Post date: Dec 29, 2011 9:17:43 AM
講師:村山由佳(直木賞作家)
コーディネーター:池上冬樹
ゲスト:伊藤亮(集英社)高梨佳苗(集英社)国田昌子(徳間書店)
・小川朱美さん『エトワール』
・吉原彩子さん『ドガ』
・佐野のぶさん『潮風の時間』
・七瀬さん『ヘッジ』
今回の講座で、初めて村山由佳先生にお会いしましたが、本当に笑顔がキュートな方でした。
そして、キュートな笑顔と明るくハキハキとした話し方がとても好感が持て
人を惹きつける文章を書く方は、ほんとに書いている人にも惹かれるものだな。と納得しました。
前半は生徒さんの講評をしながらの、文章を書くポイントを教えて頂きました。
テキストは全部で4つでしたが、その中のテキストには対局なものがありました。
1つは書き手の気配を消して書く小説で、もう一つは書き手の気配が伝わる小説。
書き手を消せる作品も、書き手独特の空気を出せる作品もどちらも素晴らしいとのことでした。
今回の場合は、自然と気配が消せる人、自分の味を出し書く人方々でしたが
作家の方は意図的に書くなんて本当に凄いと思いました。
自分の書く文章はどちらなのだろう?
それすら分ってはいませんが、これからは意識して書いていけたらと思いました。
そして各テキスト、書いた方しか書けない素敵な表現があり、その表現をここは良いですね!
ここは、友達に話す感じで書いているので、もう少し考えた方が良いと思います。
情報の出す順番をもっと変えるとさらに良くなると思います。
そんな風に、村山先生や池上先生、編集者の方々、生徒の方より
すべてのテキストに感想やアドバイスを頂きました。
自分が読んでも気が付けない事が、沢山の人たちの意見を聞くとより深く文章を理解できると思いました。
聞いた後に、再度テキストを読み直すと「なるほど~」となります。
やはり、自分一人で読むよりも、沢山の方の意見が聞けるという事は素晴らしい事だと思います。
しかも、それが村山由佳先生なのです!これは貴重な体験だ と思いました。
後半は池上先生と村山先生でのトークと生徒さんからの質問でした。
村山先生が「小説すばる」新人賞の選考委員をした時の、大賞を選んだ時の話をお伺いしました。
選考委員の方それぞれが、小説のここが大事というところが違うのでやはり意見は割れるようです。
それの中で、話合い大賞が決まった経緯を聞くと、ドキドキしてしまいます。
このお話を聞いてから、大賞の作品を読むと違った気持ちで読めるかもしれないと思いました。
そして、大賞の作品を読みたくなってしまいました。
小説は雰囲気で書くのではなく、どの表現で、どの順で書いたら読者に伝わるかが大切。
自分の書きたい手触りや、色が決まったら何が必要で不要かをよく考えた方が良いとの事です。
私は、先生の言ったこの「手触りや色」という表現が素晴らしくて、そこにひどく感動してしまいました。
村山先生は瀬戸内寂聴先生から「小説家に必要なのは、一に才能、二に才能、三、四がなくて五に才能」と言われたことがあるそうです。
そうではないと言ってくれた方もいるそうです。
運も才能なんて言いますが、才能だけと言われると、なんだか生まれた時から決まっている感じで嫌です。
でも、努力する。これも才能なのかもしれません。
先生も、文章を書く体力をつけた方が良いと言われたそうです。
私も沢山本を読んで、体力をつけたいです。
今回の講座もとても楽しく、有意義な時間を過ごせました。
ありがとうございました。
(H・H)
11月の講師は、直木賞作家の村山由佳先生。
「こわくないですから、何でも聞いてくださいね」
穏やかな語り口に笑顔。村山先生があいさつを終えると、張り詰めていた会場の空気がやわらいでいる。
池上先生の進行のもと、講座が始 まった。
第1部は、受講生によるテキスト4編の講評。「書きたいことが曖昧」というのが、4編に共通する指摘だった。書きたいポイントを絞って、読者に何を伝えたいかを明確にすることが大事、ということである。作者自身 が、伝えたいことをはっきりさせないまま書いてしまうと、読者は、作者が何を言いたいのか分からず、内容をつかむことが 出来ない。村山先生は、小説の手法に触れ、こうアドバイスする。「書きたいことを最後の一 行にするというのは、ひとつの小説の書き方の典型。その最後の一行に向けて書いていくということをしてみるといい。効果 的にするために考えなくてはならないのは、主人公となる人物を作りこむことと情報を明かす順番を計算すること。主人公の情報を早い段階で読者に伝えると、主人公が読者にぐっと寄ってきて、読者を物語に引き込ませやすくなる」。
第2部は、「特殊を普遍に届かせるには」をテーマに、村山先生のトーク。小説を書く動機として一番大事なのは、「人に伝えたい何かがあること」と村山先生は言い切る。「誰かに伝えたい」という衝動は、怒り、悲しみ、恐怖、恋愛などの感情があるから起こる。感情は、個人が何かを体験したことから生じる気持ちや心といった、目には見えない、誰もが持つ普遍的なものである。
作家は、自分の中に生じた「感情」 を探り、読者に伝えたいことを明確にしていく。その上で、書きたいポイントを絞っていき、書きたいことを表すために何が必要なのかを考え、全体の構成、表現方法などに技巧を凝らし、不特 定多数の読者を意識して文章を構築していく。
村山先生は、「普遍性というのは、 とことん追い込まれたところにある。自分を追い詰めていって、自分の中の感情を探るというのは、普段意識していない嫌な自分 ―嫉妬している自分、誰かを憎んでいる自分など―と向き合うことでもあり、精神的につらい作業。また、目に見えない、一番書きたいことを浮き彫りにするために、一行一行を決めて、全てを意識的に書いていくのは、気力も体力もいる作業。作家は、それらのつらい作業をずっと続けていく覚悟をしなきゃならない」と話す。
震災後、村山先生はショックで何も書けなくなってしまったそうだ。しかし、被災地の方の言葉に力をもらったという。
「言葉は思いもよらない形で人の心に届くことがある。私の小説がちょっとでも人の力になれる可能性があるのなら、これからも書き続けていく。言葉を使う小説にしか出来ないことをしたい」
村山先生が話す言葉の合間から、「覚悟」がくっきりと浮き彫りになって見え た。
(H・F)