまう事が十分考えられます。


また多少の技術や知識がある方の中には、スピーカーエッジを貼り替える方もおいでです。

新品当時の素材と肉厚のエッジで接着剤も適正量で再生されていればまだしも、Amazon等で安価に入手できるゴム製のエッジ等の場合、柔らかすぎてしまう場合がほとんどの様です。

柔らかすぎるエッジの場合はコーン紙の塗装とは逆で、ユニット単体では振動板が動きやすくなり、高域特性は良くなる反面、低域は出にくくなる傾向です。


いずれの場合でもバックロードホーンはスロート断面積と空気室容量が適正値であるかが善し悪しの判断材料になりため、下手な再生を施したスピーカーユニットは避けた方が賢明でしょう。

もし再生をした、又は再生を要するスピーカーユニットを入手した場合は、密閉型やバスレフ型のエンクロージャーに装着して、スピーカーユニットその物の音を楽しむのが、間違いの無い選択になると思います。


バックロードホーンは他のスピーカーシステムとは異なり、非常に繊細なスピーカーシステムです。

僅かな特性の変化でも低域特性が大きく変わってしまうバックロードホーンですので、動作原理も含めてこの機会に「様々な疑問点」ご覧頂く事を強く希望します。


⑳音道の短い(ショートレンジ)バックロードホーンの注意点

音道の短い、と聞くと真っ先に小型のバックロードホーンを想像する方が多いと思いますが、口径が大きいスピーカーユニットを使用した物も意外と短いのです。

口径が大きくなればスロート断面積を決める要素の一つ「実効振動板面積」が大きくなるため、スロート自体が大きくなり、そこから続く音道の断面積も自ずと大きくなってしまいます。

それをコンパクトなエンクロージャーに納めようとしたら、音道は短くなってしまうのは何方でも想像が出来ると思います。(試作経験上音道は2m以上は欲しいです)


では、音道が短いとどんな障害が起きるのでしょう?

まずは低域特性の拡大が難しい事が最初に思い当たりますが、それ以上に深刻な問題は低域寄りの中域音が減衰せずにホーンから出てきてしまう事です。

ホーン構造をした音道は低域の拡大に寄与していますが、音道中で正相・逆相と周波数の違いで起こる位相変化を起こした音を開口部から出さない(または減衰させる)働きがあります。

もし、この位相変化を起こした音が開口部から出たら、スピーカーユニットの正面から出た音と干渉して周波数特性には大きな凸凹を多数作ってしまうのです。

一般的にこの現象で音が濁る事を「位相歪」と言って、バックロードホーンには出やすいと言われていますが、音道の短い(ショートレンジ)バックロードホーンは顕著で、聴くに堪えない音になってしまう事も少なくありません。

極端な例ではスピーカーの正面から出る音とホーンから出る音が逆位相の場合は音が消え、同位相の場合は音が大きくなる現象です。

また、位相が15度30度・・・と変わるに従って、スピーカーユニットの正面から出る音と干渉しあい、唸り等の本来有ってはならない様々な波形を作り出してしまいます。

その時の気温や湿度で発生する周波数が微妙に違いますので、特定の音源で耳で聞き分けられるかは疑問ですが、特定の音がうるさく唸ったり「ボンツキ」と言われるキレの無い汚い低音が出てくるのはコレが原因の一つと言われています。(同相)

また逆相の場合、特定の周波数の音が消える現象も起こりますが、これはスピーカーをアンプに繫ぐ時に片チャンネルだけ極性を間違えてしまった時に、中央で歌っているボーカルが消える事に似ています。

それが低域寄りの中域音の周波数で起こってしまうので、音に敏感な方でしたら物足りない音に感じてしまうでしょう。

ちなみにスピーカーユニットのf0(最低共振周波数)以下の周波数では、この現象は現れません。

解決策は中域音をホーンに送らない様に吸音材を多用する事ですが、肝心の低域の音圧まで減衰してしまうために本来低域を稼ぐ為のホーンが全くの無駄になってしまいます。

小型バックロードホーンを購入検討されている方は、特にQ0値の小さい高効率のユニットや、口径12cm以上のスピーカーユニットを指定したエンクロージャーは以上の様なリスクがかなりの確率である事を十分考慮して選ぶ事をお勧めします。

私の手掛ける小型バックロードホーンの試作機は、空気室容量やスロート断面積・吸音材の量や音道長を微調整を周波数特性の計測しながら繰り返し、低域寄りの中域音が位相歪を作らないレベルまで下げる事を最重点課題としています。


㉑設計図を忠実に再現した物でもスピーカーユニットの取り付けが可能であるかは不明

設計図やカタログのスピーカーユニット取り付け開口寸法だけを頼りに造った物の中には無加工でスピーカーユニットを取り付け出来ない物が実際に存在します。

例を挙げると、既に販売を終了している機種でフォステックスのFE108EΣは、カタログデーターでは取り付け開口寸法は100mmとなっていますが、両サイドに張り出したスピーカー端子が干渉し取り付けが出来ません。

FE108EΣを取り付ける場合は、8本の取り付け穴を避けた位置の対角に6.5mm程度のザグリを10mm程度の幅で加工する必要があります。

FE108EΣに限らず、設計図やカタログデーター等で忠実に再現したとしても、取り付けできなかったり工夫が必要だったりと、実際に試作機を造りスピーカーユニットを取り付けてみないと判らない物が多数存在するのです。

