Koshiro2007

Koshiro Y, Jackson MC, Katahira R, Wang ML, Nagai C, Ashihara H.

Biosynthesis of chlorogenic acids in growing and ripening fruits of Coffea arabica and Coffea canephora plants.

Z Naturforsch [C]: 62, 731-42 (2007)

アラビカ種およびカネフォーラ種(ロブスタ)のコーヒーノキにおける、クロロゲン酸類の生合成経路について解析した論文。種子(および果実)形成の成熟過程において、クロロゲン酸類は特に種子に多く蓄積しているが、その乾重量あたり濃度は種子形成の比較的初期の段階で高く成熟に伴って低下していた。またクロロゲン酸類はコーヒー酸、フェルラ酸、クマル酸などのフェニルプロパノイド化合物とキナ酸から生合成される。このうち特に前者にあたるフェニルプロパノイド経路の酵素がその生合成調節に大きく関与していると考えられている。フェニルプロパノイド経路に関わる各種酵素(PAL1, C3'H, CCoAMT)はいずれも種子形成の比較的初期段階に多く発現していた。これらの知見から、種子形成初期に多く合成されたクロロゲン酸類が、特に種子に多く蓄積していることが明らかになった。

コーヒーやチャの二次代謝経路の研究で多くの成果を挙げているお茶水大の芦原教授らの論文である。コーヒーノキの二次代謝経路の研究では、芦原教授や佐野教授らがカフェイン生合成経路を近年解明しているが、それ以外についての研究はあまり進展していない部分も多い(とは言え他の植物との共通点が多い部分もあるが)。コーヒー豆におけるクロロゲン酸類のプロファイル、すなわちどの種類のクロロゲン酸類がそれぞれどれだけ含まれているかは、そのコーヒーの品質に関与する他、サビ病などに体する耐病性などにも関与すると考えられており、その生合成経路のさらに詳細な解明が待たれる。