CT9A(エボ7)

まえがき

・ここにある情報は素人が集めたり,経験して得た頼りにならない情報です.今後CTに乗るシャブの後輩向けなので,閲覧は自己責任でお願いします.

・世代によるエボリューションの歴史など,エボ4のページも併せてご覧ください.

CT9Aとは

2001年より発売されていた三菱 ランサーエボリューション7,8,9(GH-CT9A)のことを広義にさす.俗にいう第三世代のランエボである.従来は普通のランサーをエボリューションさせてランエボができていたが,CT系はCSランサーとランエボは設計段階で別物である.

また,エボ4より続く電子制御リアデフAYCに加わり,電子制御センターデフACDを導入.WRCでは電磁クラッチであったが,市販のランエボでは油圧クラッチ式である.路面状況や車の状態に応じてセンターデフが電子的に制御され,さらに曲がる4WDへ進化.

第三世代内の7,8,9で結構異なるが(後述),基本は同じ.ダートラをはじめ,多くの競技界隈で数多く見られ,大変人気の車種である.

エボ7,8,9及びグレードのざっくりとした特徴

エボ7...ACD搭載.タンク容量が48Lと妙に小さい.

エボ8...7と比べ外装が変化.スーパーAYCの登場.

エボ9...また外装が変化.可変バルタイ機構MIVECが搭載.ACD,AYCも賢くなる.イモビライサー搭載.マグタービン.


GSR(7,8,9)...売り筋の豪華装備モデル.ACD,AYCのほかエアコン・パワーウインドウ・電格ミラーは当然装備.

RS(7,8,9)...競技ベースモデルでAYCレス.7までは窓はクルクル.エアコンレス.内装も簡素になる.ドアノブとミラーが無塗装であるのが判別に有効.

GT-A(7)...GT-Aは初のAT.トルコンの性能の関係でエンジンは少し控えめになっている.ボンネットのダクトやリアウイング,エンブレムなどで判別可能.

GT(9)...GSRとRSの中間的な位置である.5速にGSRの巡航ギア,1~4はRSロークロス.

エンジン

みんなだいすき,トルクフルでタフな4G63.

7はヘッドカバーに「EVOLUTION」,プラグホールカバーに「(スリーダイヤ)MITSUBISHI」

8はヘッドカバーは文字なし,プラグホールカバーに「(スリーダイヤ)MITSUBISHI」

9はヘッドカバーに「MIVEC TURBO」,プラグホールカバーに「(スリーダイヤ)」

9にはMIVECが搭載され低速と中間のトルクが向上.ただしオーバーレブには弱い.ECUもMIVEC制御の入るため,別物となる.構造的にはCJ4AとかのMIVECとは違う.(吸気側カムプーリに機構が付いた)

維持の注意点は

・オイルの量は少し多め.(ビシは昔からヘッドにオイルが多くいきやすいらしい,その分多めに)

・タイミングベルトは8万キロで交換.というか,バランサーベルトが先に逝く.

・プラグの消耗が早い.元気でも定期的に見る.

・コイルも消耗が早い.日立のが安くて良い.


エンジンチューン

ここからは4G63の少しディープな領域について記す.エンジン開けたりチューンしない人は読み飛ばしていいです.

ご存じ4G6シリーズは三菱の傑作4気筒ガソリンエンジンの一種.通称シリウス.基本設計が同じため4G6系であれば実はいろいろとややこしいエンジンを作ることができる.ここでは広く行われている2.2~2.4 L の4G63ビルドについて知りうる範囲を記す.

・(背景)4G64,4G69

4G64は N74WG RVR や N84W シャリオグランディス等,4G69は DK2A エクリプス や NA4W グランディス 等に搭載されている2.4 L級のエンジンである.4G63を含めた基本緒言は以下の通り.

