Frank2007

Frank O, Blumberg S, Kunert C, Zehentbauer G, Hofmann T.

Structure determination and sensory analysis of bitter-tasting 4-vinylcatechol oligomers and their identification in roasted coffee by means of LC-MS/MS.

J Agric Food Chem:55(5):1945-54: (2007)

コーヒー酸(カフェー酸)の加熱処理(220℃15分)によって、エスプレッソ様の苦味成分が生成されることを見いだした。それが4-ビニルカテコールの重合体(ビニルカテコールオリゴマー)であることを明らかにし、さらにコーヒー(焙煎豆)中にも十分な量が含まれていることを示した論文。

Frankらは2006にも、クロロゲン酸を単独で同様に加熱することで、コーヒー様の苦味成分としてクロロゲン酸ラクトン類が生成することを報告している。この論文とともに、この二つの発見は、ここ数年のコーヒー関連の研究の中では特筆すべき、重要な意味を持つ論文だと考える。

実はこれらの実験の一部を追試したことがあるのだが、コーヒー酸焙焦物(焙焦で生じる雑多な成分からなる混合物)は、一部には既に不快な苦味や煙臭なども感じられるが、確かにエスプレッソに共通する濃厚な苦味を呈した。この焙焦物は濃い黒色であり、クロロゲン酸と糖類などの混合焙煎モデルで中林らが示した、褐色色素Aと類似の性質を持つ(あるいは少なくとも一部が同一である)ことも予想される。褐色色素Aの生成過程においては、その前段階として、一旦、褐色色素CやBとなった成分の部分分解と再重合が関与する可能性が考えられるからである。また、コーヒー酸焙焦物はコーヒー酸そのものや、クロロゲン酸焙焦物と比較して、強い界面活性作用(立てた泡が消えない)を持っており、少なくともその外見上は、コーヒーに見られる泡と酷似していたことから、コーヒーの泡の成分としても重要であると考えられる。