ゲーム理論 授業記録 2009年度 (log)

ゲーム理論 (香川大学全学共通科目 2009 年度 数学 B) の授業記録.じっさいにやったことの記録のほか,学生へのアナウンスメントや 次回までの課題 などもふくむ.後者については授業計画]も参照すべき.

4/14/09 Class 1

やったこと

    • ホテリングモデル (梶井・松井239-242頁)をちょっと.(関連文献を必読に加えた.)

    • ガイダンス (この講義ページ). ここまでで40分.

    • 渡辺51頁まで.

60 名くらい出席.半数くらいが理系のようだ.久しぶりの学部生は GSM (マネジメント研究科,つまり香川大学ビジネススクール) の学生とくらべるとぼぉっとした感じに思えた.ゆとり教育世代だからといって,発言がどんどん出るわけでもないようだ.パソコンにアクセスできないなら手を挙げてと聞いたときに手を挙げたのは一人.期末試験のみで成績判定することに賛成したのはゼロ.オフィスアワーに来たのは一人.配布物をとりに来ただけ.

    • 本日言い忘れた隠し講義ページのパスワードは掲示と第2回授業で案内する.

    • ホテリングモデルについては奥野197-199頁にもある.

    • シラバスは14日にいったん確定とした.成績評価,必読文献と参考文献 1 (テキスト)の部分をだいぶ修正した.今後変更する場合はシラバス直後に明示する.

次回までの課題

    • 渡辺2章末まで読む.

    • 三原補助教材2節を読む.

    • 補助教材演習2.6 (類似問題は2.1, 2.2, 2.3, 2.5, 2.7).次週の小テスト対策になる.

    • 渡辺2章の59頁までの小テストを次回に予定.補助教材なども参考にして,「支配」「支配戦略」「最適反応」「ナッシュ均衡」を理解しておくこと.

4/21/09 Class 2

■アナウンスメントなど

    • 講義ページは授業記録を中心に頻繁に改訂して行く.(小テストの講評や,細かい疑問への解答など) 授業中には時間がなくて説明できないようなことも書くので,チェックした方がいい.

    • 隠し講義ページのパスワードを教えた.しばらくは教養の掲示版にも掲示される.

    • 講義ページの印刷に失敗したひとを尋ねたところ,1人くらいしか挙手しなかった.印刷を試していないのだろうか.うまく印刷できないひとのために,とりあえずこのページを pdf にしたもの (babygames09.pdf) を準備した.入手方法と最新版のリクエスト方法については,このページの冒頭を参照.

    • 出席者の大部分が教材を印刷できた模様.

    • テキストの入手状況.出席者はほとんどが購入した模様.

    • 本日は1230-3時頃までオフィスにいる予定.2時以降もできるだけ対応する.[3人が教材の印刷版をもらいに来た.]

    • 平凡助教授というひとが「大学新入生へ」という記事で,勉強法,勉強すべき内容,そして教員の選択について述べているので紹介する.大学時代に学んでおきたいことは多い.英語,韓国語,専門分野,専門外の関心ある分野,ゲーム理論,統計,情報リテラシー,線形代数と微分積分,抽象数学あるいは論理学,プログラミング,論文の書き方,宗教と思想,人間関係,人のマネジメント,恋愛,セックスなどなど.効率的にやっていこう.

■やったこと

    • 非協力ゲーム理論と協力ゲーム理論 (渡辺222-223頁).三原の専門はどちらかといえば協力ゲームに近い.ちなみに経済学部のゲーム理論家・天谷の専門は進化ゲーム理論や行動経済学.渡辺で言えばやはり最終章「最新研究トピックス」になる.

    • 渡辺52-59頁.時刻 1105 まで.

    • 三原補助教材2節.1142 まで.予想以上に時間がかかった.この科目でもっとも抽象度が高いトピック.この抽象レベルの話はこのトピック以外には出て来ないので,過度に心配する必要はない.

    • 小テスト.自分の解答と得点を記録しておくこと.1157 まで.

    • カウント遊び.2人と対戦.両方とも講師の勝ち.

授業計画から30分くらい遅れている.

■小テスト Quiz 1 について

受験者26名 (授業開始時26名で,途中1名以上入室したと思ったのだが),配点は9点.自分の解答と予想点数は記録しておこう.正解例,配点,講評を載せたファイル babygames09quiz1ans.pdf をファイル置き場左の「ナビゲーション」から行ける「小テスト (quizzes)」というページに置いた.

babygames09quiz1ans.pdf では,問 1 の (この講義ページにあった) 解説に「「D が M を支配する」という誤答」というミスがあったのを訂正.こういう重大なミスはメールなどで指摘して欲しい.(一週間以内に指摘がなかったら全員の点数から 5点くらいマイナスしたいのが本音だが,そうするかわりに) 指摘してくれたひとにボーナス点を与えることがある.

小テストの問題とは関係ないが,「授業の S とか R とか意味不明」とコメントがあった.戦略の組 にたいして実数 を対応させる関数である,利得関数 にかかわるコメントと思われる.授業中にも説明したが不十分だったのだろう.詳しくは補助教材の一部分の改訂途上版 (game09notes.pdf) の該当部分 (現バージョンでは補足 2.1 と定義 2.1) ほか,茨木 (2004) あるいは三原による別教材の第2章といった集合論の入門的解説を参照してもらうとして,簡単に補足しておく:

    • 太字の

  • はここでは「すべての実数の集合」を表す.実数とは数直線上の一点で表せるような数 (有理数と無理数をふくむ) を言うが,とりあえず「数」だとだけ理解してくれても問題ない.

    • というのはプレーヤー1の戦略の集合であり,どういう行動が選べるかを記述する. というのはプレーヤー2の戦略の集合.たとえば Quiz 1 のゲームでは, で となる.具体的なゲームが決まれば戦略を具体的に列挙できるが,ゲーム一般をあつかうときにはそうはできないために,プレーヤー

    • の取りうる戦略を抽象的な集合によって表現する.