4G##: ボア(mm) × 工程(mm), 排気量(cc)

4G63: 85.0 × 88.0, 1997

4G64: 86.5 × 100.0, 2350

4G69: 87.0 × 100.0, 2378

当然4G6系であるので4G63にもいろいろと流用ができることとなる.

4G63に64,69のクランクシャフトを用いることにより,ストローク量が88 mm→100 mmとなり,大幅なトルクの向上が見込める.これは広くstroker(ストローカー)と呼ばれる.

鋭い読者は気が付いたと思われるが,単純にクランクシャフトの置き換えだけで12 mmのロングストローク化が可能とはならない.12 mmストローク量が伸びた分,上死点(DTC)でピストンが6 mm飛び出し,下死点(BDC)で6 mm低くなることを意味する.

それゆえ,4G64ブロックは63ブロックと比べ,6 mmエンジンブロックが高くなっている.つまり64,69ブロックを使えば最初から無問題だが,63ブロックを用いる場合,6 mm分の逃げを作らねばならないのだ.

ストローカーの基本要素

では4G6の背景を述べたので,これに基づいて64,69クランクを用いた63ビルドのメニューを示そう.

・4G64,69のクランクシャフト

上下に6 mmずつ,合計12 mm ストロークを長くするクランクシャフト.フラホの固定ボルトは7本のものがEvoに使われる.6本のものが存在するが(DSMエクリプス,イーグルタロンなど),普通に7本のものが多いし,こっちが良い.AT車からパクる場合,フラホが付く面に薄い金属板が張り付いているのでそれを取り除こう(ひどく固着してクランクに擬態しているものがある)

もちろんイケてる社外クランクでも大丈夫だが,一部国産クランクはストローク量が微妙に短かったりするのでピストンも同メーカー品の使用を余儀なくされることがある.

・ストローカー用ピストン

ここで用いるピストンはストローカー用として売られている,6 mmだけコンプレッションハイト(ピストンピン~ピストントップまでの距離)が短いものだ.前項で述べた上に6 mmストローク長くなる問題はこのピストンで解決される.

各部詳細

基本的構想は前述の通りである.ではここからは各要素に注目してビルドの際の注意事項をまとめる.経験則的な所や個人的見解も交えるため,鵜呑みにせず注意して欲しい.

・バランサーシャフトの撤去

バランサーシャフトはクランクやなんやらで発生する慣性モーメントを打ち消すために,ベルトで駆動されている2本のシャフトである.静粛性に役立つようだ.

...というのは4G6を積む一般車には素敵な話である.広く述べられているが,バランサーシャフトは駆動抵抗であるだけではなく,バランサベルトが切れることでタイミングベルトに絡むなどのトラブルが誘発される.したがって,4G6系にチューン施す場合,リスク回避の意味でバランサーシャフトの撤去が望まれる.

世界中のアフターマーケットにはそれ用のキットもある上に,何なら三菱純正部品でバランサレスにすることもできる.だが63純正の加工で十分に施工可能であり,特別なアイテムは必要ない.以下にそれぞれを記す.

①63バランサ加工(特別な部品なし,安上がり)

1.フロントケースを外し,オイルポンプを分解し,ex側バランサシャフトを取り出す.in側バランサシャフトも取り外す.

2.取り外したex側バランサシャフトを用いてブロック内部のバランサシャフト用のベアリングを打ち抜く.

3.抜いたベアリングにはオイル供給用の穴がある.ブロックのオイル穴と180°位相がずれる位置にベアリングを再度バランサシャフトを用いて打ち込む.一連の流れはバランサシャフト潤滑用のオイル供給穴を断つためである.これを忘れると油圧がかからず即死.

4.in側のバランサシャフトは廃棄.in側のバランサシャフトが生えるはずのフロントケースの穴は汎用の1 3/8 " (≒35 mm)のメクラで封をすることができる.液体ガスケットを塗布すると良い.

5.ex側のバランサシャフトはグラインダなどでオイルポンプに刺さる部分以外は切断する.切断するとオイル供給用の穴がある.ここに適宜ねじを切ってボルトをねじ込むことで油路を断つことができる.


