【駆け落ちブルー】二次創作SS01
「贖罪」
「——ぼく、あの子たちと一緒に旅をしようと思うんだ」
ぼたんとよく似た顔と声で、■■■はそう言って笑った。
「…………そっか、いってらっしゃい」
気をつけてね、とあの子たちに駆け寄っていく■■■に手を振るけれど、彼は一度も振り向かなかった。それでもわたしは手を振り続けた。
いってらっしゃい、 。
▽
あの子たちの姿が見えなくなってどれくらい経ったんだろう?
遠くに見える瓦礫くらいの大きさになって、瓦礫に開いた穴の高さよりも背が低くなって、足元の石くらいの大きさになって——小石みたいに小さくなって、そのあとすぐに消えちゃったくらいで手を振るのをやめた。
▽
いくら待ってもぼたんは——……■■■は帰ってこなかった。
…………旅って、どれくらいかかるのかな。
▽
この間とは違う子たちがやって来た。今度はふたり。
ふたりはずっと昔からのお友達で、目が覚めてからふたりきりでずーっと遠くから旅をしてきたんだって。
「旅って、どれくらいに終わるの?」
「うーん……。目的地のない旅なのだとしたら、動けなくなることが終わりなんじゃないかな」
「……ふぅん」
■■■が帰ってこないからそう聞いてみたら、少し黙った後でそう教えてくれた。
「そろそろ此処を立とうと思うんだ。よかったら、貴方も一緒に来る?」
ばいばい、と手を振ろうとしたらそんな言葉をかけられた。
お誘いは嬉しいけれど、「いってらっしゃい」って言ったんだから「おかえり」も言わないと。
「ううん、ぼたんを待っているから」
「……そう」
もうひとりの子は脚がなくて移動が大変そうだったから、ちょっと前にぼたんと倒した敵から貰っておいたパーツをあげた。わたしにもぼたんにも使わなかったものだから。
■■■たちの時と同じように小さくなっていく背中を見つめながら手を振る。あと少しで消えちゃいそうなとき、くるりとふたりが振り返って手を振ってくれたのが見えた。
……そういえば、■■■が着いて行ったあの子たちは、いったいどこに行くつもりだったんだろう?
「ねぇ、ぼた…………」
聞いてみようと思って振り返っても、いつもそこに居たはずのぼたんはいなかった。そばにたくさん置いていたはずの、綺麗なお花も。
——ぼく、あの子たちと一緒に旅をしようと思うんだ。
ぼたんとよく似た顔と声で、わたしの知らない顔をした■■■はそう言って笑っていた。
あ、そっか。
もう、かえってこないんだ。ぼたん。