ホモトピー群は球面からの基点付き写像のホモトピー類として定義される.あるいは,キューブで境界が1点に潰れるような連続写像のホモトピー類とも考えられる.こちらのほうが群の演算を定義するときにしやすいかもしれない.定義は単純なのだが計算は非常に複雑である.
ホモトピー論の一大テーマとして有名な問題では,球面のホモトピー群の決定が挙げられる.球面のような単純な空間ですら複雑なのだから,可縮でもない限りホモトピー群の計算は一般的には容易でない.とりわけ高次のホモトピー群の場合はより複雑である.
低次元のn=1の場合,n次ホモトピー群は基本群と呼ばれる.基本群の計算で有用なのは,被覆空間という概念である.これは後々に出てくるファイバー束やファイブレーションに繋がる考えである.基本群と被覆空間は密接に関わっていて,位相空間だけでなく代数的な対象として線形圏の基本群,被覆空間も考えられている【CRS07】,【CRS09】,【CM04】.
基本群を求める上で有力なのがSeifert-Van Kampenの定理である.これは空間の押し出し図において,3つの空間の基本群がわかっていれば押し出された空間の基本群もわかるというものである.証明などは【加藤88】に載っている.基本群(ホモトピー群)は写像空間の商集合として定義できるので,商空間として位相を考える事もできる【Bra10】.この位相が離散的である必要十分条件が,普遍被覆の存在でも登場する条件,弧状連結,局所弧状連結かつ半局所単連結であることだという.基本群は基点を定める必要が,基点全て動かすと自然に亜群が構成される.【Woo09】によると,空間に順序があるようなstratified spaceに関しては,基本亜群ではなく基本圏が定義され,その局所化として基本亜群が得られるらしい.
ホモトピー群に関する基本的な事柄は,【西田85】か「ファイバー束とホモトピー」のサイトがわかりやすく,その他のホモトピー論に関しての重要な記載が多い.また Blackers-Massay の切除定理は【May99】に詳しく載っている.
ホモトピー群が[S^n,X]なら,逆に[X,S^n]というものあってもよさそうである.実際にコホモトピー集合と呼ばれている.ただ余り普及されてない原因としては,一般的には群ではなく,ただの集合だという点.Xが余H-空間か,n=0,1,3,7のいずれかなら,S^nがH-空間となって積構造が入るが.【Tay09】では主束の理論の例として、[X,S^2]を考えている.
ホモトピー群
対空間のホモトピー群