②純正流用

MD092785...メクラ.in側バランサシャフトのメクラ用.

MD098626...初めから切ってあるex側のバランサシャフト.

ベアリングは①と同様にする.


バランサベルトのテンショナーベアリングの取付ボルト穴には液ガスを塗ったボルトを銅パッキン挟んで漏れ止めをするとよい.

※社外品のショート加工済みオイルポンプ側バランサシャフトにはオイルを受ける溝がないため,シャフトが削れていく.純正流用や純正バランサカットであれば溝は残るため,削れることも少ない.


エンジンブロック/オイルフィルタブロック

ブロックに施す改良はバランサシャフトレス用のベアリング逆組み以外にもある.

まずはコンロッド逃げ加工である.ストローカーはコンロッドが大きく左右に振れる.また強化ロッドは大型化してシリンダー底部に接触する場合がある.その際はベルトサンダーなどで接触部の研削,面取りを行う.実際には仮組すると,加工しなくても当たらないこともあるが,わずかに角をおとすだけであっても加工が望まれる.熱が加わり高回転すると何が起こるのかは分からない.

次に油路の面取りである.フロントケース側にはオイルラインがあるが,90度曲がったりする角には鋳造のバリがある.リューターで面取りをするとオイルがスムーズに流れるとされている.

ピストンの冷却のために,オイルジェットがある.これがピストンと接触する場合がある.適宜曲げると回避できる.

オイルフィルタブロックは4から9まで共通に見えるが,オイルクーラー接続バンジョーサイズM16->M18と変化するため注意.

また,2か所ある六角のメクラを外すと3/8PTの雌ネジが現れる.汎用3/8PT-1/8PTブッシングをねじ込むことで容易に油温や油圧センサーを設置することができる.サンドイッチブロックを使うとオイルフィルタが下に伸びて,ロアアームのボルトとかが取れなくなった気がする.Evo8までのブロックを使ってヘッドをEvo9(=MIVEC)にする場合はこちらにオイルプレッシャースイッチを移設したりする(~Evo8までのオイルプレッシャースイッチ部からEvo9は油圧を取り出して可変バルタイに使用している.)


燃料ポンプ/デリバリーパイプ/インジェクタ/燃圧レギュレータ

純正燃料ポンプでもそこそこの吐出量があるらしいが,配線の強化,大容量ポンプ化はブーストアップだけでもまずやりたい.社外でも吐出量だけに注目するのではなく,燃圧がかかったときに吐出してくれるかが大切.サードのポンプは高いだけあって良いようだ(隣県プロ談).さらにジェットポンプの内径を純正2.5mm程度から3mm強まで拡大すると良い.でも社外のジェットポンプキラー高過ぎないか???

Evo 8からデリバリーパイプが容量がおおきくなり,燃圧の安定化に寄与する.

純正インジェクタは550 cc.ブースト1.5程度までは大丈夫と言われている.排気量アップなら最低は800 ccくらいはないとinj デューティが100 %超える.

燃圧レギュレータもある程度の容量があり,意外と大丈夫らしい.でも調整できるならするに越したことはない.


イグニッションコイル/スパークプラグ

純正は同時点火.街乗りでトルクが薄く感じたらイグニッションコイルが悪いかも.同時点火故,大きなコイル.ドエルタイムなど詳細は不明だが,独立点火に比べ不利なのは確か.社外で多くの独立点火キットが発売されているが,ぶっちゃけ板切り出してドエルタイムの分かるコイルを4つ集めてつければよい.

スパークプラグが用途次第だが基本は#7~#8.プラグギャップについてはまだノウハウがない.


