代数的位相幾何学で最もよく用いられる代数的対象の一つがホモロジー群である.一口にホモロジー群と言っても多種多様で,係数を変化させることでもいろいろなバリュエーションがある.
最初に学ぶとしたら,単体複体のホモロジー群がスタンダードなのかもしれない.これは各次元での単体を数えて,それらが境界でどのように張り合わさっているのか見ているものである.単体に向きを与え,交代和をとり,境界で相殺させ,残ったものを見るというやり方はパズルのようで楽しい.単体複体のホモロジーについては、【田村72】が一貫して単体分割のホモロジーで話を進めているので見るといい.
ここでは主に,一般的な位相空間に適用される「特異ホモロジー」を扱う.単体分割されていない空間では,何を単体とすればよいかというのが問題になるが,これは標準単体からの連続写像で代用する.
ホモロジー群の定義にはいくつもの流儀があるが,重要なのは5つ(あるいは4つ)の性質である.Eilenbergはこの性質に着目し,ホモロジーを公理化してその一意性を示した.つまり,数あるホモロジーでもその性質を満たせば,同型になるわけである.特異ホモロジーについては色々な本があるが【加藤88】や【中岡99】などが面倒な定理等も丁寧に証明してあるので,初めて学ぶには良いと思う.どちらも主に係数を整数環と話しているので,基本を学ぶにはもってこいだと思う.