    • 一般的に 関数

    • とは定義域とよばれる集合の任意の要素 (「 は の要素である」という意味) にたいして,値域と呼ばれる集合の要素を1つ対応させる関係である.集合 , をきちんと明示しないと関数を定義したことにはならない.そのため,上の利得関数の定義では,あえてそれらの集合を明示した.(最近のゲーム理論入門テキストでは記号化を嫌って,定義域や値域はおろか戦略集合

    • さえ明示的に記号化しないことが多い.[むかしとちがって最近は小学生に集合の記号を教えないためだろうか.] そのばあい,たとえば「任意の

    • について」と書くかわりに,「プレーヤーの任意の戦略 について」と言葉で書く.つまりプレーヤーの戦略の集合は記号化しないまでも分かっているものとして扱われている.)

    • すなわちプレーヤー

    • の利得関数 の定義域は で,値域はすべての実数の集合 であることが分かる.この定義域は戦略の組 の集合を表し,各 は に属する.つまり戦略の組は「だれがどの戦略を取るか」をすべて記述している.要するにあるプレーヤーの利得関数とは,各人の戦略の任意の組合せにたいして,そのプレーヤーの利得を与える関数である.

■次回までの課題

    • 渡辺3章を読み始めよう.

    • 三原補助教材2節の小テストを次回に予定.特に各定義と演習 2.4, 2.8 (f以外) に注意.(気づいてないひとがいるようだが,正解はネットで入手できる.シラバスの「必読文献・参考文献」を参照.) 奥野 190-196頁や茨木 1-6頁,そして補助教材の改訂途上版の一部である game09notes.pdf も参考に.

4/28/09 Class 3

■アナウンスメントなど (授業中に言っていないことも一部あり)

    • 授業前になにが教材かを尋ねて来た学生あり.この科目と関係ない講義ノートを何ページも印刷していた.必要な教材は講義ページにあるシラバスの「必読文献・参考文献」に挙げているとおり.その学生はいまだにシラバスをきちんと読んでいないことになる.それはひじょうにまずい状況だ.大学の授業はシラバスにもとづいて進められる.第1回目の講義の前か直後くらいにはその内容を完全に理解しておかないと,さまざまな不利益を被るだろう.

    • (授業にあわせてまじめに教材を改訂していくと,かえって学生を混乱させることになって悪いのだが……) 補助教材の改訂途上版の一部である game09notes.pdf を入手できるようにした.主として来年度以降の受講生のためのものであり中身が固まっていないところが多いが, 以下のような重要な修正によって,より親切な教材になっている:

        • 集合と関数や最大化問題の最適解にかんする補足を追加.

        • 数式の意味を説明したりする脚注を追加.

        • 戦略形ゲームの定義に定義番号を与えた.

        • 誤りやすい点などにかんするリーマークを追加.

        • ゲームの利得表の線を減らしてすっきりさせた.

      • 代表的な演習問題 (2.4, 2.6, 2.8) に手書きのものより丁寧な正解例をつけた.

    • 気づいてないひとがいるようだが,正解はネットで入手できる.シラバスの「必読文献・参考文献」を参照.

    • Quiz 1 の正解例,配点,講評も講義ページに載せた.(その後,独立したファイルに収めた.)

    • 先週紹介した平凡助教授の「大学新入生へ」という記事は,はてなブックマークで 23 個のブックマークがつくなど,なかなかの人気だ.これを読まずに大学生活を終えてしまう人がいると思うと,可哀相としか言えない.

    • その平凡助教授が「囚人のジレンマの作り方」という最新記事を書いている.この科目の受講者にぴったりの内容だ.「囚人のジレンマの利得は暗記しないといけないのか? あの数字はどうやって思いつくんだ? 手品じゃないんだから種明かしくらいして欲しい」という学生はぜひ読むべし.

■やったこと

    • 演習 2.4 (2人のときのナッシュ均衡の定義)の解説.

    • 小テスト (Quiz 2). 1047-1056. 解説が終わった時点で 1100.

    • 渡辺 2章 60-74 頁.1130まで.

        • ゲームの木の説明のとき,「グラフ理論」がコンピュータサイエンスの基礎のひとつになっていることに言及した.「グラフ」の概念は茨木 (2004) 1.4節にも載っている.高校までの数学とはひと味違っているはずだ.

    • 渡辺 3章 75-91 頁.1200まで.

        • この章は新しい均衡概念が出て来るわけではない.これまで学んだ概念をいろんなゲームの例で確かめて,その意味を理解していく.ひじょうに面白い読み物でもある梶井 (2002) を読み始めるにはいいタイミングだろう.きょうやった「インセンティブ」「コミットメント」などが章になっている.

■小テスト Quiz 2 について

受験者24名.8点満点.自分の解答と予想点数は記録しておこう.正解例,配点,講評を載せたファイル babygames09quiz2ans.pdf をファイル置き場左の「ナビゲーション」から行ける「小テスト (quizzes)」というページに置いた.

■次回までの課題

    • 渡辺3章をぜんぶ読もう.休み中で時間があるひとは,渡辺一冊を最後まで読むのもおすすめ.本というのは短期間に集中的に読む方が理解が高まるものだから.

    • 小テストを次回に予定:

        • 三原補助教材2節を再び.特に各定義と演習 2.4, 2.8 (f以外) に注意.3人のときのナッシュ均衡の定義など.補助教材の改訂途上版の一部である game09notes.pdf が準必読であるほか,奥野 190-196頁や茨木 1-6頁も参考になる.

        • 渡辺60-101頁.特に交互ゲーム (完全情報の展開形ゲーム) の解き方,交互ゲームの戦略 (72-73頁) に注意.

5/12/09 Class 4

■アナウンスメントなど

  • 大学の授業はシラバスにもとづいて進められる.その中身はきちんと理解しておけなければならない.

      • シラバスは学生と講師との「 約束・契約 」の機能を持つ.たとえば「中間試験で60点以上を取れなかった学生は不可とする」といった重要な約束事も書いているので,その中身には注意しなければならない.

      • シラバスは学生に 学習の手がかりを与える.特に「必読文献・参考文献」は重要な学術情報 なので,暗記したほうがいいくらいだ. (図書館教員としての偏見も入っているが) ある分野を学んだと言えるには,その分野で代表的な文献は何なのかくらいは把握しておいたほうがいい,まともなシラバスはその手がかりを与えるものだ.