・ヘッド

Evo7からカムは初めからin:256, ex:256という優れた中空カムが採用されている.下手なハイカムでは折角の中間トルクを殺しかねないので社外品の選択は慎重に行わねばならない.また,Ex側カムにはカム角センサー用のベーンが取り付けられている.向きを間違えるとカムが360度間違えて(=燃料や点火がおかしくなる)ECUに伝えられることになるので要注意である.それでも同時点火ゆえにそれなりに走れてしまうようだ

また社外品のなかでもバルブスプリングを替えるもの(=バルブリフト量が多くなるもの)はEvo 7のバルブリテーナーを要することが多い.

ヘッドそのものはアルミでできていて,鋳造のバリを落とす程度のポート加工で良いとされている.意外と壁が薄いため,削りすぎるとラッシュアジャスターに届くこともあるため注意したい.

ラッシュアジャスターは良くエア噛みを起こす.オイル中または軽油中でエア抜きを行うことで復活することが多い.


メイン/コンロッドベアリング/コンロッドボルト

整備書のメイン,コンロッドベアリングのオイルクリアランスは20 ~ 40 μmとされている.だが,軸部の流体潤滑の一般論として,オイルクリアランス=軸径×0.001 が広く知られている.これに基づくとメインベアリングクリアランスが50 ~ 60 μm,コンロッドメインクリアランスが40 ~ 50 mmが理想とされる.多くの4G6系ビルドがこのクリアランスで行われ,高出力に耐えているという実績から,リビルドの際にはクリアランスを広めにとることが好ましい.

4G6に限った話ではないが,コンロッドボルトはエンジン内部で最も過酷な環境のボルトと云われている.ヘッドボルト同様に,塑性域締め付けによるボルトの伸びを利用した締め付けが行われる.純正では角度締めで管理されるが,ARPなどの社外ボルトを用いる場合,指定のグリスを塗布し,トルクではなくボルトストレッチゲージを用いた伸びの管理を行うことが好まれる.


・スロットル / インマニ / エキマニ

スロットルにはISCサーボとTPSが付いている.いずれも海外から互換品が出ているようだ.スロットルシャフトのシールは経年劣化でエア漏れを起こすがシールだけでは純正入手ができない.しかし海外からは発売されているし,国内の汎用品流用ではNTN G14×10×3が使えます.

グランディス(NA4W)の4G6や,Evo 10(CZ4A)やデリカD:2(CV4W)の4B1系エンジンの電子スロットルは無加工で取りつく.冷却水の配管は多少の加工を要するが,アクセルペダルのAPSが準備できれば容易に電スロ化ができる.電スロありきのアンチラグなので受ける恩恵は大きいと思われる.

インマニにはEvo7~9間でそれぞれ微妙な変更がある(残念ながら把握できていない).インマニそのものは同じであるが,それに付属するMAPセンサーの有無やEGR関係など,変更点は多岐にわたる.インマニ裏には有名なPCCS(ポストパッションコントロールシステム,要は二次エア)作動用のソレノイドがある.

エキマニは鋳物で見た目こそ似た物であるが,代を重ねるごとに軽量化がされているようだ.ただしアンチラグなどエキマニに負荷をかける場合,肉厚な旧世代の方が安心か.社外エキマニはトルクが細くなる例が多く(2.0Lだからか?),純正エキマニが優れた特性であることが知られている.


吸排気

純正ではLジェトロなため,エアフロメーターがあるため,エアクリーナーボックスの安易な交換は好まれない.また,エンジンルーム内と区分けしないと吸気温度が上昇しパワーダウンにつながる.排気は純正でも非常にまっすぐで抵抗が少ない.タイコ内部には排圧弁がある.とはいえ,やはり排気チューンはターボ車の基本で,排気量アップした車は殊更に効果が顕著である.純正のタービンアウトレットは球面ガスケットのため,ある種の絞りとなっている.したがってタービンアウトレットからテールまで内径を拡大することがパワーアップに大きく寄与する.純正触媒も絞りになるので社外が好ましい.


ターボチャージャー

タービンは「TD05○○-▲▲-☆☆T」.当然流用などが可能である.

