38-中国地方の地質

38-1. 産総研の情報

　国立研究開発法人「産業技術総合研究所」、通称・産総研は日本を代表する地質情報を有する研究所で地表・地下を含め滅多にお目にかかれない情報が公開されています。テレビ放送の地震解説でよくプレートの沈み込みの模式図やCGが放送される事がありますが、自分の住んでいる町の地下のどこにプレートが潜りこんでいるか知ることができます。
出典: ホームページ https://www.gsj.jp/information/index.html 地質図Navi https://gbank.gsj.jp/geonavi/ 地下構造可視化 https://gbank.gsj.jp/subsurface/index.html

38-2.広島市の地下は

　図38-1/2の図は産総研構造可視化のページで場所を指定して描画したものです。これによると広島市は地下50kmあたりにフィリッピン海プレートが潜りこんでいます。図38-3はプレートの位置・深さを等深線であらわしたもので中四国の広い範囲でプレートの位置を知ることができます。これによると広島県・山口県の県境あたりでくの字に折れ曲がった状態でプレートが沈み込んでいるのが読み取れます。プレートが100km程度の地下に達すると、岩石に混入している僅かな水と高圧・高温になった岩石が反応し岩の融解温度が下がる現象が発生し、マグマが生成、上昇し火山ができると地質学の書籍で述べられています。この等深線の100kmの位置沿いに大山(鳥取)・三瓶(島根)・青野山や萩の笠山(山口)など主だった火山が連なっているのが妙に納得できてしまいます。さて広島や呉を激しく揺らした芸予地震、2001年に蒲刈島沖で発生した地震の震源は51kmの深さですが、この位置はプレート境界から14-15km下で発生したことになります。

【図38-1】産総研の地下構造可視化サイトで知りたい地域の二点間を選択指示する。

【図38-2】この表のように地震の震源分布とプレートの上面深度が表示される。

【図38-3】出典: 気象庁・弘瀬冬樹博士ホームページ

http://www.mri-jma.go.jp/Dep/sv/2ken/fhirose/ja/PHS.html

38-3.広島市の地質図

　１億年前に日本がアジア大陸・朝鮮半島に接していたころ、大量のマグマが地下で固まり、日本で最大級となる花崗岩帯が生成されました。生成時期は1～0.6億年前でこの時期の花崗岩帯は書籍日本列島の地形学で「広島大変」と呼ばれ紹介されています。この時期にできた花崗岩(基盤岩)が現在の広島を形作っています。
図38-3上: 地質図の内容ピンク: 広島花崗岩白:最終氷河期以降1.8万年前から現在までにできた地層・堆積岩、具体的には砂や真砂土それに落下した岩石黄: 人工的に改変された土地です。
下: 東西を横切った青線部分の地下構造です。右側に青い部分がありますがこれが広島の三角州にあたり堆積層となります。

【図38-3】産総研・地質図Navi 5万分の一地図より抜粋

関連資料: 日本列島の地形学東京大学出版会 2010年出版

38-4. 己斐と広島三角州(東西)

　江戸時代は現在の本通り商店街が西国街道(今で言う国道2号線)にあたり、広島平和大通り(通称100m道路)は海岸線でした。100m道路沿いの白神社・しらかみしゃの常夜灯は花崗岩の岩礁のため船の難破を防ぐよう白旗を立て目印になっていた由来から白神社となりました。広島の三角州は東西約10kmの広い砂州ですが、その地下130mに達する場所に基盤岩である広島花崗岩があります。西広島駅から海田市までこの基盤岩は西に低く(-130m)、東の海田市あたりで地表にでてくる傾斜状になっています。
広島市内の三角州にところどころ白神社、比治山、黄金山など基盤岩が地表に現れる場所があり、江戸時代には島であった場所を経由しながら高度を増して次第に広島市の東部の山に吸収されていきます。まだ三角州が形成されるはるか昔、西広島駅や観音の川底-130ｍの位置から山を見上げると半径2kmにある山との標高差が400-500mとなり、急峻な地形であった事が想定されます。
※西広島駅の山々: 子茶臼199m、高峠山237m、茶臼山413m

【図38-5】広島市・三角州の地盤(東西)

【図38-6】A-B間の断面図と地下の基盤岩の形状

出典: 国土地理院・5mメッシュ、広島県西部地盤図(下記参照)

【図8-7】C-D間の断面図出典: 広島県西部地盤図

38-5. 己斐と広島三角州(南北)

　広島市の地下を調査したボーリングの柱状図の作成は大変数多く行われています。しかしながら地下150mまで掘削したものは高感度地震計の設置を除くとそんなに多くはありません。1986年に日本建築学会中国支部が発刊した広島県西部地盤図には、広島県内の随所のボーリング結果を柱状図としてまとめ一覧でみれる貴重な書物を発刊しています。一例ですが広島市西区観音にあった旧広島空港～横川～緑井～阿武山に達する断面図を見てみましょう。いったいどのようになっているのでしょうか。

【図38-8】広島市・三角州の地盤(南北)

【図38-9】E-F間の断面図旧広島空港では深いボーリング調査が行われている。市内のボーリング調査はほとんどが30m程度。

【図38-10】F-G間の断面図祇園大橋～緑井

38-6. まとめ

　広島市・三角州の地下の基盤岩は意外に深い谷底であり、西から東に向け高くなる地形でした。その上に一億年程度かけ太田川が運んだ真砂土・砂・粘土が積み重なり現在の砂州になりました。

Page updated

Google Sites

Report abuse