第18回気象学史研究会「古記録や立地の特徴から見た豪雨災害の歴史的理解」開催 (2025/11/8)のお知らせ
第18回気象学史研究会を日本気象学会2025年度秋季大会に合わせ、下記の要領で開催いたします。
開催日時:2025年11月6日(木)18:00~20:00
会場:福岡国際会議場小会議室401-403(福岡市博多区石城町2-1・ 日本気象学会秋季大会C会場)・Zoomによりオンライン中継
プログラム:
1. 江戸時代の古記録に基づく顕著な豪雨災害事例の復元 西山浩司(九州大学大学院)
2. 近年の豪雨災害から見た被災建物の立地特性と減災に向けた取り組み 山本晴彦(山口大学)
主催:日本気象学会気象学史研究連絡会
趣旨
大規模な豪雨災害が近年頻発しているといわれる.市町村レベルなど個々の地域では必ずしも発生頻度が高くないこれらの災害も,地域の特徴を反映し歴史的に繰り返されてきたことを示すことは防災の観点からも重要である.西山浩司氏は地域に残る古記録を丹念に調べ,時間的空間的に俯瞰することで,江戸時代を通じて九州北部で最大級の土石流災害を引き起こした事例の復元を試み,現在への拡張性を検討した.山本晴彦氏は近年発生した豪雨を例に,被災建物の自然・人文地理学的な側面から立地の特徴を明らかにし,防災への活用に取り組んでいる.これらの報告を受けて,豪雨災害を歴史的な文脈で理解し,防災・減災に向けた取り組みを進める方策についても議論したい.
本会合は気象学史研究に関心を持つ,より多くの方の間の情報・意見交換をうながすため,学会員以外の方にも広く参加を呼びかけて開催する.
参加方法:参加を希望されさる方は会場・オンラインに関わらず、事前申し込みをお願いいたします。
参加申込フォームへのリンク
日本気象学会員であるか、秋季大会に参加するかどうかに関わらず、関心のある方はどなたでもご参加いただけます。
参加費は無料です。
オンライン中継についておことわり
オンライン中継は会場に大勢の方々に集まっていただくことが難しい 状況や、日頃会場への参加が容易でない方に参加の機会を広げるなど、多くの可能性がありますが、さまざまな理由により、接続が切断されたり画像・音声が途切れたりして、講演を十分にお楽しみいただけなかったり、質疑応答への参加に制約をお願いするなど、十分に満足いただけるような参加ができないこともあります。最悪の場合まったく中継ができなくなるおそれもあります。あらかじめご了承ください。
Zoom練習会
今回のオンライン中継はウェブ会議ツールZoomを使用いたします。Zoomの使用が初めての方、不慣れな方で、練習の機会があれば参加されたいという方は、参加申込フォームでその旨お知らせください。希望者が多い場合は練習の機会を準備いたします。
2. 講演要旨
1. 江戸時代の古記録に基づく顕著な豪雨災害事例の復元 西山浩司(九州大学大学院)
本研究では,江戸時代まで遡って,顕著な豪雨災害事例の時空間的復元に取り組んでいる.江戸時代には,災害が深刻な場合,地域単位で田畑,水路,橋などの破損記録や普請記録が残っていることが多い.しかし,情報伝達手段が乏しい当時の状況を考えると,広範囲の情報であっても,個々の情報は関連地域に限定される.したがって,豪雨事例を復元するためには,災害が起こった同時期の記録を空間的に繋げて,豪雨が及んだ範囲,災害の種類,被災範囲を明らかにする必要がある.その一環として,享保5年(1720),江戸時代を通じて九州北部で最大級の土石流災害を引き起こした豪雨事例の復元を試みた.その事例では,久留米藩の記録,諫早日記(佐賀藩諫早領),宗家文書(対馬藩田代領),うきは市の古文書「壊山物語」などに記録が残され,被害が広範囲に及んだことがわかった.講演では,その事例を享保5年7月九州北部豪雨と名付け,時空間的に復元する手法とともに,その豪雨事例の全容を紹介する.
2. 近年の豪雨災害から見た被災建物の立地特性と減災に向けた取り組み 山本晴彦(山口大学)
近年,大規模な豪雨災害が頻発しており,この10年余りでも,2018年の梅雨前線により岡山県・広島県・愛媛県・山口県・福岡県などで発生した洪水・土砂災害(平成30年7月豪雨),2019年台風19号(令和元年東日本台風)により宮城県・福島県・埼玉県・長野県などで発生した洪水災害,2020年の梅雨前線により熊本県南部の球磨川流域や芦北地方で発生した洪水・土砂災害,2022年台風15号により静岡市巴川流域で発生した洪水災害など,甚大な豪雨災害が毎年のように発生している.さらに,本年(2025年)8月10日からの豪雨では,熊本県沿岸部の玉名市・熊本市・八代市・上天草市・天草市などを中心に,有明海の満潮と重なって排水不良により甚大な浸水被害が発生しており,住家被害は5千棟弱にも達している.本講演では,これらの豪雨により被災し建物などについて,自然・人文地理学的な側面から立地の特徴を述べ,減災に向けた取り組みについても紹介する.
(2025/9/8)