日頃から試作の重要性を語っていますが、開口に限らず完全に音出しが出来る状態まで完成しないと不具合に気付くチャンスも無く、ご落札頂いた方に余計な作業を強いる事になってしまいます。

実際にその様な可能性の高い出品もありますので、取り付け可能かも含めて様々な疑問点が検証がされているかの確認も忘れずに行う必要があると感じます。

実際に試作機も造らず、数値のみを頼りに製品を出品されている方がいると言う事は本当に残念な事です。

それで、「〇〇ユニット対応」とはよく言えたものだと、同じビルダーとして情けない気持ちになります。

ちなみに私の造っている出品作はスピーカーユニットを取り付け、音出しまで確認していますので安心してご入札頂けます。

追記

FE108EΣ用スピーカーユニット取り付け開口について 大きさやザグリの位置等を教えて欲しいと言うお問い合わせがメールで寄せられたので画像の貼りやすい掲示板でご紹介致 しております。掲示板

また掲示板にも記載致しましたが、FE108EΣの場合、開口寸法がカタログ値の100mmでも、8本の取り付け穴を3mmで開けた場合に開口との間隔が5mm程度しか無いため、開口寸法を大きくして取り付ける場合は確実に板割れのリスクが増えますのでお勧めは致しません。 

こんな事も実際にスピーカーユニットの取り付けまで行っていなかれば判らない事です。

いかに試作機の作成が重要であるか、こんな事からもご理解頂けるのでは無いかと思います。


㉒使用木材が明記されていない物・スピーカーエンクロージャーとして不適な木材


「スピーカー木材の特徴」をまとめたHPがありますので、まず先にご覧になってみて下さい。

https://www.highcraft.org/page/55


スピーカーを造るにおいて使用できる木材は多数存在しますが、その木材の特性によって同じ形のエンクロージャーを造っても全く違う音になってしまいます。

スピーカーエンクロージャーを選ぶ時はバックロードホーンに限らず、作製された木材が明記されている物を選び、その特徴を知った上で購入する事をお勧めします。


尚、HPにも記載されている通りスピーカーエンクロージャーには適さない木材も存在します。

比較的安価で厚めの板材が入手できると言う事で、手にしてしまう方が居るようですが、バックロードホーンにしろバスレフ型しろエンクロージャーの役割をご存知の方は絶対に手にしない木材だそうです。

「〇〇ランバーコア」と言う名前を聞いた事がある方もいると思いますが、「ランバーコア」とは薄いベニヤ板の芯にブロックに切った「ファルカタ材」 をサンドした合板なのです。

この「ファルカタ材」とは子供の頃に造ったであろう模型飛行機の材料「バルサ材」と同様に、カッターで切れる様な柔らかさと軽さを併せ持った素材で、合板の中でも軽く加工がしやすいのが一番の特長です。

一般的に「ランバーコア」と言うと、「ラワンランバーコア」を指すようですが、木地が綺麗なシナ材を使った「シナランバーコア」と言うものも存在します。

では何故「ランバーコア」がエンクロージャーに適さないのかを説明します。

薄いベニヤ板の芯にブロックに切った「ファルカタ材」 をサンドした合板と言う説明をしましたが、構造的には吸音材を薄いベニヤ板ではさんだ物と同等と考えると特に説明も必要無いかも知れません。

要するに音響的には減衰して欲しくない低域を、中にはさんだ「ファルカタ材」が吸収してしまい、低音の出ないスカスカ音のエンクロージャーが出来てしまうのです。

また構造上、釘や木ネジが効きにくいと言う特徴から、スピーカーユニットを取り付ける際にも強く締められず、ビビリ音に繋がる事も否定できません。

当然スピーカーユニットの付け替えは不可能で、一度空けた穴はネジが効かなくなるのは確実です。

くれぐれもスピーカーエンクロージャーの材料には「〇〇ランバーコア」は使わない、いや使えないと覚えておいて欲しいと思います。


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他にも色々間違った認識で説明文を飾る方がおいでです。

スピーカーは美しい音を奏でる為の設備です。

外観や造りの美しさも大事ですが、音に関しては嘘偽りは当然の事、根拠や裏付けの無い事は広告しては絶対にダメです。

工業製品なら「景品表示法の違反行為」と言う事で処罰されます。

オークションだからとか、ハンドメードだから大丈夫と言う事は無いと私は思います。

結局は信頼を落としていく結果になるのでしょう。


バックロードホーンとはスピーカーユニットの諸元を基に、適正なスロート断面積と空気室容量を有し、スピーカーユニット単独では得られない最低共振周波数(f0)以下の周波数を、振動板にロード(負荷)を掛ける事で拾い出し、ホーンの単一方向性・拡大効果で開口部から放出する仕組みのスピーカーシステムです。

要点を一言にまとめたら、スピーカーユニットとその諸元を基に造られたエンクロージャーとの組み合わせだけがバックロードホーンと呼べる存在で、それ以外は全て偽物だと言う事です。


スピーカーの諸元を無視して造った物であっても、出品も落札も個人の自由であるからして否定する物ではありませんが、出来損ないが世に出る事で先駆者たちの名誉を傷付けているのはとても悲しくもあり歯がゆい思いがしてやみません。

「バックロードホーン=癖のある音」と言われ続けられない様、バックロードホーンと称して出品なさる方々や入札される皆様も、最低でも動作原理を是非勉強して頂きたいと強く思う次第です。