○○が材質.HRの場合インコネル,HRAの場合チタンアルミ合金,または(エボ9のみ)マグネシウムチタン合金.マグはもろいことで有名であるが対策がされたらしい.対策前:49378-01570 対策後:49378-01571

▲▲はインペラの径.16G6が普通でエボ9MRのみ155G6.

☆☆は排気径.エボ7,8は9.8T.エボ9はMIVECにより中間トルクが出るため,10.5T.この10.5TはCP9Aと同様.

9.8Tのタービンだからと言ってがっかりしなくてもいい.10.5Tの排気ポート付ければいいだけなので,たとえばHR-10.5Tの排気ポートをHRA-9.8TにつければHRA-10.5Tに化けてイケ・タービンが錬成できる.

マグが立ち上がり最強ということは事実だが高いし,すぐ壊れるし現実味がない.となるとチタンが性能的にも優秀であるといえる.

9.8Tと10.5Tどちらがいいか論争は絶えないが,2.0L非MIVECでは9.8Tでもいい感じはする.立ち上がりがやはり違う.

アクチュエータはエボ8から傘のついた腐食対策品へと変わる.

ブローオフバルブは7,8まで樹脂製,8MR以降は金属となる.

ミッション

5MTはW5M51.エボ4からの伝統と実績あるミッション.8,9 GSRの6MTはBライ競技で使う人いないので割愛.

ギア比は,

7 GSR

2.928, 1.950, 1.407, 1.031, 0.720

7,8,9 RS

2.785, 1.950, 1.444, 1.096, 0.825

9 GT

2.785, 1.950, 1.444, 1.096, 0.720

・国内モデルのCT9Aのファイナルはすべて4.529である.4.875ファイナルはラリーアートから競技部品として販売されていたが廃版.

・エボ6RSまで のロークロス仕様に4.875ファイナルが存在し,流用可能.

・輸出モデルのファイナルは4.111である.これはこれでワイドとなり,しっかりトルクを生かした落ち着いた走りができるようだ.


・ベアリングは以下の通り.規格物なので安く買えます.

インプット深溝玉軸受軸受:MN132400 (NSK B28-30)

インプットシール型深溝玉軸受:MR980742 (KOYO 566 6307RKH, NTN 6306V23)

アウトプットテーパーローラー軸受:MD748457 (KOYO 30207)

アウトプットテーパーローラー軸受:MD747745 (NSK HTF 32207J)

センターデフリングギア側:MD710663 (LM501349-N)

センターデフデフ側: MD771729

・ミッションオイルはミッション内にはないがフロントデフを潤滑するため,LSD対応のものが必要.

・7GSRの1速は41/14=2.928という特殊なギア比となっている.他は39/14=2.785である.一見するとインプット側のギアは14枚で同じインプットシャフトであると考えるが,実は異なる.7GSRの41枚に用いられるインプットシャフトは2 mm程度の1速の外径が小さく,39枚のギアとは互いに互換性がない.間違って組むとギャーという異音がする.7GSR限定の1速には注意するべきである.

トランスファ

見た目はCPとかと同じに見えるがACDの配管が繋がるACDパック(油圧多板クラッチ)がついている.また,フロントデフが格納されている.

トランスファは7と8,9では異なる.

7→8,9になると,ピニオンギアのシャフトが太くなり,ベアリングの大きさが異なるため内部は微妙に互換しないらしい.デフも異なる様子.

だが,ミッションやペラシャは同じなので,トランスファ丸ごとの入れ替えはできる.

ACD(Active Center Differential)

ACDはCT9A以降に使われている電子制御センターデフである.4輪の回転速度や縦横G,ブレーキやアクセル開度,ステアリングの切り具合などに応じて最適なセンターデフのロック率を可変にする.

ふつうはイニシャルトルクを可変とする機構が多いがACDはロック率を変える.

