2016/1/22 Class 13

投稿日: 2016/01/22 8:42:56

記録

  • 大学入試センター試験で出題された囚人のジレンマの問題の不備について 1030-1038

  • 渡辺6章.1120 まで

    • 問題解説3 (期末試験の対策)「課題のあつかい」で「期末直前」とあるもの.1200まで

      • 補助教材演習 2.6

    • 12名出席 (ただし1名は11:20入室).欠席者のうち1名は中間1以降ずっと欠席,1名は2回連続欠席,3名は前回出席.

アナウンスメント

  • 問題解説3の動画はないので次週は欠席しない方がいい.

    • 期末試験の前日建国記念日はオフィスがある図書館が休館のため対応しづらいので,代わりに前々日の2月10日水曜日にオフィスアワーズを設ける予定.その日の都合を確認しておいて欲しい.

  • Moodle でまだチェックしていない教材をチェックしよう.中間試験の正解例や2010年度の中間試験 3 などがある.

授業の内容への補足

「ゲーム理論: 補助教材」の 6.1節をチェックすること.

渡辺『図解雑学ゲーム理論』の「おわりに」に挙げられた文献はやや古い.より新しい文献は「補助教材」のいくつかの節にある「読書案内」やシラバスの「必読文献・参考文献」を参照してもらいたい.なお『図解雑学ゲーム理論』の絶版を受け本科目は来年度刷新される.「授業計画」の項目などが大幅に改訂された暫定版のシラバスも用意できたので,将来ゲーム理論あるいは経済学にまだかかわりを持ちそうな人は参考にするといいだろう.

[追記] 演習2.6 f について.ある混合戦略が相手のある戦略にたいする最適反応であるとき,その混合戦略にふくまれる純粋戦略 (その混合戦略が正の確率を与える純粋戦略) はどれも,相手のその戦略にたいする最適反応である.たとえば S1 ={U,M,D}, S2 = {L, R} とする.Player 1 の混合戦略 p = (1/3, 2/3, 0) (U , M , D をそれぞれ 1/3, 2/3, 0 の確率でプレイする混合戦略) が Palyer 2 の混合戦略 q = (3/4, 1/4) にたいする最適反応のとき,U や M 自体も q にたいする最適反応であるという意味.この結果は背理法で示すことができ,かりに U が最適反応でないばあい,U に正の確率を与えるよりは,ほかの M または D にすべての確率を与えた方が利得が高くなるはずである.以上で直観的には分かると思うが,分からなかった人のためにこの背理法について具体的な数値例でもう少し説明しておく.Player 1 の利得 u1 が以下の表で与えられているとする.

すると

u1(U, q) = u1(U, (3/4, 1/4)) = (3/4) u1(U, L) + (1/4) u1(U, R) = (3/4) 2 + (1/4) 6 = 3

u1(M, q) = u1(M, (3/4, 1/4)) = (3/4) u1(M, L) + (1/4) u1(M, R) = (3/4) 6 + (1/4) 2 = 5

u1(D, q) = u1(D, (3/4, 1/4)) = (3/4) u1(D, L) + (1/4) u1(D, R) = (3/4) 2 + (1/4) 2 = 2

となり,u1(U, q) < u1(M, q) だから U は q にたいする最適反応ではない.背理法の仮定は満たす例になっているので,矛盾を導びこう.u1(p, q) は

u1(p, q) = u1((1/3, 2/3, 0), q) = (1/3) u1(U, q) + (2/3) u1(M, q)

というふうに u1(U, q) と u1(M, q) にそれぞれ 1/3 と 2/3 の重みをつけて足し合わせたものになっている.この値は (計算すると 13/3 だが) 計算するまでもなく,u1(U, q) よりも大きい値を持つ u1(M, q) にすべての重みを与える戦略 p' = (0, 1, 0) を取ったときの利得

u1(p’, q) = u1((0, 1, 0), q) = u1(M, q) = 5

よりも低いことが分かる.すなわち u1(p, q) < u1(p’, q) である.よって p は q にたいする最適反応ではなくなり,もともとの前提に矛盾する.より正式な背理法は, U が q にたいする最適反応でないかぎりいつでも (上に与えた数値でな くても) 矛盾が導けることを示すことになる.

[蛇足; 独り言] 寒いのでミネソタ時代に買った朱色の重いセーターを着て行った.たしかクリスマスの次の日に買ったんだっけ.黒い革のコートは祖父からのお下がりだから最低でも50年,おそらく60年以上昔のやつだろうな.若い頃それ着てたら形が古臭いと指摘されたものだけど,一時期流行が再来して違和感なくなった.その後どうなったか知らないけど,もはやだれも指摘しなくなった.笑 かなりボロボロになってしまったけど,新しいのを買うのが面倒だ.

    • ちなみにファッション業界では毎年 (2年前に) 流行色を決めているのだけど,それを演習2.6 i の解答にあるような「コーディネーションゲーム」で説明する人もいる (たとえば川西諭『ゲーム理論の思考法』).

講義の冒頭で述べた大学入試センター試験問題の不備については,経済理論家である林貴志が「センター試験政治経済第3問の問2について」という記事を書いている.ゲーム理論が社会科学の道具として有用なのはその論理性ゆえである.(本日の授業では合理性から離れたプレーヤーをゲーム理論に取り込む話をしたが,そういったプレーヤーを記述する理論の方はあくまで論理的でなければならない.) この授業を受講したみなさんなら,上記センター試験問題のような非論理的な出題はしないはずだが,いかがかな.

課題および次回の予定

取り組むべき課題,読むべき文献,次回の予定については,シラバスの「授業計画」を参照.

  • 次回 Class 14 では期末試験準備のため問題解説 3 の続きをやる.「授業中に解説する課題一覧」で「期末直前」とあるもの.補助教材を持参のこと.可能ならば予習しておくといい.