2011/4/19 Class 2

投稿日: 2011/04/19 6:18:07

■やったこと

    • 渡辺 52-59頁.1030-1115.

    • 三原 補助教材 2節5頁まで (定義2.2「支配する」の直前まで) 1115-1200.

■アナウンスメントなど

    • 10名参加.テキストはほとんどのひとが持って来たが,補助教材は4名しか持って来なかった.

    • シラバスを印刷してない者が1名はいた.印刷して予習復習のときに「授業計画」を参照してもらいたい.

    • Moodle でのコース登録をしたのは合計 9 名で初回アクセス日は4月 5, 5, 5, 7, 12, 13, 14, 14, 18 日となっていた.(ただし登録キーを公開したのは4月7日なので,5日アクセスの人はたぶん Moodle コースページに入れなかったはず.) これら9名は最低 ibaraki04ch1 は閲覧していた.

    • 授業後3名から質問あり.2名は事務的な質問.1名は授業中にボクから質問した学生で,囚人のジレンマが状況をうまく記述していない場合について質問.

    • [追記] 前回ログに「追記」がいくつかあるので参照すること.なお,以前のログに「追記」があったことは今後は原則として書かない.「追記」や「修正」などログ公開後の変更分もふくめて確実に配信を受けたければ,「最近の更新履歴」を RSS リーダーに登録することも可能.ただしこの科目に関係ないサイト更新情報が混じることもある.

■授業の内容にかんする補足

  • 補助教材2節はこの科目でもっとも抽象度が高いトピック.過去「渡辺本とギャップがある」という意見があった.しかしみなさんはすでに渡辺本や講義で「支配」「ナッシュ均衡」などの直観的な意味は分かっているはず.補助教材2節ではそれらすでに意味の分かっていることを数学的にきちんと定義し直しているにすぎない.集合や関数や最適解など必要な数学については補足している.ギャップがあるのではなくて,抽象度が高くなっているだけという方が正しいだろう.

    • 複数均衡にかんして過去尋ねられた質問は,均衡 (s, t), (s', t') があったとして,Player 1 が前者の均衡を,Player 2 が後者の均衡を想定して行動した結果,(s, t') が実現するようなばあいにかんするもの.もちろん (s, t') は一般にはナッシュ均衡にならないが,そういう戦略の組合せをどうやって避けるかという疑問.べつの言い方をすれば,均衡をどうやって実現するかという問題であり,これはゲーム理論における大きな課題として残っている (武藤 42-43頁や渡辺80頁参照).たとえば今後導入する「部分ゲーム完全均衡」では,いくつかのふさわしくないナッシュ均衡を取り除くことができる.しかし多くのゲームではプレーヤーたちの行動を一意的には予想できないと考える方が自然だ.一意的に予想できないなら,解概念としても複数の均衡を選ぶようにしておくべきである.複数均衡があるかぎり,そのうちひとつをどうやって実現するかという問題はつきまとうことになる.

      • ただ,非協力ゲーム理論は取るべき行動をしめすための規範的理論とは通常見なされてはいない.じっさいに観察される社会現象を説明するための事実解明的理論と見なされる.非協力ゲーム理論は,まだ出ていない結果を予想するためというよりは,すでに分かっている結果を説明するために使うことが多い.後者のばあい,複数均衡のそれぞれをどう実現するかという問題は生じない.すでに特定の結果が決まっているのだから.それが均衡として説明出来ればいちおうは満足できるのだ.現実に観察されるような結果のいずれもが均衡になっていて,逆に均衡になる結果がいずれも現実にも観察できるなら,事実説明的理論としては特に問題はないと言えるのではないか.

    • 囚人のジレンマを示したうえで,自分が囚人1だったらどういう行動を取るか尋ねたら,学生 Ku は状況の記述が不十分だから分からないとの趣旨の回答.仮に状況がこのゲームで完全に記述されていて,ナッシュ均衡の考え方にしたがって解くとどうなるか尋ねたら,ちゃんと「自白」と答えた.現実の囚人の場合,たとえば先に出所した囚人1にたいして囚人2が殺し屋を送るなども考えられる.そういう状況を記述するゲームは,通常は囚人のジレンマとは異なるものになる.あるゲームが記述している状況でどういう行動を取るべきかという問題は,じっさいにその状況をそのゲームがちゃんと記述できているかどうかとは分けて考えることにする.あくまでそのゲームが状況をきちんと記述できていると想定したうえで答えてくれればよい.

■次回までの課題

    • 前回ログ (Class 1) の「次回までの課題」を終わらせよう.以後はこれは書かない.

    • 三原補助教材2節を読む.

      • 演習問題 (特に 2.4, 追加 2.1, 2.6, 2.8) も考えてみよう.

    • 集合の記号に慣れていない学生は,三原2節を読む前に茨木 (ibaraki04ch1) の 1-6頁 (1.1節 集合; 1.2節 写像 (関数)) に目を通した方がいいかもしれない.必要に応じて参照してもいい.

    • 奥野 (okuno08ch4) 190-196頁も参考になる.

    • Strategy (戦略), equilibrium (均衡), incentive (インセンティブ) などの単語の発音は日本語流ではまず通じない.正しく発音できないと聴き取るのも困難.CALD など適当な電子辞書で発音をマスターしておこう.

    • 1分程度の自己紹介を考えておこう.出身地とか,得意なこととか,こだわっていることとか,頭に来ていることとか,所属学部を選んだ理由とか,この科目を受講することにした理由とか.次回とは限らないが,余裕があるとき教室で自己紹介してもらうかもしれない.

    • [リンク先を修正] シラバスの参考文献 3 「読みもの」に挙げた平凡助教授の「大学新入生へ」や伊藤秀史の「商学部生への経済学のススメ(改訂版)」をまだ読んでない人は,いますぐ読もう! (ホントは履修登録締め切りよりもずっと前に読んだ方がよかったのだが.)

      • 「学生時代に力を入れたことは?」と聞かれて,「就職活動です」とか「エントリーシートの書き方です」と答えるひともいないだろうが,答えとしてそのくらいしか思い当たらないようでは相当格好わるい.そうならないためにも大学時代を有意義に過ごそう.

■次回の予定

    • 補助教材 2節定義2.2から定義2.4まで.(補助教材を持参のこと.) 45分?

    • 補助教材 演習2.4, 追加演習 2.1, 演習2.6. 35分?

    • 渡辺2章60頁から.10分?