いわゆる機械式のセンターLSDは前後のトルクが一定以上の差となったとき,ロックし前後直結となる.従来の可変センターデフもこのロックする/しないのトルクを可変とする機構である.

しかしACDはロック率を可変とする.つまりセンターデフがロックする/しないの間があるということであり,いわゆる半クラのような状態が可能である.

どういうことかわからない人は下の画像参照.

デフ(LSD)

<フロント>

Evo7と8,9では異なる様子.クスコではケースの溝の有無で判別するらしいです.


<センター>

ミッション内部にあります.ACDなので形はオープンデフです.特に何もしなくていい.


<リア>

エボ1-9まで同じ機械式LSDである.オイル量は少ないため,多めに入れ,早めの交換が良い.

AYC付きのCTを機械式にする場合,エボ5,6(CP9A)かエボゴン(CT9W)のリア周りごそっと持ってくるのが良い.ただし,ACDの車速信号用としてABSセンサーと,ドラシャアウター側にセンサーが読むための切り欠きが必要である.特にCPドラシャ流用の場合,アウターのみ7,8,9(GSR可)のものへ交換が必要となる.

簡単に言えば,RSデフケース,RSデフ玉,RSデフマウント,RSデフサポート,RSドラシャ(アウターGSR可)を持ち寄って,ACD AYCポンプにメクラ,配線加工で駆動系はRS化できる.

デフ玉の各部ベアリング,シムはなんか高いので汎用の用いることもできた(自己責任).

デフサイドベアリング:円錐ころ軸受(30207)
デフサイドシム:外径72 mmくらい.イワタのSRF050070Bも使えた.
フロントピニオンベアリング:(見忘れ)

リアピニオンベアリング:(見忘れ)

ピニオンシム:内径25mm強.イワタのSRF025032Bが使えた.


ピニオンとリングギアのバックラッシュ:0.11 - 0.16 mm

新品ベアリング,ピニオンギアのみでの起動トルク:0.88 - 1.17 N*m


<イニシャルトルクの測定の裏技>

フロントデフに刺さってるインタミシャフト的な奴,あのスプライン前後のデフで共通.それどころかは長らく三菱が使いまわしているようで,車種すら違うCJ4Aとも同じ(私の目に狂いはなかった,感動した).

つまり,わざわざドライブシャフトを一本犠牲にして特殊工具をつくる必要がないということ.適当なインタミ等を使えばいいのです.(だってクソ高いリアのドラシャを犠牲にしてSST自作とかありえない.)

ドライブシャフト

<フロント>

GSRと同じ.

互換ブーツ

・インナー: セイケンSB137あたり

・アウター: 大野ゴムFB-2042, FB-2162あたり

が使えます.


<リア>

GSRとRSでは異なる.RSでは長くなる(AYCなくなるから).

RSシャフトの入手はRSからパクる以外に以下の方法がある.

・エボゴンのリアドラシャをパクる.

・CN,CPのRSリアドラシャのアウターをCT GSRのABSトーンリング付きに付け替える.

互換ブーツ

・インナー: 大野ゴムFB-2068あたり

・アウター: ミヤコMB-1017あたり

が使えます.

ACDポンプ

まずACD(AYC)ポンプの構造を以下の図に示す.信号線はコネクタや端子数を正確には示していない(4WD-ECUから信号うけて動くよ,くらいの意味).

タンクからATFを吸い込み,ポンプで加圧する.様々な条件からセンターデフの差動制限を決定する4WD-ECUからの指示を受け,電磁比例弁を開放し流量を調整しながら油圧クラッチに圧をかけてロック率を可変としている.油圧は圧力センサで一定に保たれ制御されている.比例弁が解放し,作動時に圧力を素早く伝えるために蓄圧器(アキュムレータ)がある.