      • 学生による 授業評価を責任を持って公平にできるため にも,学生はシラバスをきちんと理解しておく必要がある.完全にシラバスに沿って行った科目の授業評価で,「この科目はシラバスに沿って行われましたか」という質問に最高評価をくれない学生がいたら個人的にはがっかりする.「シラバスを読んでないんじゃないか」と思ってしまう.あと,(講師がその科目にたいして熱意を見せるよりは学生が熱意を持つことの方が重要だと思うけど) 「講師は熱意をもってこの科目を教えましたか?」という質問に最高評価をくれない学生がいたら,個人的にはこれもがっかりする.「講義ページを読んでないんじゃないか」と思ってしまう.熱意なしでここまで充実した講義ページはなかなか作れないんじゃないかな.

    • 高校の数学では演習の時間を設けていたかもしれないが,大学の数学では (特に演習の時間を設けている例外的な科目を除いて) 演習は基本的に自分でやることになる.自習時間を週4時間は確保すべき. (これは単位制度上の要請である.学則から分かるように,2単位の授業は90時間の学修を必要とする.そのうち30時間分は15週の講義 (1回2時間と数える) でカバーするが,残りの60時間は自習でカバーすることになっている.つまり標準で週4時間自習するものと想定されている.)

    • 高校とちがって 合格点が60点であることにも注意.教員はこの基準に必ずしも従うわけではないが目安にはしているので注意.

    • 講義直後に Quiz 3 問題 4 (時間差じゃんけん) についてたずねる学生がいた.「戦略」の意味を理解していなかった.Quiz 3 の正解例で「戦略」の意味をくどいくらい説明したので,よく読んでおいて.

■やったこと

    • アナウンスメント,ひとりゲームつまり意思決定の例 (小豆島,洗濯機) 1045 まで.

    • 小テスト (Quiz 3). 1045-1054, 説明 1102 まで.

    • 渡辺3章 92-120 頁.1102-1205. セカンドプライスオークションで参加者は自分の評価額をそのまま入札するのが弱支配戦略になっていることの別説明は,このページの「テキストへの訂正・コメントなど/渡辺」の「113頁下半分」を参照.

■小テスト Quiz 3 について

受験者21名.8点満点.自分の解答と予想点数は記録しておこう.問題ファイルと正解例,配点,講評を載せたファイルをファイル置き場左の「ナビゲーション」から行ける「小テスト (quizzes)」というページに置いた.

■次回までの課題

    • 武藤71-93頁を読む.次回の授業にはこの本も持って来ること.

    • 渡辺 4章133頁まで読む.

    • 補助教材 (ファイル置き場にある改訂途上版 game09notes.pdf) 演習 5.1–5.5

    • 補助教材 演習 2.9, 2.10 (この2題はやや発展的; すぐには解説しないが,もうできるはず)

5/19/09 Class 5

■アナウンスメントなど

    • 小テストや期末試験の成績を個別に通知することを検討中.以下のいずれかの方法になる予定.

        • 大学のメールアドレスへ送信.周知の通りメールは配送中に覗き見されるリスクが少しある.メールで成績を報せてもらいたくないひとは本日1530時までに直接申し出るか,あるいは次回の授業までにメールで申し出て欲しい (受領確認を送る).

        • 香川大学 Moodle による通知.本日より成績ページへの通信を暗号化しはじめるなど,香川大学 Moodle を成績通知に使うための環境は整いつつある.この科目でも試行的にこれを利用するかもしれない.そのためには成績受け取り希望者のみなさんの参加が欠かせない.協力してくれる受講生は「ゲーム理論 (数学 B; 三原) 2009年度」に参加して欲しい.Moodle をはじめて利用する学生は別途登録が必要.やり方は Moodle 上に載っている.

■やったこと

出席者は22人

    • アナウンスメント.1038 まで.

    • 渡辺4章 121-133 頁.127ページまで 1104; 133頁まで 1130.

        • 国際政治とか政治哲学とか鳩山由紀夫の専門オペレーションズリサーチについてなど,数学とはあまり関係ないコメントが予定より多くなった.

        • 社会選択理論は三原の専門.こちらの社会選択理論 10 分間コースでは,本日やった投票のパラドックス (コンドルセのパラドックス) にもかかわる根本的な問題を紹介している.

        • なぞなぞ.ところでコンドルセや上のビデオに登場するボルダやアローに続く投票理論家はだれでしょう? どうでもいい記録 その 2 を参照.

    • 武藤 71-88頁.

        • 部分ゲーム完全均衡を理解するために必要な概念に焦点を合わせて解説した: 部分ゲーム,展開形ゲームのナッシュ均衡,展開形から戦略形へ,戦略,情報集合.

        • 展開形ゲームの理論にかんしては,奥野4.4-4.5.3節が論理展開が明快で武藤71-93頁の代替になりうる.武藤の説明がくどいと感じるひとは奥野を読むといい.ただし例が簡単すぎるかもしれない.

■課題

    • 渡辺 4章153頁まで読む.

    • 補助教材 演習 3.12 (正直な投票と戦略的投票にかかわる問題)

    • 補助教材 演習 3.1-3.4

    • 武藤 114-115頁 練習問題 1-5 (正解は三原 game04ans.pdf にある)

    • 小テストは2週間後?

5/26/09 Class 6

■アナウンスメント

    • 日本語ではいろんな土地やいろんな時代の読みかたで漢字を読む.だから 「部分ゲーム完全均衡」は「ぶぶんげーむかんぜんきんこう」とも読めるし,"subgame perfect equilibrium" とも読める. どちらで読んでも構わないが,両方知っていることが望ましい.用語によっては和訳がなかったりばらばらだったりするので,日本人経済学者同士で話していても,英語で言わなければ通じないことが少なくない.まあ,その傾向はコンピュータ関係ほどではないだろうけど.

    • 2009/05/26 16:12 ころ「ゲーム理論の担当講師からの配信」というタイトルのメールを配信した.確認のこと.小テスト成績の配信に先駆けて,今回の配信では各学生を特定する情報を送った.メールが届いていないひと,自分以外の個人の情報が載っていたひとはお返事よろしく.自分の情報が正しく載っていたという受領確認も歓迎する.大学以外のアドレスから返事してくれても問題ないが,こちらから成績配信するときは大学のアドレスに送る.

        • 医学部所属の2名については配信失敗のメッセージが届いた.正しいメールアドレスを教えてください.

    • 次回のメール配信では,メールアドレス以外に個人を特定する情報は載せずに,これまでの小テストの結果を列挙する予定.

■やったこと

    • アナウンスメント.1040まで.

