圏において対象全体が集合のとき小圏と呼び,そうではない圏を大圏と呼んで区別する場合がある.小圏は大圏における図式の(余)極限などを考える際のインデックスとして利用される場面が多い.それ以外にも幾何学的な対象として小圏を扱うこともある.
小圏のトポロジーを考える際に重要なのが,脈とよばれる単体的集合と,その幾何学的実現で構成される分類空間である.これにより,小圏という代数的,組み合わせ的な対象から,幾何学的対象である位相空間が構成される.(小)圏における同値や随伴などの関係からは,分類空間のホモトピー同値が誘導されたり,始対象あるいは終対象を持つ小圏の分類空間は可縮であることなど,圏と関手の性質が,分類空間のホモトピー論に関わってくる.分類空間のホモトピー論的性質についてQuillenの【Qui73】の前半は非常に重要な事が書かれている.特にTheorem A,Theorem Bと呼ばれる定理は,分類空間のホモトピー論を学ぶ上で欠かせない.
小圏を対象,関手を射とした圏を考えると,この分類空間をとって(弱)ホモトピー同値になるものを弱同値としてモデル構造が定義できる.これはThomasonが【Th80】で考え,正確には脈の関手で単体的集合の圏と対比して議論している.もう1つ自然に考えるとすれば,圏の同値を弱同値に指定するモデル構造も考えられる.こちらのほうはRezkの【Re00】,あるいは【JT91】が詳しい.いずれにしろ,どちらもコファイブラント生成なモデル圏となる.
小圏でホモトピー論を行うときに,上記のようなモデル圏として扱うのではなく,Λ-コファイブレーション圏として考えているのがMinianである【Min02】,【Min02'】.これは区間対象を0→1の細分で複数用意しておいて,それをホモトピーとして利用しようというものである.Minianは小圏でのCW複体に相当するものは何かも考えている【Min05】,【Min02'】
小圏を対象の集合と射の集合と考え,その間の構造写像が与えられ,合成の結合則と恒等射の条件を満たすものという見方ができる(群でも同様の見方をした).この際,対象と射を位相空間とし,構造写像が連続という具合に置き換えれば,位相圏が定義される.位相圏の分類空間も,単体的空間を経由して構成できる【Se68】.
半順序集合は順序の小さい方から大きい方へ,1本の射があると考えれば,小圏とみなせる.この小圏の分類空間を考えると,順序複体とよばれる単体複体の幾何学的実現と一致する.【Hoy07】によると小圏の重心細分を2回とると,分類空間のホモトピー型を変えず,半順序集合になる.
長さや距離を持った小圏を考えている人もいる【Gra06】,【Yet03】.小圏のサイズとして,大圏と小圏が同値になる状況を考えているのは【FS95】である.Leinsterは有限の圏について,Euler標数を様々な方法で定義している.対象と射から行列を考え,Mobius逆変換を持つとき,あるいは重さを持つとき【Lei06】や,1変数の有理関数としての記述【Lei07】などである.