エア抜きには専用の装置がないと無理と言われているが,そんなことはない.ポンプモータと比例弁を開けられれば十分にエア抜きが可能である.ポンプモータのリレーは助手席側バルクヘッドについている.リレーの信号線に12Vをかければ回る.また,比例弁はACD,AYC右,AYC左とあるが,助手席足元の内装をはがした中にあるカプラーを抜き,10Ωくらいの抵抗つけて12Vを印加すれば開弁する.あえて具体的には書かないので電気配線図を読むなりしてください.

一応,トランスファを下ろしたり,新品ポンプに交換したときやポンプをOHしたときも同じようにエア抜きしたが,問題なかった.

完全にドライのポンプ(新品やOH済み)では,車載する前にATFを少しパイプに流し,ATFが内部に流れるように傾けながら少しポンプを回しておく.そうすることでエア抜きが格段に容易になる.ATFタンクフィルタの目は相当細かいのでATFが流れていくまでに時間がかかるので焦らずに.

エア抜きのコツは,比例弁を開けたり閉めたりして圧を掛けること.30秒もポンプを回せばタンクは空になるので手際よく作業しましょう.


もし三連灯した際はOBD2端子の1番と4番ピンを短絡させよう.キーオンでACDインジケータにダイアグが表示される.長い点灯が10の位,短い点灯が1の位の数字を示す.(例:ーーーー・・・・・はfault code#45)

以下がフォルトコード一覧.


Code No. / Diagnosis Item / Mode indicator lamp (〇: all light, – : normally displayed) / Main diagnosis details

12 / Power supply voltage (Valve power supply) / 〇 Open-circuit, short-circuit of power supply voltage system, or drop in voltage

13 / Fail save relay / 〇 / Open-circuit or short-circuit of ECU equipped fail save relay

21 / FR Wheel speed sensor / / Open-circuit or short-circuit of wheel speed sensor system

22 / FL Wheel speed sensor / / Open-circuit or short-circuit of wheel speed sensor system

23 / RR Wheel speed sensor / / Open-circuit or short-circuit of wheel speed sensor system

24 / RL Wheel speed sensor / / Open-circuit or short-circuit of wheel speed sensor system

25 / Wheel speed sensor / - / Equipped with step-bore tire

26 / Wheel speed sensor / / Wheel speed sensor defect

31 / Steering wheel sensor / / Steering wheel sensor<ST-N,ST-1,ST-2> system opened or short-circuit

32 / Steering wheel sensor<ST-N> / / Steering wheel sensor <ST-N> system short-circuit

33 / Steering wheel sensor<ST-N> / 〇 / Fixing of steering wheel sensor<ST-N>r <ST-N> system

34 / Steering wheel sensor<ST-1,ST-2> / / Short-circuit or fixing of output of steering wheel sensor<st-1,ST-2> system

41 / TPS / / Open-circuit or grounding of TPS system

42 / TPS / / Short-circuit of TPS system

45 / Pressure sensor / / Open-circuit or short-circuit of pressure sensor system

46 / Pressure sensor / / Earth open-circuit of pressure sensor system

47 / Pressure sensor / / Power supply defect of pressure sensor system

51 / Longitudinal G sensor / / Open-circuit and short-circuit of longitudinal G sensor system

52 / Longitudinal G sensor / 〇 / Longitudinal G sensor defect

56 / Lateral G sensor / 〇 / Open-circuit or short-circuit of lateral G sensor

57 / Lateral G sensor / / Lateral G sensor defect

61 / Stop lamp switch / 〇 / Open circuit of stop lamp switch system

62 / ACD mode switch / / ACD mode switch is stuck

63 / Parking brake switch / / Short-circuit of parking brake switch or it has not been returned to designated position

65 / ABS / 〇 / Open-circuit of ABS monitor system or malfunction of ABS

71 / Proportional valve / / Open-circuit or short-circuit of proportional valve system

72 / Directional valve / 〇 / Open-circuit or short-circuit of directional valve system

73 / Directional valve / / Open-circuit or short-circuit of directional valve system

74 / Proportional valve / / Open-circuit or short-circuit of proportional valve system

81 / Electric pump relay / 〇 / Open-circuit or short-circuit of electric pump relay system

82 / Electric pump relay / / Electric pump malfunction or pressure sensor defect

84 / AYC control / / AYC control defect

85 / ACD control / 〇 / ACD control defect


備考:

・#21~24はABSセンサーの清掃(磁石なので鉄粉が付く)で復活することが多い.高圧洗浄とかで横着するのではなく,ドラシャ抜いて拭き取ります.