    • 武藤 88-93頁.1105まで.

    • 渡辺 4章134-145頁.

        • インフレがなかったとしても現在の1万円は一年後の1万円より価値が高い.来年の1万円はこの一年間は使えないが,現在の1万円は使える.それだけ用途が広い.用途が狭いと価値が低くなるのは,たとえば特定の店でしか使えない千円クーポンを考えれば分かるだろう.あるいは「今月分の給料は来月渡します」と言われたときのこと考えれば分かるだろう.

        • 交渉のところでちょっと触れたゲーム理論と軍事の関係については,とりあえず米軍に近いランド研究所とかゲーム理論の創始者でマンハッタン計画にも加わったジョン・フォン・ノイマンを挙げておこう.昔は軍事もトップレベルの学者を集めるほど魅力的な産業だったわけだ.

        • きょう触れる予定だった話題のひとつに実験経済学がある.わが国の代表的実験経済学者に香川大学出身の西條辰義がいることは知っておこう.最近は神経経済学にも手を出している,新しもの好きな学者である.

        • 繰り返しゲームにかんする奥野4.5.5節は武藤 III.7 節よりむずかしくて話題が限定されている.しかし渡辺の関連部分を読んだ上で参考にするには奥野のほうがいいかもしれない.

■課題

    • 渡辺 4章166頁まで読む.160−163頁はとばしてよい.

    • 武藤45-53頁を読む.

    • 補助教材 演習 3.13, 3.6, 3.8, (改訂途上版の) 5.6

    • 来週小テストを予定.渡辺102−139頁および武藤71-93頁を範囲とする.小テストでは基礎理論を重視している.特に以下を重点的に準備しておくとよい:

        • 展開形ゲームを戦略形に直す方法および部分ゲーム完全均衡.武藤 114頁練習問題 1 のゲーム,そして同88頁図3-9丸2を純粋戦略のみ考えればいいように単純化したゲームくらいは解けるように.

        • 情報集合の意味.特に武藤115頁練習問題 5.

6/02/09 Class 7

■アナウンスメント

    • では,こんな感じで週末をつぶして準備したクイズをやろう.

    • Date: Tue, 2 Jun 2009 17:48 ころ「ゲーム理論の担当講師から」というタイトルでこれまでのクイズの成績を配信した.メールボックスを確認のこと.全体的な統計は講義ページに載せた.疑問がある場合は三原まで連絡よろしく.なりすまし対策のため,大学以外のアドレスから成績について問い合わせるときは,送ったメールの全文 (あるいは少なくとも学籍番号,学部ナンバー,履修登録日付,そして成績にあたる部分) を引用した上でどうぞ.

■やったこと

    • 小テスト Quiz 4. 1037-1047.30, 解説 1103 まで.

    • 渡辺 4章146-166頁.1200 まで.

        • 134頁以降では,それまでの議論と違ってゲームの利得の数字自体に意味がある.割引や確率で利得を重みづけて足し合わせる状況.数字の大きさを自由には変えられないことに注意.それ以前の議論では数字の大小関係だけが意味があったため,大小関係さえ変わらなければ数字を変えてよかった.

        • tit-for-tat {名} の辞書的な意味: 仕返し、報復、しっぺい返し、腹いせ、意趣晴らし、意趣返し、応酬、売り言葉に買い言葉.(学術用語を普通の辞書で調べても正確な意味は載っていない.ただ,聞き慣れない用語の日常的な意味を調べるには辞書は役に立つ.)

■小テスト Quiz 4 について

受験者23名.8点満点.自分の解答と予想点数は記録しておこう.問題ファイルと正解例,配点,講評を載せたファイルをファイル置き場左の「ナビゲーション」から行ける「小テスト (quizzes)」というページに置いた.

あまりできがよくなかった.オフィスアワーに質問に来るなどして疑問点を解決して欲しい.誤った解答で,そうなる理由が分からないものが多かった.誤った解答をした合理的・説得的理由をしめしてくれればクイズ点に加算することがある.オフィスアワーに来るか,メールで連絡を.

■課題

    • 渡辺5章読み始める.

    • 補助教材 演習 3.6, 3.8, (改訂途上版の) 5.6

6/09/09 Class 8

■アナウンスメント

    • これまでのクイズの成績を先週メール配信した.大学のメールアドレスに配信したのだが,自分のアドレスを知らないという学生もいた.総合情報センターにでも問い合わせてメールアカウントを有効化しないといけないかもしれない.図書館の2階でもできるかもしれない.いずれにせよメールアカウントの利用法をボクに尋ねても分からないので,友人か情報センターのひとに尋ねてください.

    • 試験では主として最終的な解答で判断することになるが,問題によっては途中の論理展開の方が大切.自分のユニークな論理展開を講師に説明してみたいひとは,本試験のかわりに追試験か再試験を受ける手がある.いちぶ口頭試験になる可能性があるためだ.(ただし再試験や追試験を受けるための条件は厳しいので,事前にチェックのこと.) あるいはオフィスアワーにでもやってきて説明する手もある.

    • 教育面にかんする自己紹介 を少し.国際基督教大学の学部では国際政治学や政治学からだんだんと経済学および数学に専攻を移し,ミネソタ大学では経済学の博士を取得する一方で数学の修士も取った.また,経済学やビジネス専攻の学生に数学や経済学を教えた.香川大学では最初経済学部,のちに大学院地域マネジメント研究科で社会人相手に夜間に教えていた.これは言わなかったけど,ミネソタの学生はもちろん,日本人の夜間の学部生も大学院生も授業中の質問や発言は多かった.(その方が学生の満足度も高まるようだ.) 昼間の学部生は発言や質問がほとんどないので分かっているのかどうかが判断しづらく,同じことを何度も繰り返して説明することになり,かえって時間がかかったりする.

    • 上述のようなインターアクションのある少人数授業では概して評判のよかったボクの教授法だが,大人数授業になるとどうだろう.「 授業を受けると分かった気にはなるが, 問題を自分で解こうとするとなかなか解けない」と言われる傾向はあるようだ.各自問題演習を自分でやってもらいたいという思いがある以上,それはある程度狙った結果だ.

