Q2.社会文化してみよう!

S美 「なんとなく学科のイメージがわいてきたけど、でも実際にはどんなことを研究するんですか?」


A先生 「何でも研究することができるんだよ。新しい学問は自由がある。例えば『スリッパ』だって研究対象になるんだよ。」


C輔 「スリッパ??なんでそんなものが研究になるんですか!」


A先生 「はは、ふざけているわけではないよ。高校までの勉強は教科書や参考書にしばられていただろうけど、私たちの学科では自分で問題を見つけて自分で答えを見つけていく学科なんだ。」

S美 「でもスリッパなんかで、社会文化が見えてくるんですか?」


A先生 「2人とも今日の服装は洋服だよね。普段、和服を着ることがないよね?」


C輔 「そうですね。普段はジーパンにTシャツ、トレーナー、家ではジャージでいることが当たり前かな。」


S美 「私も着物はもっていない。七五三のときが最後かな?たぶん成人式か大学の卒業式に着るかも。」


A先生 「それじゃあ、2人は家でスリッパを履くかな?」


C輔 「いいえ、玄関で靴を脱いだら、家の中は靴下も脱いで裸足ですね。」


S美 「私の家では玄関にお客様の様のスリッパがあるけど普段は履かないわ。あっトイレの中にはスリッパがあるわ!」


A先生 「そうだよね。それが普通だよね。去年、私のゼミの学生38人に聞いてみたら、履く習慣がある学生は1人だけだった。君たちのように服装も食事も洋風のものが当たり前な世代でも、スリッパを履かないのはなぜだろう?」


S美 「え~、だって面倒くさいし、開放感がなくなるわ。」


C輔 「だってスリッパって洗わないでしょう。履き続ければかえって家が汚くなるんじゃないかな?」


A先生 「じゃあ、ヨーロッパ人やアメリカ人はなぜ履くんだろう。アジアやイスラーム世界ではどうだろう?」

S美 「アメリカ人は玄関で靴を脱がなくてもいいんでしょう?家の中で足に何かを履く習慣があるから、靴を脱ぐ人はスリッパを履くんじゃないかしら?」


A先生 「驚くかもしれないけど、イスラーム世界では玄関で靴を脱いでスリッパに履き替えるのが普通だよ。」


C輔 「そうか!!世界の様々な社会で、スリッパの使い方に違いがあるっていうのは、それぞれの社会の文化の違いに原因があるかもしれないんだ!僕らがスリッパを履かないというのは、僕らの個人の選択という意味以上に、僕らの社会に共有される文化によるものかもしれない!」


S美 「う~ん、ホント!普段は気づかないけど、私たち自身の中に私たちの社会や文化を読み解く鍵があるのね。すごいわ。」


A先生 「2人とも分かってきたみたいだね。じゃあ『日本人とスリッパ』には他に問題を設定することができないかな?」


C輔 「僕たち若者世代ってことだったけど、先生の世代はどうなんだろう?もっと上の世代は?うちの親父は絶対スリッパなんて履かないかんじだけど。」


S美 「ファッションっていえば、女の子のほうがうるさいと思うから、男女差も考える必要があるんじゃないかしら?それに関東と関西じゃ違うかもしれない。この前、大阪のUSJに遊びに行ったとき、地下鉄のエスカレターで左側にいたら怒られたわ。東京と逆で左側は急いでいく人のために空けているの!地域による違いもありそう。」


A先生 「いいね。どんどん問題が膨らんでいくね。大学では、そうした君たちの発想をもとに図書館で文献調査したり、インターネットで検索をして問題点を整理して仮説を立てて、実際にアンケートや聞き取りなどの社会調査を行っていくんだ。大学には色んな出身地の学生がいるから、地域差は大阪に行かなくてもキャンパスのなかで調べられそうだね。」

C輔 「でも、キャンパスにいるのは若者ばかりで世代差は調べられません。」


A先生 「そうだね。そう場合は、『フィールド・ワーク』といって、キャンパスを飛び出して調査にいくこともあるんだ。先生の中には外国にまでフィールド・ワークに行く人もいるよ。」


S美 「へぇ~すごい。そうかっ、日本でのスリッパ調査を、ドイツや中国でもやってみて比べたら新しい発見があるかもしれませんね。」


C輔 「スリッパもいいけど、僕は大好きなサッカーについて、そういうふうにして調べたいな。」


S美 「あら、私だってスリッパよりも『癒し』の感覚について調べたい。いつごろからこんなにブームになったのかしら?それにもうブームじゃなくて定着したの?ヨーロッパや東南アジアに同じような感覚はあるのから?」


A先生 「うんうん、2人とも社会文化に目覚めてきたようだね。新しい学科で、新しいやり方で、学問していこう。」