ファースト・ステップ 〜初めの一歩〜

これからコーヒーと付き合っていきたい人たちに。

何から始めるのか

コーヒーとの付き合い方は人それぞれ、いろいろな楽しみ方があります。「自分好みのコーヒーが飲めれば、それで満足」という人もいるでしょうし、「いろいろな味のコーヒーに出会ってみたい」という人、「自分の家でも美味しいコーヒーを飲みたい」「自分でも美味しく淹れられるようになりたい」という人もいるでしょう。

中には、エスプレッソポットやサイフォンなどのコーヒー器具を集めることが好きという人や、コーヒー豆の焙煎まで自分でやってみたいという、どちらかというと「マニアックな」人もいるかもしれませんが、とりあえずは置いといて、まずは一般的なところで「何からスタートするか」について考えてみましょう。

自分好みのコーヒーを飲みたいなら

もしあなたが「自分好みのコーヒーが飲めれば、それで満足」というのであれば、まずは近所の喫茶店やカフェを巡って自分好みの味を見つけるところからはじめるのが、いちばんの早道です。飲むコーヒーも特に拘らず、砂糖やクリームを好みになるように入れて、自分の気の向くままに純粋に楽しめばいいのです。

その上で、もし「もう少しコクのある方が好き」「もう少しあっさりした方が好き」などがあり、その店のメニューに他にもたくさんの種類があるのならば、店員さんに好みを伝えた上でお勧めを聞いてみて、次に来たときにはそちらを試してみるのがいいでしょう。それでも好みの味に出会えなかったら、その店のスタイルと相性が合わなかったのだと考えて他の店を当たってみましょう。運良く、近所に自分好みのコーヒーを出す店が見つかったならとてもラッキーです…いつでも自分の好きな味を楽しめるのですから。また、その店がチェーン展開をしているところだったり、特定のロースター(焙煎会社)の豆を使っているのであれば、出かけたときなどでも同じ系列の店を探すことで「お気に入りに近い味」の店を見つけることが簡単になるでしょう。

もっといろいろなコーヒーを味わいたいなら

もう一歩進んで、もっといろいろなおいしいコーヒーに出会ってみたいというのであれば、より多くの店を回って、いろんなメニューを試してみましょう。出会うコーヒーの種類が増えれば増えるほど、いろいろなタイプの味に出会う機会もそれだけ多くなります。

もし「いくつか飲んではみてるけど、味の違いがよく判らない」というなら、毎回最初の一口だけでいいので砂糖やクリームを入れる前のブラックの味を味見してみるようにするといいかもしれません。砂糖やクリームを入れることで隠れてしまいがちな、微妙な味の違いは判りやすくなります。もちろん、味見がすんだら自分の好きなようにして飲めばいいのです。

いろいろな店を回ってみるのも、コーヒー好きにとって大きな楽しみの一つです。ただ、どうせなら同じような店を何軒も巡るよりは、できるだけバラエティに富んだ、いろんなタイプの店を回ってみたいものです。例えばスタバやドトールのようにチェーン展開をしているところは、店舗ごとに味のばらつきがなく、一定の品質のものを提供しようとしているわけですが、それは裏を返せば「同じ系列ならどこで飲んでも大きな違いはない」とも言えます。また、喫茶店の看板に「UCC COFFEE」とか「KEY COFFEE」などのように、使っている豆の仕入れ元(ロースター)が書かれていることがあります。ある程度以上の抽出技術があれば、同じロースターの豆であれば、同じような傾向の味に落ち着き、味のバリエーションという面では小さくなってしまいます。もしいろいろなコーヒーを楽しんでみたいなら、是非、自家焙煎店を見つけて、数多く回ってみることをお勧めします。

また普段から「おいしいお店の情報」にアンテナを貼っておくといいでしょう。その地域地域で「名店」と呼ばれる店や、隠れ家的なお店など、いろいろな店があります。もちろん、それぞれのお店の味が「合う合わない」は人それぞれですが、より自分好みの味が見つかるかもしれません。特にネットでの評判や検索結果などは、口コミ情報を集めるのに向いています。

自分の家でも美味しいコーヒーを飲みたいなら

もし自分の家でも美味しいコーヒーを飲みたいのならば、自分好みのコーヒー豆(焙煎豆)を売っている店を見つけることが何よりの早道です。コーヒーの淹れ方が多少拙くても、焙煎豆の質が良ければかなりの部分はカバーすることができますが、その逆は難しいからです。コーヒーの淹れ方には、意外とぶれが出やすいものですから、もし美味しいコーヒーを好きなときに飲みたい、というのが第一の目的なのであれば、コーヒーメーカーやエスプレッソマシンを使うのも良い選択肢の一つかもしれません。使う豆の種類や量と挽き方さえ決めてしまえば、いつでも自分好みの味を簡単に楽しむ事が可能になります。ただし「コーヒー豆は生鮮食品」とも言われるように、焙煎豆の鮮度はとても重要です。購入の際には、あまり大量にまとめ買いせず、こまめに買うように心がけましょう。

自分でコーヒーを淹れてみたいなら

さらにもっとコーヒーを楽しみたいならば、是非自分の手で淹れてみることをお勧めします。自分の手で淹れたコーヒーの味は格別なものです。これは単なる気分的なものだけではありません。コーヒーメーカーでは安定した味が得られますが、裏を返せば味の細かな調節がしにくく、表現できる味の幅が狭くなるという面もあります。コーヒーの味は淹れ方によってコントロールすることが可能ですので、いろいろな豆を買ってきて、それぞれの豆の個性を見極めその特長を活かした淹れ方をすることも可能になるのです。

いろいろな淹れ方がありますが、これから始めようというのであれば、まずはペーパードリップをお薦めします。「ペーパーに始まりペーパーに終わる」とも言えるくらい、ペーパードリップは初心者にも取っ付きやすく、その反面とても奥の深い淹れ方です。まずは安いものでも構いませんから、ドリッパーと、その種類とサイズに合ったろ紙(フィルターペーパー)を買ってきて、自分で淹れてみましょう。

ドリッパーの次に欲しいのは、使いやすいドリップポットです。湯沸かしとは別に一つ欲しいものであり、お湯を注ぐ位置や勢いを自分の思い通りにコントロールできるようなものを、出来るだけ早いうちに見つけておきたいところです。慣れの問題にもなってくるので、人によっては普通のポットや急須をそのまま、あるいは少し工夫して使ったりする人もいます。もしお金に余裕があるのならば、専用のドリップポットを入手するのもいいでしょう。

その次に是非入手を検討して欲しいものがコーヒーミルです。コーヒー豆の鮮度はとても重要なものであり、一旦挽いてしまうと劣化のスピードが上がってしまいます。ぜひ一度「挽きたて」の豆を使って淹れてみて下さい。いろんなタイプのミルがありますが、価格や入手のしやすさなどから考えると、一度に大量に淹れるのでなければ、手動でハンドルを回して挽くタイプのものが、最初の一台としてはお勧めです。ミキサー(フードプロセッサー)タイプのものには電動で安価なものも多いのですが、粉のばらつきが大きくなり、あまりお勧めできないものもあります。