Lindskog2002

Lindskog M, Svenningsson P, Pozzi L, Kim Y, Fienberg AA, Bibb JA, Fredholm BB, Nairn AC, Greengard P, Fisone G.

Involvement of DARPP-32 phosphorylation in the stimulant action of caffeine.

Nature: 418(6899):774-8( 2002 Aug)

カフェインの中枢興奮作用は、中枢神経細胞の細胞膜上にあるアデノシン(特にA2A)レセプターのアンタゴニストとして働く(細胞外のアデノシンが膜上のレセプターに結合するのをカフェインが阻害する)ことにより、細胞内cAMP濃度が低下し、細胞内の蛋白リン酸化酵素の1つであるprotein kinase Aの活性が低下し、さまざまな蛋白のリン酸化が抑制されるためだと今日では考えられている.

本報告は、この細胞内のシグナル伝達が DARPP-32(dopamin and cAMP regulated phosphoprotein of Mr 32,000)という脳の線条体蛋白による制御を受けることの解明.カフェインによるprotein kinase Aの活性低下は同時にDARPP-32のリン酸化にも影響を与え(活性型のThr34-Pが出来なくなると同時に不活性型Thr75-Pが安定になる)、それによりDARPP-32により抑制されるべきProtein phosphatase-1の活性が高まる.phosphataseはkinaseによりリン酸化された蛋白の脱リン酸化を行うため、結果として蛋白のリン酸化の抑制がさらに強まる(正のフィードバック)

このメカニズムの解明は朝1,2杯飲んだコーヒーが効き続けるといった、カフェインによる中枢興奮作用が長続きすることに対する有力な答えであり、またパーキンソン病治療効果との関係の上でも今後の発展が注目される.

医学生物学/細胞内シグナル伝達:カフェイン投与したKOマウスでの自発行動、DARPP32リン酸化の変化(in vivo):カフェインの中枢作用メカニズム解明の大きな進展(重要度★★★★★)