        • ためしに「講師の教え方が悪いと思うひと」と尋ねたとき手を挙げた学生はいなかった.「それじゃ,あとの自習の部分はみなさんよろしく」と言いたいところだが,もちろんこれでは本音を聞き出せる尋ね方になってないから当てにはならない.無記名のアンケートになると「教え方がヘタなあんたのような教員にかぎって難解な専門用語を使って煙に巻く」とか「英語の授業でないのに英単語が出て来るのはおかしい」と言った無茶なコメントも出て来るからね.一般の読者向けに書くエッセイなら確かに専門用語を避けた方が伝わりやすいことが多いが, いまの聴衆はゲーム理論という専門分野を学ぼうとしている学生であって一般人ではない ことを理解して欲しい.

        • 授業評価のための無記名アンケートにもそれ特有の問題がある.いろいろ質問があるが,けっきょくどの質問も「 あなたはこの教員を好きですか?嫌いですか? 」と読み替えて答えているとしか思えない学生があとを立たない.この講義に関しては,「好きだからぜんぶ最高点」は構わないが (笑),「嫌いだからぜんぶ最低点」は止めてくれよというのが本音だ.( 学問を神格化してはならない という信条を持つなどの理由で) 攻撃的な発言が多くて敵を作りやすい自分は,平均的には損をしているかもしれない.(ボクのことを「人格的に教員にふさわしくない」などと言いふらす---たぶん人格的にひじょうに優れているであろう(爆笑)---教員や学生もいるようだ.受講生ではないけど.) いずれにせよ,質問は教員の人格や好き嫌いを尋ねているわけではないという基本的認識だけは持った上で回答しよう.

■やったこと

23名出席.

    • アナウンスメント.1045まで.

    • 武藤45-53頁,1115まで.

    • 渡辺 5章177頁まで.

        • 受講生のほとんどがリスク回避的であるようだ.あるひとがリスク回避的であれリスク選好的であれ,不合理ということにはならない.ゲーム理論が想定する「合理性」はそこまで厳しいものではない.あくまでもリスクに対する好みはひとそれぞれということである.

■課題

    • 渡辺 5章199頁まで.

    • 武藤 68頁,練習問題1 (マックスミニ戦略とマックスミニ値は除外.)

    • 補助教材 (改訂途上版の) 演習 5.7

    • 小テストは来週はやらない.

6/16/09 Class 9

■アナウンスメント

    • 本日のオフィスアワーズ (1230-1400) は,図書館3階奥の無線ネットのある場所にいるかもしれない.会いたい人はそちらもチェックしてもらいたい.1400-1700 は図書館3階奥ほか図書館周辺あるいはオフィスにいる可能性が高い.対応できるかどうかはその場で尋ねてほしい.

    • 講義ページを毎週読もう.残念ながら読んでいると意思表明した学生は10名もいなかったが,講義ページは授業の重要な一部を構成している.

■やったこと

21人出席.

    • アナウンスメント.1039まで.

    • 渡辺 5章 178-195頁.

        • 183頁のゲームの利得と193頁のゲームのプレイする順序について重要な指摘をした.しかし前者の授業中の説明は要領が悪かった.(分からない人は気にしなくていいという気持ちが強くて,中途半端な説明になってしまった.) 要するに著者のところの数値は確実性同値額であって,期待利得自体とは異なるのだが,われわれの分析のためには前者で問題ないということ.渡辺 (2004) へのコメントを参照.

        • 195頁では区切りが悪いので,復習するときは 199 頁まで読んだほうが効率がいい.

        • 暑くなって来たせいか居眠りしているひとが数名.そういうひとは心配だ.5章はむずかしいから自分でテキストを理解するには相当努力が必要だからだ.かといって他人に迷惑をかけているとも言えないので放置しているが,どうもこちらまで力が抜けて来る.居眠りしているひとだけでなくて,全体的になにかぼおっとした感じが強かった.満足度が高い少人数授業のように,こちらからどしどし質問しようかなあ.

■課題

    • 渡辺 5章

    • 補助教材 (改訂途上版の) 演習 5.8

    • 補助教材 演習 4.3-4.7

    • 武藤 135 頁 練習問題 1, 2

    • 小テスト Quiz 5 は二週間後? 配点はこれまでより高い12点ていどを考えている.そのばあい,これまでの小テスト点が18点以上だったら最終的な小テスト点は満点の30点の可能性がある.18点はランクで言えば12番目で,中央値17点とほぼ同じ.ほぼ半数の学生が小テスト点で満点を取る可能性を持っていることになる.

6/23/09 Class 10

■アナウンスメント

    • 小テストではその後の授業の理解のために欠かせないものを重視して,問題を具体的に絞って予告してきた.たとえば情報集合とか戦略の概念である.最低限小テストだけでもきちんと復習していれば一定の理解度を保てるはずであり,逆にそれさえやらないならば理解はかなりあやしいものになっている可能性がある.いくらなんでも小テストの準備や復習くらいはほとんどの学生がやるだろうから, これはわずかな努力でも落ちこぼれないようにするための工夫だった. ところが最近の小テストの結果をみるとその考えは甘かったかもしれない.学生にうまくインセンティブを与えるのはむずかしい.

■やったこと

19名出席.

    • 渡辺 5章 196-212頁.

        • 授業中に指摘した,「エイズ検査で陽性が出た場合に実際にエイズにかかっている条件付き確率」の求め方は,ベイズの定理の応用問題として確率論や統計学のテキストによく載っている.Web 上の情報としては,たとえばこちら記事の「感染者問題」が分かりやすいだろう.この授業で出てくる条件付き確率はこの問題よりは簡単.

        • 203頁で,金太郎が資格を取得してもホヤ商事にとっての価値は変わっていないことに注意.つまり資格取得は能力を高めないとほぼ仮定している.どうやってこの仮定を正当化できるのかは,渡辺 (2004) へのコメントの 203頁のところを参照.

        • ちなみにシグナリングの理論を提唱したスペンスは,大学の卒業資格を例としてもちいた.シグナルが効果を持つのは,卒業するためのコストが能力の高低によって異なるという点にのみ依存し,大学でなにを学んだかには依存しない.卒業できない者も多い米国大学で言えば,大学での教育が能力を高めたかどうかは関係なく,落ちこぼれずに卒業できたという事実がシグナルとして機能するということ.容易に卒業できてしまう日本の大学でいえば,大学での教育内容に関係なく,潜在能力のある人間が入学試験で選別できてさえいれば,その大学へ入学できたという事実がシグナルとして機能するということ.なんだか米国大学よりも日本の一流大学文系のほうが当てはまりそうな感じがする.

