位相幾何学(トポロジー)は,空間の連続的変形に着目した数学の分野である.ホモトピーは連続変形の一種で,[0,1]という時間軸で連続的に移りあえるか,というものを数学的に記述した概念である.
特に,球面からの連続写像のホモトピー類は群構造を持ち,「ホモトピー群」と呼ばれ,トポロジーの中では中心的な研究分野である.球面のホモトピー群(つまり,球面から球面への連続写像のホモトピー類)すらも高次では計算が複雑すぎてわかっていない.
ホモトピー群を調べる最も基本的で重要な道具としては,被覆空間,fiber bundle,そしてより一般的な(quasi)fibrationと呼ばれる写像とそれに付随する完全系列である.ホモロジー群で重要だったのが,その双対的な概念のcofibrationとその完全系列であり,双対的な話が続く.
ホモトピー群もホモロジー群も大雑把な説明は,空間の「穴」をベースとして構成された代数的な対象である.実際両者は,空間の連結性がある程度高ければ低次数のところで一致している(Hurewiczの定理).また,Brown表現定理によりコホモロジーはホモトピー集合として表せ,Dold-Thomの定理からホモロジー群も無限対称積のホモトピー群として表せる.
ホモトピー論については西田の「ホモトピー論」【西田85】が教科書的な重要度を持っている.あとわかりやすい解説として玉木の「ファイバー束とホモトピー」のサイトが役に立つ.