国際理解コース

フィールドをつなぐ、問う、考える

インドネシア実習・国際商品(モノ)を通して学ぶグローバル化とわたしたちの生活

国際理解コースとは

本科目は、身近なモノ(国際商品)を通して私たちの生活と世界がつながっていること(身近なグローバル化)を理解することを目的としています。

具体的なモノとしては「エビ」を取り上げ、消費する場=日本と生産する現場=インドネシアの双方でフィールドワークを実施し、モノとひとを介したグローバルなつながりについて学んでいきます。


春学期

のなかから自由に調査テーマを設定し、班ごとに国内でフィールドワークを実施

秋学期

➡︎現地の大学生とともに村の伝統家屋にホームステイし、村の方々のお話を聞き、漁業や農業の仕事やモスク(イスラム教徒の礼拝所)での礼拝、インドネシア料理の調理など、様々な体験を通して現地の文化を学びます。


担当教員

長津一史(インドネシア地域研究)
田川夢乃(文化人類学、ジェンダー研究)

活動報告

社会文化システム学科時代の2013年度から2016年度まで本プロジェクトでは、国際商品としての古紙や古着を研究の題材として取りあげた。2017年度からは、グローバルサウス/南北問題や地球環境問題を考えるうえで格好の国際商品であるエビに焦点をおくようになった。

日本では1980年代半ばからエビ輸入が急増した。同年代後半、日本は世界最大のエビ輸入国になった 。日本がエビを大量に輸入した結果、輸出国であるインドネシア等ではエビ・トロール漁船による海洋環境の破壊や、エビ養殖池の開拓を目的としたマングローブ林の伐採、エビ養殖で用いる人工飼料の大量投与による沿岸環境汚染などの環境破壊が進行した。生産地では貧富の格差も拡大した。これらの問題群はいまも解決されていない。他方で、環境保全型のエビ養殖を継続する漁民や、そうした漁民を支援するグローバルな民衆交易(フェアトレード)も試みられるようになっている[村井 2007]。

2017年以来、国際理解分野の演習では、そうしたエビの消費地である日本と生産現場であるインドネシアの双方で、上記のような問題群、問題群をめぐるグローバルな関係、あるいは生産者の社会や文化を現場で考えるフィールド実習をおこなってきた。


2021度は、新型コロナウイルスの感染拡大が収束せず、インドネシアでのフィールド実習は中止にせざるをえなかった。しかし今年度は、幸い、同ウイルスの感染状況は一定の落ち着きをみせたため、行動制限はありながらも、2年ぶりにインドネシア現地でのフィールド実習を実施することができた。

また国内では、8月と10月に、学生の一部が宮城県気仙沼市で滞日インドネシア人と独自に交流会を持ち、その場でインタビュー調査もおこなった。昨年度、気仙沼市で実施した交流会「インドネシア・デイ」やオンライン・インタビューで知り合った同市の滞日インドネシア人との交友関係を学生たちは各自で維持してきた。そうした繋がりを通して構築された信頼関係が、国内での再調査の実現に結びついた。かれらが滞日インドネシア人と真摯なつきあいを続けてきたことを高く評価したい。

学生は、エビ班、コメディ班、実習生班、食班という4つの班に分かれ、それぞれのテーマに関する調査を国内でおこない、同時にインドネシア・フィールド実習の準備を進めた。フィールド実習は10月28日~11月7日、インドネシアのスラウェシ島の漁村を中心におこなった。フィールド実習にはインドネシア国立ハサヌディン大学の学部学生4人が同行した。また村落調査の後には、同大学において成果報告会もおこなった。これらの機会に学生は、村人のほか、同世代のインドネシア人学生と友だちになり、フィールド実習を通してヴァーチャルではない真の異文化体験とフィールドワークの機会を楽しんだ。

2023年度は、新型コロナウイルスの感染状況がおさまり、ようやく行動制限なしで、インドネシアでのフィールド実習を実施することができた。

国内では、昨年度に引き続き、8月と10月学生の一部が宮城県気仙沼市で滞日インドネシア人と交流会を持ち、その場でインタビュー調査や動画撮影をおこなった。滞日インドネシア人の多くは食品加工工場等で働く技能実習生や特定技能就労者である。昨年度までに知り合った同市の滞日インドネシア人との交友関係を学生たちは各自で維持してきた。東洋大学の学生と気仙沼のインドネシア人技能実習生という立場のちがいを越えて育んできた信頼関係が、異国の地で働き、生活する人々のアクチュアルな姿を描き出すことを可能にした。学生たちがSNS等を通じて滞日インドネシア人と真摯なつきあいを続けてきたことを高く評価したい。

学生は、エビ班、映像班(技能実習生班)、コメディ班、ファッション班という4つの班それぞれのテーマに関する調査を国内でおこない、同時にインドネシア・フィールド実習の準備を進めた。フィールド実習は昨年度同様、インドネシアのスラウェシ島の漁村を中心におこなった。行政的には、南スラウェシ州ピンラン県ランリサン(Lanrisang)郡スンパン・サダン(Sumpang Saddang)村に含まれる村落である。期間は11月3日~11月14日、フィールド実習にはインドネシア国立ハサヌディン大学の教員1名と学部学生4人が同行した。また村落調査の後には、同大学において成果報告会もおこなった。これらの機会に学生は、村人のほか、同世代のインドネシア人学生と友だちになり、自らの学びを伝え、日々の生活を語りあい、ともに食べ、笑いあった。