        • ところで大学生にとってもっとも重要な能力のひとつは,自分ですすんで勉強する能力だろう.(大学で学ぶ内容を補習する予備校があるわけじゃないし.) ところがそういう能力を持つ学生をうまく選別するのはむずかしいようだ.

■課題

    • 補助教材 演習 4.3-4.7

    • 武藤 135 頁 練習問題 1, 2

    • 補助教材 演習 5.9, 5.10 (渡辺208頁の完全ベイズ均衡の存在にかんする2つの主張をしめす問題; ファイル置き場にある改訂途上版 game09notes.pdf)

    • 来週小テストを予定.配点は12点以上.渡辺140-211頁および武藤45-53頁を範囲とする.特に以下を重点的に準備しておくとよい:

        • 混合戦略によるナッシュ均衡の計算法.

        • 完全ベイジアン均衡の求め方.与えられた戦略と信念の組が完全ベイジアン均衡かどうかを判定するなど.

6/30/09 Class 11

■アナウンスメント

    • 演習問題の解説や質問への応答のための時間を多く取るために,シラバスにある予定より多少早く進めている.

    • 来週以降は課題を順番にやっていく.易しすぎるもの,テキストを読ませるだけの問題,すでに十分解説した問題などは,特に希望がないかぎりスキップする.渡辺のテキストのほか,補助教材 (来週までに最終版になる予定),演習問題の正解,武藤のテキストも持ってくること.

    • 期末試験が近づいて来たので,過去問題へのリンク集を載せた.

    • 科目の勉強は期末試験直前にだけやったほうが効率的と思っている学生がいるかもしれない.暗記を中心とする科目ならそういうこともあるが,理解を中心とするこの科目にはその考えは当てはまらない.暗記することに比べて理解することは必要時間を予想するのが困難なので,理解を中心とする科目で直前の勉強のみに頼ることはリスクが大きい.試験直前にはテキストをぜんぶ読み直す余裕はないだろうから,演習問題や過去問題を見直すことで,テキストから再確認すべきことや記憶すべきことを拾って行くとよい.

        • そういうふうにテキストを使えるようになるためには,あらかじめ時間をかけてテキストと問題をひととおり理解しておいた方が無駄がない.いずれにせよ暗記すべき事柄は限られている.学期中は暗記することを気にせず時間をかけて理解することを重視しよう.そうすれば試験直前には,すでに理解したことの見直しに集中できる.普段の勉強法と試験直前の勉強法は分けて考えた方がいい.

        • よく試験対策書などに「試験勉強中から時間を区切って問題を解け」などとあるが,そうなるまでにはステップが必要であって,はじめからそういう勉強をしても効果は薄い. (すでに理解している問題を解くスピードが上がるくらいだろう.) 分野にもよるが,準備時には試験で許される時間の数十倍かかることはざらである (と経験者は語る).

        • 以上は理解を中心とする科目にかんするアドバイスだが,たとえ暗記を中心とする科目であっても,忘れることを前提にして学期中に一度覚え,試験直前に記憶をリフレッシュした方が長く記憶に残ると思う.

    • 本日は新しいゲーム理論について簡単に紹介する.新しい傾向に興味があるなしにかかわらず, なんらかの学問分野をマスターしようとするひとは,最新のテキストやサーベイ記事そして大学の科目シラバスなどにある文献案内を参考にして,いい本を見つけることからはじめよう. (経済学のばあいたとえば『経済セミナー』に易しいサーベイが載ることがある.) たまたま見つけた古い本や偏った本で勉強すると独学のわなに陥って方向を誤りやすいので,学者を目指す人は特に注意.

■やったこと

    • アナウンスメント.1030-1043.

    • 小テスト Quiz 5. 1044-1104. 解説は 1124 まで.

    • 渡辺 6 章.1205 まで.

        • 「つらい時代」関連で「三原の研究評価は学内的には最低」と言ったのは言葉の綾というもので,かなり不正確だった.科研費をあじめとする研究費を獲得しない研究者および獲得 しようとしない 研究者がかなり不利になるのは事実だが,経済学界的な基準である国際ジャーナルへの論文掲載の効果を無にするほどの影響力はない.いまのところ三原の研究は学内的にも高い評価を得ている.決して無能な研究者ではないので,学生のみなさんは 安心し信頼して ついて来てだいじょうぶ (笑).科学研究費について関心があるひとは,平凡助教授の記事「科学研究費補助金のデメリット」でも読んで考えるといい.

■小テスト Quiz 5 について

    • 受験者22名.12点満点.問題ファイルと正解例,配点,講評を載せたファイルをファイル置き場左の「ナビゲーション」から行ける「小テスト (quizzes)」というページに置いた.

    • ひじょうにできが悪かったが,まだ挽回できる.これから数週間後には「こんなに簡単な問題ができなかったなんて」と振り返る学生が続出することを期待する.

    • これまでのクイズの全体的な統計は講義ページに載せた.

    • 小テストはこれでおしまいにするつもりだ. 課題の解説をはじめようというこの期におよんで 出席を促す効果もないだろうし.ただ,シラバスの「成績評価の方法と基準」によれば,あと1回やることは許されている.しかも突然やってもいいことになっている.魔がさしたらやるかもしれない.

■課題

    • これまでの課題を順番に復習していこう.ていねいに説明してもらいたい問題を選んだり,質問を考えたりしておいて欲しい.説明を希望する学生がいない問題はとばすことがある.

7/07/09 Class 12

■アナウンスメント

    • Date: Tue, 30 Jun 2009 21:25 ころ「ゲーム理論の担当講師から」というタイトルでこれまでのクイズの成績を配信した.メールボックスを確認のこと.全体的な統計は講義ページに載せた.疑問がある場合は三原まで連絡よろしく.なりすまし対策のため,大学以外のアドレスから成績について問い合わせるときは,送ったメールの全文 (あるいは少なくとも学籍番号,学部ナンバー,履修登録日付,そして成績にあたる部分) を引用した上でどうぞ.

        • 大学アドレスに届いたメールはこちらの webmail にログインすることで確認できる.ユーザ ID とパスワードについては,同ページの右欄「利用案内」の該当項目を参照.

