Maurin2007

Maurin O, Davis AP, Chester M, Mvungi EF, Jaufeerally-Fakim Y, Fay MF

Towards a phylogeny for Coffea (Rubiaceae): Identifying well-supported lineages based on nuclear and plastid DNA sequences

Ann. Bot. :100, 1565-1583 (2007)

Coffea属およびPsilanthus属について、遺伝子レベルでの系統分類を行った論文。Coffea属の全クレードならびにアフリカ、インドのPsilanthus属と、比較的近縁であるアカネ科植物であるTricalysia属(シロミミズ属)を含めて、核(rDNAのITS領域)およびプラスチドDNA(trnL-Fほか複数)についての系統解析を詳細に行った。

その結果から、従来のクレード(W, WC, C, E,M)分類について、以下のように見直している。

    • UGクレード(Upper Guinea clade):従来のWクレードに相当。東端はベナンのDahomey Gapと呼ばれるエリア。

    • LG/Cクレード(Lower Guinea/Congolian clade):従来のWクレードに相当。

    • E-CAクレード(East-Central Africa clade):従来のCクレードに相当

    • EAクレード(East Africa clade):従来のEクレードに相当

    • Madクレード(Madagascar clade):マダガスカル島。従来のMクレード

    • MASクレード(Mascarene clade):マスカレン諸島、従来はMクレードに含むことが多かった。

なお、C. arabicaとC. rhamnifoliaは、これらのクレードからは分けて扱われている。

このうち、LG/CクレードはインドのPsilanthus属と比較的近縁であり、これを除くグループは、EA-IOクレード(East Africa-Indian Ocean clade)という大きなクレードとして扱われている。興味深い点としては、(1)アフリカのPsilanthus属は、インドのPsilanthus属とLG/Cクレードが分岐する前に分岐している。(2) UGクレードは地理的にはLG/Cクレードと近いが遺伝子的にはむしろEA-IOクレードに属する。などであろうか。

またこの解析結果は、従来言われていたC. arabicaの起源がC. canephoraC. eugenioidesであることをさらに裏付ける結果が出ている。またC. rhamnifoliaはインドのPsilanthus属と遺伝子上は近縁であることが示された。なおPsilanthus属とCoffea属とを今後区別していくべきかどうかについての判断材料になることが期待されたが、今回は十分な結果は得られていない。