その他の疾患との関連

神経難病(パーキンソン病・アルツハイマー)との関連

コーヒー飲用者ではパーキンソン病の発症リスクが低下することが複数の疫学調査で報告されている。これらの報告を総合的に解析したメタアナリシスの結果からも、この結論が支持されており1、 コーヒー飲用者でパーキンソン病発症リスクが低下することについては、概ね確認されたものと考えることができる。この作用はカフェインレスコーヒーでは認 められなかったことと、茶飲用者でもコーヒーと同様の傾向が認められたことから、カフェインによる作用だと考えられているが、パーキンソン病発症のメカニ ズム自体にまだ不明の点が多いため、カフェインがどのようにしてその発症に予防的に働いているのかは不明である。ただし、パーキンソン病は主に中脳のドー パミン作動神経の機能異常によって起きると考えられているため、カフェインがA2A受容体を介してドーパミン作動神経に作用していることと何らかの関連が あると考えられる2

またコーヒーがアルツハイマーの発生リスクを低下させるという報告もある3。ただしこちらについてはまだ報告件数が少なく、現時点で結論づけるのは時期尚早であり、今後の追試結果が待たれる。

糖尿病との関連

近年、コーヒーと疾患の関係でもっとも注目されているのは、2型糖尿病の発症リスク低下である。糖尿病には、血糖を下げる働きがあるホルモンである インスリンの分泌量が低下する1型糖尿病と、体組織のインスリン感受性が低下することでインスリンが効かなくなる2型糖尿病がある。2型糖尿病は生活習慣 病として発症することが多く、日本で問題になっているものの大部分がこの型である。コーヒー飲用者で2型糖尿病の発症リスクが低下することは、複数の疫学 調査によって追試され、ほぼ確認済みのものであると言って良い4, 5。 しかしながら、この効果は大量に飲用する(一日5〜7杯以上)場合には見られるものの、低〜中程度の飲用では差が見られないという報告が多い点には注意が 必要である。このような大量飲用の場合については、上述したカフェインの急性作用が現れる場合も考えられ、また上述した膀胱がん発症リスクに対する疑いを はじめ、総論で「論争中」と記した疾患との関連が現在はまだ否定されてはいないため、糖尿病に対する効果だけに着目して大量飲用を行うことがないよう十分 注意されたい。これまで2型糖尿病の発症リスクを上昇させる生活習慣因子はいくつか知られていたものの、低下させる因子というのはあまり知られていなかっ たため、コーヒーの作用メカニズムについては医学研究者の関心も集まっている。高濃度のカフェインはインスリン分泌を調節することが知られているため6, 7、この作用が関与するとの見解もあるが、その一方でデカフェでも同程度のリスク低下効果があるという報告もあり、活性本体を含めてまだよく判っていないのが現状である。