        • Gmail など一部の Web メールを利用すれば,どこからでも大学アドレスを使った送受信ができる.送信が出来ない場合でも,大学アドレス宛に来たメールをほかのサーバに転送するように設定することはできる (やや高度).

    • 総合情報センターがメール検閲をはじめた.検閲に引っかかったメールは届けられないため, みなさんからのメールが届かない可能性が増大した (これまでは可能性はほぼゼロだった).今後大学アドレス宛にメールを送る場合は注意. 三原宛のメールに返事がないときは,べつの方法で早めに確認したほうがいい (通常は2日以内に返事する).もちろん (こちらの記事などを参考にして) 文句は付けているが,総合情報センターが対応する様子はない.

    • これまでの小テストの結果から判断するに,授業の進行にあわせてやっておくべき課題をさぼってきた学生が多そうだ.うれしくない現実だが,反面,多くの学生が,今週からはじまる課題の解説の ありがたみ (笑) を分かってくれるんじゃないかと期待する.気を取り直してやっていこう.解説を聞く前にあらかじめ正解例を読んで,分からないなりにも悩んでおくと効果的だ. いちど分かってしまえば,「どうして自分はこんな簡単なことが分からなかったのだろう」「どうしてあんな無意味なまちがいをしたのだろう」と思うようになるはずだ. 夜間主の学生にゲーム理論を教えたときも,学期末にそういう発言をする学生があいついだ.

    • 補助教材 (game09notes.pdf; 7月3日) をアップロードした.今週からの解説ではバージョン 9 を用いるので,入手して印刷しておくとよい.旧バージョンではページ番号や定義番号が講師のものと異なるので注意.

■やったこと

出席者は17名.むずかしい演習をあつかったわりには,一部でかなり急いだ.特に図による直観的説明を重視し,板書は少なめだった.各自しっかり復習して,解答文を理解しておいて欲しい.

    • アナウンスメント.1037まで.

    • 戦略に整合的な信念について補足 (教材なし). 1055まで.

    • ホテリングモデル (梶井・松井239-242頁とそのノート; 奥野197-199頁にもある)

    • 補助教材 演習3.10 [梶井・松井練習問題13.1, 13.2; 13.2 の説明は省略したので各自でやること.] 1120 まで.かなり急いだ.

    • 補助教材 演習 2.9, 2.10. それぞれ1143, 1155 まで.特に後者はかなり急いだ.

    • 課題を最初から順番に.演習2.4.1204まで.

渡辺のテキストのほか,補助教材,演習問題の正解,武藤のテキストも持ってくること.

■課題

    • これまでの課題を順番に復習していこう.ていねいに説明してもらいたい問題を選んだり,質問を考えたりしておいて欲しい.説明を希望する学生がいない問題はとばすことがある.

    • 過去の試験問題もチェックしよう.

7/14/09 Class 13

■アナウンスメント

    • 本日および来週は (すまないが先週火曜日に掲示したとおり) 延長して12:30 までやる予定.教室で食事するときは12:00以降,ほかのひとの迷惑にならないように.

    • 室温の設定をあつかった演習 2.9 にコメントしておく.集計に中央値を使うばあい,各人にとって自分の最適温度を答えるのが弱支配戦略であった.たとえば中央値よりも低い最適温度を持っているひとは,それよりも低い温度を答えても結果には影響を与えられない一方で,それより高い温度を答えると結果を高める方向にしか影響を与えられないためである.

        • ところで授業評価では中央値を使えばうまく行くという議論がある.たしかに平均値よりは中央値を使った方がマシだとは思えるが,楽観はできない.というのは学生が内心で思ってる評価と公表されて欲しいと思ってる評価結果にギャップがあるためだ.5 段階評価でたとえば内心では 3 と思っているような授業でも,その教員が嫌いだったりすると公表結果は最悪 (1 か 5 か知らんが) になって欲しいと思うことがあるだろう.そのとき各人は後者の評価をつけるのが理論上つねに最適になる.内心思っている情報は理論上も引き出せない.

        • 教養科目の授業評価での集計方法は平均を用いていたと思う.要するにみなさんの誠実さがなければなりたたない評価方法である.あと,単にその教員を好きか嫌いかで答えるものではないことに注意.

    • 期末試験は過去問とちがって選択式より記述式が多くなりそう.小テストと大差ない.その他考えられる問題例.

        • ゲーム理論とその意義について1000字ていどで述べよ 」 →ほかの科目ならありそうな問題だが,この科目ではたぶんこういう出題はない.自分なりにまとめるならまだ意味があるかもしれないが,ひとがまとめたものを暗記して転記する作業が学生の問題解決能力などの向上に役立つとも思えない.ある学問の現状を知るくらいの効果しか期待できないのでは.

        • 自分が好きなゲームを10個挙げ,それぞれについて適当な解概念を定義し,その解を求めよ.ただし,戦略形ゲーム,展開形ゲーム,不完備情報ゲームのそれぞれを最低1つはふくめること.また,解概念としては,支配戦略均衡,ナッシュ均衡,部分ゲーム完全均衡,完全ベイジアン均衡をすべてふくめること 」 →大部分の過去問題はある意味この問題の一部と言える.「自分が好きなゲーム」を挙げてもらうかわりに,講師が指定するところがちがうだけ.追試験や再試験には使えるかもしれない.

■やったこと

出席者ははじめ9名,真ん中あたりで14名.少ないなあ.括弧内に断りなく演習番号があるものは各自やってもらいたい.ただし「各自」となっている問題も質問があれば解説する.

    • アナウンスメント 10:45 まで.

    • 補助教材 演習 2.6 (支配あるいは弱支配の定義は試験に出す予定), 2.8 g, h, i, j (その他は各自で).1100, 1110 まで.

    • 補助教材改訂途上版 演習 5.1, 5.2, (5.3, 5.4, 5.5 は各自で) 1126まで.

    • 補助教材 演習 3.12. 1138 まで.

    • 補助教材 演習 (3.1, 3.2, 3.3 は各自で;3.2と3.3は5.1の類題), 3.4

    • 武藤 114-115頁 練習問題 (1), 2の3-3 (3-1, 3-2は各自で) 1134まで, (3), 4, 5. 1200 まで

    • 補助教材演習2.8, a-f. 1220 まで.

