ファイバー束で重要だったのは,被覆ホモトピー性質によるホモトピーのリフトであった.ファイブレーションとは,この性質に着目したものである.最も基本となるのは,パス空間の端点を対応させるパスファイブレーションである.ファイブレーションがホモトピー論で重要視されているのは,ホモトピー群の完全列を導くためである.また,任意の写像は,写像跡を用いて,ファイブレーションに取り換えることができる.写像fの写像跡のファイバーはホモトピーファイバーと呼ばれている.よって,fがホモトピー群の同型を導くかどうかは,このホモトピーファイバーのホモトピー群が消えているかどうかと言い換えることができる.コファイブレーションでも同様の議論ができる。こちらはコホモロジーの長い完全列との関連が強い.
これら一連の操作は【西田85】あるいは,「ファイバー束とホモトピー」のサイトにも詳しく載っているので読んでみるといい.(コ)ファイバーなどは,図式の引き戻し(押し出し)で考えると話が見やすいかもしれない.例えば、(X→Y←*)の図式の引き戻しがファイバーであり,ホモトピー引き戻しがホモトピーファイバーである.(*→Y←*)の引き戻しは*だが,ホモトピー引き戻しはループ空間ΩYである.また,(X→Y←Y)のホモトピー引き戻しが写像跡である.一般に,ホモトピー(余)極限と通常の(余)極限が弱同値になるのはどういう状況か,一般的なモデル圏における理論は【Hir02】が詳しい.
さらにファイブレーションを弱めて弱ファイブレーションという概念もある.これはホモトピー群の長い完全列の派生について言及したもので,弱同値とも密接に関わってくる.