Q1.社会文化システム学科って何なの?

S美 「私、大学では社会学部に進学したいと思って色々と調べているんですけど、東洋大学社会学部の社会文化システム学科って、初めて聞く学科名です。どういう学科なんですか?」


A先生 「そうだね、確かに日本中の大学を探しても、こういう名前の学科は他にはないんだ。それは学問として新しい方法を実践しているからなんだ。私たちの学科のキーワードは『社会文化』。これはさらに『社会』『文化』に分かれるよね。じゃあ、逆に質問。『社会』『文化』ってどういう関係にあるんだろう?」

S美 「ええぇ、なんか当たり前すぎる言葉だから考えたことがないです。難しいな。」


A先生 「じゃあ、簡単な連想ゲームをしてみよう。何でもいいから同じ言葉を使って、『○○社会』『○○文化』って言葉を作ってみよう。」


C輔 「え~と、『日本社会』と『日本文化』、『イスラーム社会』と『イスラーム文化』、『ハイテク社会』と『ハイテク文化』、『若者社会』と『若者文化』…」


S美 「ちょっと待って!『若者文化』っていうのはよく聞くけど、『若者社会』って言うかしら?」


C輔 「そうかなぁ、言えると思うよ。だって『老人社会』とか『老人コミュニティ』って言葉があるんだから、世代が社会を作っていると考えても良いんじゃない?それに、どんな言葉でも『社会』や『文化』とつながるよ。」


S美 「う~ん、そっか。そうかもしれない。そう言われると自信がなくなるわ。」


A先生 「どうかな?2人とも意識して言葉を考え直してみると新しい発見があるだろう。じゃあ、『コーヒー社会』と『コーヒー文化』はどうだろう?」


S美 「私も毎朝コーヒー飲まないとエンジンかかんなくなるぐらい大好き。高1のときに、『コーヒー文化』っていうタイトルの本を読んだこともあるわ。でも『コーヒー社会』って言葉は無理っぽい。聞いたことないわ。」

C輔 「う~ん、アメリカ人はコーヒー好きで有名だけど、アメリカを『コーヒー社会』っては普通言わないなぁ。そっか、『社会』がくっつかない言葉もあるんだ。」


A先生 「こうして言葉を整理してくると、答えがみえてこないかな?」


S美 「たぶん『社会』って、私たちの暮らしの中でグループ分けするための枠か容器みたいなものなんだわ。コーヒーを飲むことで社会を分けること出来ないもの。そっか!『老人社会』と違って『若者社会』という言葉は、若者だけで枠を作れるかどうかが人によって判断が違うから、私には違和感があるんだわ。」


A先生 「そうだね。いいところに気がついたね。福祉の観点で使われる『老人社会』と違って、君たち若者って色んな価値観の影響を受けるから年齢だけでまとめられるかどうかとても微妙なところだね。シブヤ系とアキバ系じゃ同じ若者でも全く別ものだものね。じゃあ、『文化』ってなんだろう?」


C輔 「う~ん、『社会』が枠か容器なら、『文化』って、何て言うのかな、その枠か容器の中身とか内容みたいなものじゃないかな?」


A先生 「スルドいね。2人とも自分で答えを見つけたようだね。そうなんだ。私たち人間は何かしら集団に分かれて『社会』をつくり、しかもその社会にはその社会において共有される『文化』という内容を持っているものと見なすことができる。逆に言えば、共有の『文化』を持つものが、1つの『社会』を作っていると思ってもいい。こういうふうに『社会』と『文化』はとても密接につながっているものなんだ。」


S美 「なんかすごいっ!大学の学問って感じ。考えもしなかったけど『社会』と『文化』って1枚のコインの表裏みたいになって、展開しているのね!」


C輔 「この考えって何かパソコンに似てるなぁ。パソコン本体が『社会』で動かすソフトが『文化』。両方そろわなきゃパソコンは動かないもの。」


A先生 「おっ、すごいね。確かに今の社会学研究の最前線では、そういう風に社会をハード、文化をソフトにたとえて説明する学者もいるんだよ。じゃあ、もう1つ。この2つの言葉がどうして『システム』でつながっているんだろう?」

S美 「え~と、『システム』ってどういうものかしら?」


C輔 「『新幹線制御システム』、『航空管制システム』、『システム・コンポ』….」


A先生 「おっ早速に言葉から考え直していく方法を覚えたね。やさしく言えば『仕組み』かな?ほら、君たちのお父さん、お母さんが使っていた『システム・コンポ』ってCDやラジオなど複数の音源を1つの機械で再現するための仕組みをもった装置のことだろう。」


S美 「そうだわ。お父さん今でも大事にしているけど、確かにそれぞれ1つだけならCD、ラジオって呼ぶものね。組み合わさって初めてシステムなのね。」


C輔 「つまり『社会』『文化』がどういう仕組みで、現実世界のなかに展開しているのかを研究するのが『社会文化システム学科』っていうことですか?」


A先生 「うん。その通り。もう少し付け加えると、今までの学問1つ1つの垣根を取り払って、社会学と人類学とを核にしながら、地域的な展開も視野に入れつつ、私たちの生きている人間世界を『社会』と『文化』の関係から考え直していこうというのが『社会文化システム学科』なんだ。」