6月講座ルポ
Post date: Jul 5, 2011 2:30:07 PM
◇6月講座ルポ
◆講師:荻原浩(山本周五郎賞作家)
◆コーディネーター:池上冬樹(文芸評論家)
テキスト
桐山慎平さん『悪魔の悪意』
みつときよるさん『蝶はひそかに駆けまわる』
嘉川さちさん『恋の葬式』
※受講生によるルポ
東日本大震災による中止から、復活して二度目の講座。 講師は荻原浩先生でした。
荻原先生は以前コピーライターをなさっていたそうで、講座のテーマは『話の伝え方、言葉の探し方』でしたが、流れるようにというのではなく、まさに言葉を選びながら話されていたと感じました。
※丁寧に話される荻原先生
前半は受講生による三本のテキストが取り上げられました。
その講評の中で印象に残ったのは、まず「読者に与える以上の情報を自分が理解しておく」ということです。 人によっては登場人物の細かい年表を作って作品を書く人もいるけれど、そこまでしなくても、キャラクターの過去や全体の光景を把握して書くことが大切なのだそうです。
また「登場人物を説明役にしないように」ともおっしゃられていました。 あるキャラクターに台詞を言わせて状況を説明してしまうのではなく、それ以外の方法で書けないか考えてみようということです。
どちらのアドバイスも、作品に対して本当に真剣に取り組まないとできないものだと思いました。
また、その印象を裏付けるかのように新人賞の選考についても語られたのですが、 「甲乙つけがたい二作品があった場合、思いがどれだけ強いかを感じる方を選ぶ」のだそうです。
「一球入魂!」という言葉がありますけれど、創作もまた魂をこめなければ人を揺さぶることはできないのだと改めて思いました。
先生は「一度引き出しの中にしまって」という言葉を使われたのですが、時間をおくことでいろいろなものが見えてくるから、どの作品についてもこれに終わりにしないで、さらに完成度を上げていくようにすすめておられました。
後半はコーディネーターの池上先生との対談で、こちらもまた聞きどころ満載でした。
テーマである「言葉の探し方」については、どの作家さんもそうだとは思いますけれど、荻原さんはコピーライター出身であるだけに特にこだわっているように感じられました。
※新作『月の上の観覧車』について話される池上先生(右)と、荻原先生(左)
新作の短編集『月の上の観覧車』では老若男女いろいろな人の物語を書かれていますが、たとえば子どもの話を書く時は子どもの視線とボキャブラリーで描くように気をつけていらっしゃるそうです。
その際、「生の言葉はどうなのか思い出すように」とアドバイスしてくださいました。 そういえば「~なんじゃ」と話すおじいさんなんて、実際にはあまりいませんね。
また「すらすらあっさり出てくる言葉には注意すること」ともおっしゃっておられました。
それは自分と戦っていない言葉、つまりメディアなどの影響を受けて知らず知らずのうちに自分の中に入り込んでしまっているものかもしれないからだそうです。
荻原先生は読ませどころの前後にはあえて重い言葉をおかず、「がんばってがんばってふつうの言葉にする」ということでしたが、安易に書かずに常に探し続けることで、ようやく読み手に届く言葉が見つかるのだと思いました。
最後にサイン会があったのですが、荻原先生のはなんとイラスト入り!!
すごくかわいかったですよ~。
荻原浩先生、本当にありがとうございました。
(K・K)