#84,85がいわゆるポンプ不良.腐食などで死んでます.O/Hか交換です.

・前後異径タイヤでは全点灯はしないもののフォルトコードには残る様子.

・コードの消去・リセットはバッテリーを切ってちょっと放置する.普通の車と同じです.

GSRのRS化

おもに機械式デフ化ついて要点をまとめる.(外装のRS化とかどうでもいい)

①駆動系の変更

CP,CTのRSデフケース,1-9のRSデフ玉,CP,CTのRSデフマウント,CP,CTのRSデフサポート,CTのRSリアドラシャに交換する.特にCT RSドラシャは高価であるが,アウターをCT GSRのものへ置き換えることでCP RSのドラシャも使用可能となる.ブーツも共通である.

リアメンバーにはボルト穴が左右2か所残るが,放置で大丈夫(ちゃんとしたお店の車でもそうだった).

②ACD,AYCポンプの加工

GSRのポンプにはタンクやトランスファに繋がる配管の他に,ACD,AYC右,AYC左の配管が出ている.AYCのキャンセルに際しては,AYCの2本の配管にメクラをする必要がある.ブレーキ配管同様フレアナットである.イモネジにシールテープ巻いてぶち込みましょう.まあ漏れなければなんでも良いと思います.ネジはM14 × 1.5 mm.

③配線加工

いわゆるABSのカットを行う.が,ACDはABSセンサによる車速信号が必要なため,一筋縄ではいかない.要点を述べると,GSRではABSセンサ→ABSユニット→ACDコンピューターという流れであるが,ここにABSセンサ→ACDコンピューターとなるようにバイパスさせる配線を追加する.

また,同様に前後Gセンサ/横Gセンサも同様に,Gセンサ→ABSユニット→ACDコンピューターという配線に,追加でGセンサ→ACDコンピューターとなるようなバイパス配線を追加する.

最後にABSのヒューズを抜くことでABSレスでACDを作動させることが可能となり, いわゆるRS仕様となる.カプラ―位置や配線の色など,詳しい内容は電気配線図を見ましょうね.


注意したい部品

高騰・廃盤・よく壊れる部品.あくまで競技走行や車検/保安基準に関わる部品だけです.注意されたし.

<外装>

ヘッドライト(高騰)

テールランプ(高騰)


<エンジン>

MIVECエンジン(高騰)

エアコンホース(エキマニ/タービンの熱で逝きがち)

プラグ(消耗激し)

イグニッションコイル(同時点火のためか,劣化激し)

エキマニ(たまに割れる)

アクチュエータ(雨水の入らない"傘"付きでないと固着する)

インタークーラー(流用されてしまうらしく,綺麗な個体が少ない.社外が規則的にOKでも建付けが悪いケース多数あり)


<駆動系>

RSリアドライブシャフト(アホほど高騰)

トランスファー

RSリアドライブシャフト

ABSセンサー(すぐ固着してもげるし,高い)

RSロークロスミッション(ギア一部廃盤,高騰)


<足回り>

アーム類が全てアルミのため,クラックなどの定期的な点検が必要.

丸和は走るといろいろ緩む.

フロントロアアームブッシュとリアトレーリングアームブッシュはトラクションの要らしい.

ホイールの内側の砂でトーコンの頭が削れる.

リア各アーム偏心ボルト(廃盤?)

フロントハブベアリング(社外品廃盤)