    • 質問に回答.終了後にいくつか質問あり.利得関数の表記,展開形を戦略形になおすときの戦略,信念の整合性など.

■課題

    • シラバスを読み直しておくこと.授業評価の質問に的確に答えるためにシラバスを正確に理解しておく必要がある.

    • これまでの課題を順番に復習していこう.ていねいに説明してもらいたい問題を選んだり,質問を考えたりしておいて欲しい.説明を希望する学生がいない問題はとばすことがある.(どうでもいいが,アメリカの大学で教えていたとき学生はよく質問してきた.ただし「 これは試験に出ますか? 」という,あまり工夫されたとはいえない質問がいちばん多かった気がする.)

    • 小テスト過去の試験問題もチェックしよう.

7/21/09 Class 14

■アナウンスメント

    • 本日は延長して12:30 までやる予定.教室で食事するときは11:30以降,ほかのひとの迷惑にならないように.

    • 試験前情報に期末試験の出題形式や辞退のあつかいなどについて載せた.見ないと損.

    • 学者を目指すひとにとって,特定の研究対象に関する知識を獲得することだけでなく,ゲーム理論や統計学 (理論および統計解析プログラム) のような 研究方法 をマスターすることが大事だと何度か言って来た.ゲーム理論は,理論をつくって現象を説明する方法を提供し,統計学は事実を明らかにする方法を提供する.「自分は学者にはならないから関係ない」と思うかもしれないが,MBA (経営学修士) プログラムではゲーム理論や統計学がひじょうに重視されていることを思い起こして欲しい.じつは ビジネスや公共団体をめざすひとにとっても, 論理的に考えたり他人に説得的に説明したり事実を明らかにしたりといったスキルが大切なのはまちがいなく,そういったスキルを高めるためにそれらの学問が役に立つと考えられているわけだ.

        • ゲーム理論のひとつのおもしろさは 思考する対象 をあつかうところにある.「このプレーヤーの立場から見て最適なのは?」と絶えず考える.ところが統計学では自然現象だけでなく社会現象もあつかっているのに,人間が出て来ない.いや,まったく出て来ないわけではないが,あくまでも過去の行動などがデータとして出て来るのみであり,人間の思考には立ち入らない.そのデータが未来の予測にどうつながるかは,人間の思考に立ち入らなければ分からないはずなのに,その重要な部分をスキップしている.

    • この科目は数学として開講したが,経済学として教えた.単に与えられた問題が解けるというだけでなく,解いている問題とその解の意味もじゅうぶん説明するようにした.それらの問題のもととなった現実世界についての説明は十分とは言わないが,現実を単純化しモデル化したものの意味は十分に説明するようにした.数学がリアルな世界と結びついていることを感じてもらいたいからだ.

    • ところで 図解雑学シリーズくらい読みこなせないと, 大学生としてかなりまずい.職業人になったとき,簡単に専門的知識を得ようにも,読める本がないということになる.そういう最低限の 学習力 はついただろうか?

■やったこと

出席者は授業開始時点で17名,終了時点で21名.課題の解説の続きをやった.括弧内に断りなく演習番号があるものは各自やってもらいたい.ただし「各自」となっている問題も質問があれば解説する.

    • アナウンスメント.1044 まで.

    • 補助教材 演習 3.13 (後回しにして忘れた), (3.6), 3.8, 5.6.1100まで.

    • 武藤 68頁,練習問題1 (マックスミニ戦略とマックスミニ値は除外)の 2-2 [正解6頁] (2-1は各自で) 1115まで.

    • 補助教材 演習 (5.7 は説明する時間がとれないため試験範囲から除外), (5.8は各自で)

    • 補助教材 演習 (4.3は各自で), 4.4, 4.5, 4.6, 4.7, (5.9は各自; 4.6の類題), (5.10は各自; 4.4-4.7の類題) (5.9, 5.10 は Quiz 5 問題3のような穴埋め形式で出る.) 1150まで.

    • 武藤 135 頁 練習問題 (1は各自), 2 [正解13頁] 1200まで.

    • 質問に回答.特になし.

    • 授業評価.ほとんどの学生が5分くらいで書き終えた.

        • 以下に近いことは言った.「特に自由記述欄には嬉しくなるようなことを書いてくれるとありがたい.こういうのはだいたい満足している人はなにも書かない一方で,不満のある人は一生懸命書いてくれるためである.これだけで判断すると,授業の良い部分まで潰してしまいがちだ.」

        • 以下のようなことを授業前にここに書いたのだが,読んだ人は少なかっただろうな.「授業の改善につながるよう,不満な人は具体的に指摘してくれるとありがたい.(「この科目最悪」とか「講師がおかしい」とか書くだけではどう改善すればいいか分からない.)」

■課題

    • 期末試験の準備をしてくれ.小テストと最後の2回分の授業でカバーした内容だけでも合格点に到達できるはず.小テストの正解例には絶対目を通しておいた方がいい.

7/27/09 スペシャルオフィスアワーズ

15:00-19:00 図書館4階北ペントハウス 三原研究室にて質問などを受け付ける.食べ物・飲み物持参可.(研究室では飲み食いオーケーだが,図書館閲覧室では飲み食いしないように.)

    • 男子2人,女子4人がやってきた.それぞれの学生はわりと長くいて,実際の対応時間は 1510-1935 だった.

    • 2名が補助教材などの正解例を印刷していなかった.

7/28/09 期末試験

    • [試験一週間前のアナウンスメント] 試験前情報はほぼ確定した.試験前に大きな変更はないはず.小テストの正解例には絶対目を通しておいた方がいい.

    • 期末試験は20人受験.1143 時点で2名が残り,最後の受験者は1158 までいた.試験問題と正解と採点基準および成績は別ページを参照.

    • 2009/07/30 17:01 ころ,「ゲーム理論の担当講師から」というタイトルで成績を配信した.メールボックスを確認のこと.

        • 大学アドレスに届いたメールはこちらの webmail にログインすることで確認できる.ユーザ ID とパスワードについては,同ページの右欄「利用案内」の該当項目を参照.

        • Gmail など一部の Web メールを利用すれば,どこからでも大学アドレスを使った送受信ができる.送信が出来ない場合でも,大学アドレス宛に来たメールをほかのサーバに転送するように設定することはできる (やや高度).

では,ごきげんよう,

三原麗珠