位相空間のホモトピー論をある程度学んだ後に,ホモロジー代数の本を読むと,ホモトピー群をホモロジー群,弱ホモトピー同値を擬同型と読み替えるとその類似性に気づく.ループ空間や懸垂なども,chain complexでのshiftの操作を用いて,同様の議論が進む.このホモトピー論の本質を見抜き,一般の圏で公理的なホモトピー論の枠組みを打ち立てたのがD. Quillenであり,現在ではモデル構造,そしてモデル構造を備えた圏をモデル圏と呼んでいる.
モデル圏は3種類の射(写像)のクラスによって構成される.それぞれ,weak equivalence, fibration, cofibrationと呼ばれている.当然,これらは位相空間のホモトピー論で登場する,(weak) homotopy equivalence, (Hurewicz)Serre fibration, (closed) cofibrationから由来している.位相空間はweak homotopy equivalences, Serre fibrations, inclusions of relative CW complexesの指定でモデル圏となる.別の指定としては,homotopy equivalences, Hurewicz fibrations, closed cofibrationsによっても別のモデル構造をなし,こちらはStromによって示された.目的によって,適切なモデル構造を選ぶことが重要である.まだ,chain complexの圏はquasi isomorphisms, projective surjections, injectionsによって,モデル圏となりこのモデル構造がホモロジー代数の理論を制御している.
モデル圏の概念はQuillenが【Qu67】で導入したが,DwyerとSpalinski【DS95】が圏の極限などもカバーしていて読みやすい内容である.他にもGoerss, Schemmerhornによる【GS06】も良いし,本格的に学ぶならHoveyの【Ho98】とHirschhornの【Hi02】がお勧めである.